8.1:測定、分析及び改善を正しく行うには、統計的手法の正しい使い方、その使用範囲などを決めておくこと。
品質管理の基本である統計的手法について考えてみよう。
ISO/TS 8.1.2によると組織全体が理解し実践する統計的考えの基本は、「ばらつき、管理(安定性)、工程能力、必要以上の調節や修正、変更など」の知識であるとされる。
ばらつき:我々が扱うデータはばらつきをもつ。そのばらつきを正常なばらつきと異常なばらつきに分けて考えることが基本。異常なばらつきは改善できるばらつきであることが多い。この正常異常を判断する基準を示すものが統計的手法である。また良くある間違いはばらつきを見ないで何でも平均値で判断する誤りである。 管理(安定性):統計的管理図を考案して工業への応用を示唆したシューハートは、管理図から正常異常を判断し、異常な動きのないグラフを「統計的管理状態」と名付けた。製造工程で製品を生産する場合、多くの原因が影響して結果になる。アウトプットはかならずばらつくため、管理された状態であるかどうか、工程が安定しているかどうかを判断するため、データの見方に熟知しなければならない。このために管理図などの統計的手法が役に立つ。
工程能力:工程で品質をつくる能力、工程品質能力をいう。データはばらつきを持つから規格と対比させて工程能力指数という統計量Cp、Cpkを求めて判断の基準にする。そこで大切なことは、求めた統計量で今後の工程を推定していいかどうかということである。正しいデータが集められ(サンプリングされ)正しく測定され、データを見る限り管理状態の工程からアウトプットされたデータと判断できる場合は、求めた工程能力には再現性がある。このため工程が安定されているかどうかを、ヒストグラムや管理図など書いて保証する。安定状態の工程でつくられた工程能力を正純工程能力とよんだこともあったが、得られた工程能力を判断する時は注意が必要である。
オーバーアジャスメント:必要以上の調節、修正、変更などをいう。「管理と調節」の違いはいずれまとめたいが、原因に対して手を打つことが管理、結果にのみ手を打つことを調節とよんでいる。原因がわかっても、原因に手を打つには膨大なコストがかかる場合は調節のほうが経済的である。当然調節の標準を決めておいてデータを見ながら正しく調節しなければならない。いずれにせよ原因を調査しないで結果のみに手を打つのは、賢いやり方とはいえない。
このように、統計的考え方は、賢い指示や決定をするための方法といえる。