晴耕雨読とか

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『旅する力 深夜特急ノート』

2008年12月03日 | 
ま、買っちゃいますよね。沢木耕太郎の新刊『旅する力 深夜特急ノート』(新潮社)。かの深夜特急の裏話というか、それにまつわるエッセイだ。



世代……で切るつもりはないけれど、やっぱりぼくらの世代は『深夜特急』を読んで、海外に憧れたし、ちょうど円高だの『地球の歩き方』だののおかげで、海外旅行が身近になったせいもあるけれど、みんな競って海外に出たものだ。

そういえば『深夜特急 第三便 飛光よ、飛光よ』が出るのを首を長~くして待っていたのをよく覚えている。

個人的にはアジア放浪的な、バックパッカーのような旅にあまり興味はなかった。へんな言い方だけど“旅”を目的にした旅はしたことがない。いつもかなり具体的な目的があって、そのために海外に行くことしかしたことがない。

ペンギンに囲まれに行くとか、ニシメガネザルを探しにいくとか。30代半ばまで繰り返していた海外旅行はすべてそんな感じだった。

それは、“彼らの旅”とは別のものだと思っていた。それでいて、いわゆるバックパッカー的な旅をバカにしていたところがある。バカにしていたのか、嫉妬していたのかは、今でもよくわからない。

昔、沢木さんがなにかのインタビューで、最近のマニュアル化されたアジア旅……安宿探しとか、おみやげ物やでの値引き交渉だとか、それが旅の目的かのようになっていることに対してどう思うかを聞かれ(インタビュアーはそんな旅にやや批判的な感じだった)、「それでも旅に出た方がいい」と話しているのを読んで、どこか自分の旅さえ肯定されたような気がした。

人への興味が薄く、現地の人とのコミュニケーションが苦手で、異文化への感受性が低い……そんな自分がしてきた“旅”が、それでもいいんだと、旅の権化に慰められたような気さえした。

自分の旅へのプライドと、卑下したくもなる情けない自分と……その両方が入り交じった20代、30代の旅だったように思う。

今、40代……。あれ?旅に出てないな!?