二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

2012-01-14 | 洋画
道 ☆☆☆☆
La Strada
1954 イタリア、白黒、普通サイズ
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ、脚本:トゥリオ・ピネリ
出演:ジュリエッタ・マシーナ、アンソニー・クイン
   リチャード・ベイスハート
音楽:ニーノ・ロータ

ビュービュー吹く風は冷たくて厳しい。
大地を殴りつけるようだ。
田舎の海岸の波も荒々しい。
その何もない海岸の方を向いて、
一人の少女がこちらに背を向けて、
みすぼらしい身なりで立っている。

背に長い藁のような束。
まだ未来の定まらない、
素朴で野生の草花のような。
ジェルソミーナ、
と遠くで呼ぶ声がする。

聖職者のような黒の服装の3人の楽隊。
田舎道を歩いてくる。
手にそれぞれの楽器、フルート、クラリネット、ラッパ。
楽しそうなその音楽に連れられて、
立ち上がり、踊りながら、
3人に付いて行くジェルソミーナ。
やがて彼女は街へ入り、
教会の行列を見に来ている多くの群衆の中に巻き込まれる。

夜、天使は舞い降りて、
地上40メートルの綱の上に椅子を置き、腰を掛け、
スパゲッティーを食べようとする。
風が一陣吹いて食べ損なうが、
彼はさらに地上に舞い降りて、
ジェルソミーナに合う。
彼女を救うために。

別の夜、「私は何の役にも立たない人間だ」と言って、
落ち込んでいる彼女に、その天使は優しく話しかける。
「世の中には役に立たないものなんて無い、
この転がっている石も何かに役立っている。
ザンパーノはあなたを必要としている。」
という趣旨の事を言う。
彼女はそれですっかり自信を付けて、そして、
できればザンパーノを救いたいと思う。
犬のような、野獣のような、何も分かっていない、
ザンパーノを救いたいと願う。

また別の夜、海岸の波うち際で、
顔をザブッと洗うザンパーノはすっかり酔っ払っている。
波うち際から少し離れた所まで戻ると、
よろよろと砂浜に崩れ落ちる。
座ったまま、ゆっくりと夜の空を見上げ、あたりを見回す。
ジェルソミーナの声が聞こえるかい?
えっ?どうなの。
夜空は何も答えてくれない。
夜の波は何も教えてくれない。
夜風も、黙ったまま。

そして彼はそのまま砂に突っ伏して、
慟哭し始める。

かの天使はジェルソミーナを救えたのだろうか?
そして、
ジェルソミーナはザンパーノを救えたのだろうか?
そう、両方ともちゃんと救われたと、
そう思う。

12.01.07 シネコン映画館(午前十時の映画祭)、過去にVTR,TVで数回


コメントを投稿