トーテム・サーモン(フリーマン。ハウス著/駒沢敏器訳/山と溪谷社)。
いやー、なかなか良い本です。
話は80年代のカリフォルニアで、サケが遡上する川を再生する話です。
単純に言えば、自然保護運動の話なのですが、テーマがサケという森と海をつなぐ存在で、ネイティブアメリカンが古くから利用してきたという点がこの話に深みを与えています。
そしてなにより、その大切さに気づいた人が、友人を巻き込み、地元を巻き込み、そして自治体や国を巻き込んで活動が広がっていく様がなかなか壮観です。
この話は『エコシステムマネジメント』(築地書館/これも必読)で紹介されている地域生態系の管理システムのひとつの事例なのでしょう。
キーワードは、、、「対話」でしょうか。利害関係者が話し合う。その先にあるのは利害の一致であったりもするわけです。
日本の自然保護行政がここ数年取り入れているけれどうまくいかない「パブリックコメント」もこのエコシステムマネジメントの1種だと思います。おそらく、自然保護問題に限らず、「地域」を扱うある種の公共性に関わる案件を、役所が勝手に進めるのではなく、きちんと地元の人たちと話し合う中で方向を決めていこうという試みだと思います。
この本を読むと、その大切さや難しさの一端をかいま見ることができます。
何かやれるかもしれない。何か変えていけるかもしれない。そんな力を与えてくれるような一冊です。
最初の核となったのが、地元の人間ではなく、その地に流れてきた人間(ヒッピーみたいな感じか?)であることが、なにか示唆するというか、納得するところではあります。
今、舞台なった川には、サケが遡上しているのかな?