旅する絵描き 「いせひでこ」展
ルリユールおじさん、大きな木のような人、あの路をはじめとする
創作絵本や宮沢賢治作品に取り組んだ「よだかの星」などで
知られるいせひでこさんの展覧会に行った。
(世田谷文学館・2/11~3/31)
出迎えてくれたのは本に顔をうずめる少女、
わぁ、きっと これ、タイムスリップした いせさんね。
私は いつもいつも 白い紙に顔をうずめてきたが
それは 喋らなくてもすむ世界だったから
絵が上手いとか好きとか以前に
気持ちの言語化が ひどく苦手な子どもの
生きる手段だったのだ。
記憶/ 再生より
歩いて感じて
思いめぐらし過ぎているうちに
風景に次々と わき道に ひきずり込まれる
より道の より道の果て
スケッチ帖は 名前もわからない摘み草と予期せぬ風景で
いっぱいになる
時刻表や地図も全くあてにならない
記憶/再生より
「七つめの絵の具」 いせひでこ 平凡社
保育園のかたすみに誰も見向きもされなくなった
ボロボロの絵本やキンダーブックやコドモノクニが
もう本とはいえない形で積み重ねられていた。
毎日そこにひとりで座り込むと
一枚一枚ばらし好きな絵にはさみを入れ
気に入った主人公たちをつなぎ合わせては
勝手な物語をしたてて遊んだ。
絵本はこわすものであり再構築するものだった。
( 書籍・本文より )
原画の前に佇んでいると
風景を感じ 風を感じ
透明な時間の中にいるような錯覚を感じた。
空の色や風の匂い
なんの変哲のない、ごく普通の日常のシーンであっても
すべての移ろいは1回限りのもの
2度と同じことは戻らない。
そんな時間の切なさを愛おしいほど いせさんの絵で思う。
この空間に出会えて幸せだった。
人の心を知ることは・・・人の心とは
あなたのつぶやきが聞こえてくる