このエントリーは
「新入社員がやってきました その2」の続きです。
※今回は専門用語がたくさん出てきます。ごめんなさい。
え~と、某自動車整備専門学校で「二級自動車整備士(ガソリン及びヂーゼル)」資格取得を目指して2年間勉強してきた
はずの新人君。
親会社と地域のグループ会社での研修を終えて配属されたとたん、補充要員として異動することが決まったことは書きました
<ここまで詳しくは書いてない
その異動先の工場長はとても厳しい人なので、多少は使えるようにしておかねばと思って仕事を教え始めました。
最初は洗車から。続いてオイル交換・・・が
出来ない!
ここから先は、主任教育係(昨年10月入社の社会人3年生)からの伝聞を中心にお送りします。
注:教育を一人に押しつけているわけではありませんっ。3年生君は法定点検とか車検をメインにやっているんで、基礎訓練をさせるのにちょうどいいんで、ついつい「3年生君の作業を手伝え」となるわけで・・・。
一応、みんなで教えようとして・・・・・・ました(過去形)
その1:
配属から数日後。オイル交換ぐらいなら、とやらせてみたところ、「オイルってどうやって抜くんですか?」と聞かれた。
その2:
エンジンオイルの量は、軽自動車なら大体3リットルと教えた翌日。
オイルジョッキに4リットルも入れて運んでいる姿が目撃された。
その3:
入庫中の軽自動車を指して、「この車のバッテリーは何ボルト?」との問いに、「6ボルトです」と答えた。
その4:
「エンジンを始動する時に、最も電力を消費する部品はどれ?」との問いに「オルタネータです」と答えた。
ちなみに、この問いの正答は「セルモータ(スタータ等)」である。オルタネータは発電機なので、電力を多量に消費することはない。
その5:
オルタネータ(発電機)の役割を訊くと、「クランクシャフトを回します」と答えた。
オルタネータが回ってファンベルトを回し、その力でクランクシャフトが回って自動車が走るそうだ。
じゃあ、ガソリンはどこで使うんだろう・・・?
このあたりで、本部にクレームを入れます。
「オイル交換も出来ないヤツはいらない」
とか
「教育以前の問題だ。本部で面倒見てくれ。足手まといだ」
なんて感じです。
その声に対し、
「いくらなんでも、そこまでひどくないだろう。専門学校を出ているんだし」
と応えた本部でしたが、度重なる抗議の声にようやく重い腰を上げました。
ここから、本部による教育が始まります
その6:
軽自動車をリフトアップして教育です。
まずは小手調べ。バッテリーの電圧測定です。
アナログ式テスターを持たせて、電圧を測らせます。
手順は簡単。テスターの適切なレンジ(測定範囲)にダイヤルを合わせて、赤い棒をプラス端子へ、黒い棒をマイナス端子にくっつけると針が動くので、そこで電圧を読みとるのです。
では、新人君の行動を再現します。
1:テスターの測定範囲を「0~5ボルト」に設定<まずここで間違っているんです。12ボルトのバッテリーなんですから、測定範囲は12ボルト以上に設定しなければいけません。テスターにもよりますが通常は「0~25ボルト」に設定します。
2:テスターの棒をバッテリー端子に接続
3:テスターの針、思いっきり振り切る<ここ笑うトコです
4:首をひねりながら測定範囲を「0~0.25ボルト」に設定
5:テスターの棒をバッテリー端子に接続
6:目にも止まらぬ早さで針が振り切る
ここで、ストップがかかりました。
で、
「テスターの使い方ぐらい知っているだろう?」
と訊いたんだそうです。すると、
「学校ではデジタル式テスターしか使ったことがありません」
とのお答えが・・・。
それならば、とデジタル式テスターを渡したところ、測定範囲の設定が出来ずに四苦八苦。
時間がないんで設定してあげて、測定をさせようとしたところ、今度はプラス用の赤い棒をバッテリーのマイナス端子へ、マイナス用の黒い棒をプラス端子へ???接続する直前にドクターストップ!
「壊す気か!」
の声が工場に響き渡りました。
その7:
ターボチャージャー(過給器)の説明ができません。付いている場所も理解していません。
今時の若い者って、ターボを知らないんですか?
「サーキットの狼」の時代でターボは終わりですか、そうですか。。(違
その8:
リーフスプリングを指さして、あれはナニ?と訊くと、
「サスペンションです」
とのお答え・・・。いや、「○○スプリング」って解答が欲しいんだYo・・・。
それではと、隣のリフトに載っていた乗用車のところへ行き、コイルスプリングを指さして、これは?と訊くと、
「わかりません」
と来ました。
その9:
パワーステアリング装置(以下パワステ)の動力源を理解していません。
パワステには、電動パワステと油圧パワステの2種類があります。
油圧式の場合は、エンジンの力でオイルポンプを回し、油圧を発生させます。
以下、ジムニー(JA11)でのやりとりです。
-(エンジンルームを指さして)ここに、エアコンのコンプレッサ(室外機)があります。その下にポンプがあります。さて、このポンプはどんな役割をしているでしょう。
「エンジンを動かします」
-エンジンってのは油圧で動くんかい。ここにポンプに繋がっているホースがあるだろう。ホースの先に付いているタンクの中に入っているオイルは何オイルだ?
「・・・エンジンオイルですか?」
-(タンクのフタを外して)これ、赤いだろう?エンジンオイルってこんな色か?
「違います」
-じゃあ、これは何オイルで、この油圧はどんな仕事をするの?
「デファレンシャルギヤを動かします」
-それは油圧じゃなくて、プロペラシャフトで動かすんでしょ?車の機構で油圧を使う所って、どんな所があった?実習を思い出して見ろ。
「・・・わかりません」
-ステアリングギヤボックスにホースが繋がっている理由を考えてみ?
「・・・わかりません」
-・・・。
後で3年生に同じ質問をしたところ、少し考えた後で
「まさか、この車って油圧でパワステを動かしてるんですか!?すごい、初めて見ました。軽自動車でも油圧パワステってあるんですね!」
という答えが返ってきました。つか、ダイハツの軽自動車は・・・まあいいか。ちゃんと、電動と油圧があるってわかってるし。
え~と、
主なエピソードはこんなところですか。
この他に、「部品の名前を覚えろ」と渡したパーツカタログ。持ち帰るかな、と思っていたんですが工具箱の上に置き去りです。
また、3年生が「教科書持ってこい。それを見ながら、作業を見ていろ」と言ったのに、教科書を持ってこない。
だめ押しが「資格試験に受からなかった」です。
そんなわけで、「7日に最後通牒」を出す、というのが本部の結論だそうで。
よりよい(再)就職先が見つかることを祈ります。
って書いてるけど、辞めなかったりして(汗
ちょっと追記(2007/5/4 2:40)
私たちの対応が厳しいと感じられるかも知れませんが、「二級自動車整備士」試験に合格することを条件に採用しています。
また、彼にたいする質問は、専門学校卒ならば答えられるはずのものばかり・・・のはずです。ちょっと自信が揺らいできますが。
難しいことを訊いているわけでは・・・ないんですが。。。