二銭銅貨

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アマデウス

2010-09-17 | 洋画
アマデウス ☆☆
Amadeus
1984 アメリカ、カラー、横長サイズ
監督:ミロシュ・フォアマン、脚本:ピーター・シェーファー
出演:サリエリ:F・マーリー・エイブラハム
   モーツァルト:トム・ハルス
   コンスタンツェ:エリザベス・ベリッジ

常に飛びはねているかのように陽気で、
脳天気にふざけまくっている青年がトム・ハルス。
ヒマワリのような明るさで、あいくるしい、
太陽のような輝きの若い娘がエリザベス・ベリッジ。
F・マーリー・エイブラハムがこの映画の芯を担う、
通奏低音のような響きのサリエリ。
皮肉がまじり、苦悩がまじり、
老人サリエリの独白がすばらしい。

キャホキャホ言っているモーツァルトは本当にそんな人だったのだろうか?良くは知らないけれども、各楽曲が作られるプロセスを、多分今に伝わるエピソードと、また創作されたエピソードを交えながら、丹念に織り込んで製作された脚本で、オペラの劇中劇自体も面白い。特にシカネーダの一座のやる「ドンジョバンニ」は多分モーツァルトのもの以前のものだと思うけれども、当時の雰囲気があんなだったんだと思うと面白い。観客も一緒になって歌ったり、サプライズ満載の出し物がでたり、馬のケツから出て来たソーセージを観客に振舞ったり、今でもあるなら観客として参加してみたいものだ。

サリエリがモーツァルトの天才と自分とを比較して、自分が凡才の人々の中のチャンピオンだと言っているセリフが面白い。世の中の進歩にとって重要なのは確かに1人の天才ではあるけれど、実はその仕事は天才1人でできるものではなくて、幾百の凡才の群集があってはじめて可能なのである。つまり群集の基礎があって、ようやく1人の天才が活躍できうるのであるから、実は凡才の群集が重要なのである。建築物の土台のようなものであって、ちょっと人目につかないけれども最重要な役割をしているものなのである。だからその事をそれほど卑下しなくて良いと思う。ましてや凡才のチャンピオンなのであれば、もう少し自信を持っていい。

それにしてもこのような凡才のチャンピオンが、あのような天才に対峙したとすれば、確かに映画のような事になるのではないかと思った。サリエリがモーツァルトと格闘している、というのがこの映画の一面だけれども、同時にこの映画を作っていた人々もまた、天才モーツァルトと対峙して格闘していたんではないかと、つい思ってしまった。

見たのは2002年公開のディレクターズ・カット版。

10.09.05 シネコン映画館(午前十時の映画祭)


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