ある日の夕方。総務課長が工場長と連れだって工場へやってきた。手には掛時計を持っている。
どうやら工場の壁に掛けてある時計を交換するらしい。新しい時計は、以前の時計よりも低い位置に設置された。
この時計、文字盤の下にフタがあり、中にはいくつかのスイッチが並んでいる。フタの隣にはスピーカー用と思しきスリットもある。ということは、設定した時間になるとアラームが鳴るのだろうか。
やがて日が沈み、終業時間を1時間ほど経った頃、時計から軽やかなメロディーが流れてきた。曲は「花」武島羽衣作詞・滝廉太郎作曲である。
どうやらこれも労働基準監督署の監査に絡むもののようだ。その日、メロディーが流れたのが19時00分と19時15分。この19時00分というのは表向きの終業時間である。
19時から15分間の休憩を挟んで、19時15分からが残業時間になる。新しい時計のアラームは、その時間を知らせているのだ。
翌日は、11時00分と11時15分にも鳴った。これは、表向きの始業時間である10時から1時間経ったので休憩時間を取れ、ということのようだ。
実際には、休憩時間であっても客が来ていたら休憩は取れないし、夜は休憩を取っている暇があったら作業をして、早く帰宅したい。「花」が鳴っても「うるさいなあ」と思うだけなのである。
さらに、この時計のアラーム、オルゴール調のメロディーなのだが、聞くたびに頭にあるフレーズが浮かんでくるのだ。
「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、上野に到着します・・・」
かつて東北・上越新幹線は、車内アナウンスの前に各駅ごとにメロディーを設定し、オルゴールを流していた。盛岡駅は「南部牛追い歌」、新花巻駅は「星めぐりの歌」、北上駅は「北上夜曲」といった具合である。そして上野駅が「花」であった。時計のオルゴールは新幹線のオルゴールよりも長いのだが、同じ曲ということもあって、非常に音がよく似ている。またテンポもほぼ同じ。
結果、私の頭には尾久客車区に寝台客車がならぶ風景が浮かび、「上野駅からの乗り換え列車をご案内いたします・・・」という車内放送のフレーズが流れるのだ。
操作パネルでいじれば、他の曲に変えられるのかな・・・。
どうやら工場の壁に掛けてある時計を交換するらしい。新しい時計は、以前の時計よりも低い位置に設置された。
この時計、文字盤の下にフタがあり、中にはいくつかのスイッチが並んでいる。フタの隣にはスピーカー用と思しきスリットもある。ということは、設定した時間になるとアラームが鳴るのだろうか。
やがて日が沈み、終業時間を1時間ほど経った頃、時計から軽やかなメロディーが流れてきた。曲は「花」武島羽衣作詞・滝廉太郎作曲である。
どうやらこれも労働基準監督署の監査に絡むもののようだ。その日、メロディーが流れたのが19時00分と19時15分。この19時00分というのは表向きの終業時間である。
19時から15分間の休憩を挟んで、19時15分からが残業時間になる。新しい時計のアラームは、その時間を知らせているのだ。
翌日は、11時00分と11時15分にも鳴った。これは、表向きの始業時間である10時から1時間経ったので休憩時間を取れ、ということのようだ。
実際には、休憩時間であっても客が来ていたら休憩は取れないし、夜は休憩を取っている暇があったら作業をして、早く帰宅したい。「花」が鳴っても「うるさいなあ」と思うだけなのである。
さらに、この時計のアラーム、オルゴール調のメロディーなのだが、聞くたびに頭にあるフレーズが浮かんでくるのだ。
「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、上野に到着します・・・」
かつて東北・上越新幹線は、車内アナウンスの前に各駅ごとにメロディーを設定し、オルゴールを流していた。盛岡駅は「南部牛追い歌」、新花巻駅は「星めぐりの歌」、北上駅は「北上夜曲」といった具合である。そして上野駅が「花」であった。時計のオルゴールは新幹線のオルゴールよりも長いのだが、同じ曲ということもあって、非常に音がよく似ている。またテンポもほぼ同じ。
結果、私の頭には尾久客車区に寝台客車がならぶ風景が浮かび、「上野駅からの乗り換え列車をご案内いたします・・・」という車内放送のフレーズが流れるのだ。
操作パネルでいじれば、他の曲に変えられるのかな・・・。
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