日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 越前守助廣 Sukehiro Katana

2016-12-29 | 
刀 越前守助廣

 
刀 越前守助廣

 今年一年有難うございました。来年も日本刀の面白さをどれだけお伝えできるのかわかりませんが、できる限り続けます。今年最後の紹介です。

 濤瀾乱はで有名な助廣の初期には、このような互の目出来がある。頭が丸みを帯びた沸深い互の目が二つ三つと連続し、やや間があって繰り返し、刃中には足が乱れ入ってさらに砂流し金線沸筋が流れ掛かる。相州伝には違いないのだが、この作風の前に初代譲りの備前伝があることは良く知られている通り、備前伝の互の目丁子が基礎にあっての創意に満ちた相州伝である。とはいえ、南北朝時代に隆盛し、後に多くの工が影響を受けて再現を試みあるいは独創を加味した相伝備前ではない。

      
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脇差 高橋幸重 Yukishige Wakizashi

2016-12-28 | 脇差
脇差 高橋幸重

 
脇差 高橋幸重

一尺六寸強の扱い易い脇差。江戸後期安政頃の作で注文銘がある。地鉄は小板目鍛えが流れて柾目がかり、地景により肌目が起って強みが感じられる。刃文は浅い互の目に湾れを交え、刃中は沸が強く肌目に沿って沸が流れ、さらに長い金線が砂流しを伴って刃中を走る。互の目が沸筋や金線によってはっきりとせず、小乱調に沸の濃淡となっており、帽子は浅く乱れ込んで掃き掛けて返る。写真では穏やか風があるも、光を反射させて鑑賞すると変化に富んだ様子が分かる。
 
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刀 上野介吉正 Yoshimasa Katana

2016-12-28 | 
刀 上野介吉正


刀 上野介吉正

 江戸時代前期寛文頃の江戸の刀工。美濃から移住した刀工群の流れを汲むことから、美濃伝を下地としているが、その様子は地鉄鍛えに観察される程度。即ち、平地小板目鍛え、鎬地柾目鍛えが主調。刃文は互の目に湾れを交えたもので、沸深く明るく、穏やかに足が入る。刃縁は沸の広がりがほつれ状に流れ、所々砂流しとなる、明らかな相州伝。
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短刀 吉兵衛尉吉次 Yoshitsugu Tanto

2016-12-27 | 短刀
短刀 吉兵衛尉吉次


短刀 吉兵衛尉吉次

 幕末から明治に活躍した姫路の刀工。造り込みは、重ねががっちりと厚く、腰の上から棟の肉を削いで刺突の効果を高めた構造。地鉄は板目が流れて柾がかり、地沸が付いてと言うより、皆焼状に焼が施されていることから、全面が沸で覆われている。これほどまでに焼が強いと、本来であれば折れ易いのだろうが、重ねが極厚であることから、打ち合いにも充分に耐えられそうだ。良く計算された作と言えよう。刃文は湾れに浅い互の目を交えているが刃形は判然とせず、とにかく刃中は沸が強く流れて迫力がある。これが棟焼まで連続しているのだ。特殊な注文であろう。
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脇差 伊勢大掾綱廣 Tsunahiro Wakuzashi

2016-12-26 | 脇差
脇差 伊勢大掾綱廣


脇差 伊勢大掾綱廣

 相州鍛冶の正系で正宗の末を名乗る江戸時代前期の刀工。虎徹に作刀を教えた一人として頗る有名。一尺八寸近くの寸法の長い作で、抜刀の使い手の注文であろうか。地鉄は板目が強く意識されて肌立ち、地沸も強く全面を覆い、激しい景観。刃文も沸の強い乱刃で、刃中に互の目が交じり砂流しが掛かり、細い沸筋が走り、沸の叢があり、足が入り、地中には湯走りが流れ込む等、ここも激しい。帽子は比較的穏やかになり、先は小丸に返り、長く焼き下がり棟焼に連なる。
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脇差 井上真改Shinkai Wakizashi

2016-12-24 | 脇差
脇差 井上真改



脇差 井上真改

 真改の相州伝。絹目とも表現される均質に詰んだ小板目肌に細かな地景が組み込まれた鍛え肌が國貞‐真改と続いた同家の特徴。真改はさらに沸が深く明るく強く意識された焼刃を生み出した。この脇差が良い例で、細かく詰んだ地鉄に沸の粒も揃って刃中に深く広がる様子が写真でも良く判る。この焼刃の中に金線砂流し沸筋が流れ掛かる。強く意識されているにもかかわらず、決して粗くなく、穏やかと言い得る景色を成している。子細を良く鑑賞してほしい。

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刀 陸奥住道辰 Michitoki Katana

2016-12-22 | 
刀 陸奥住道辰


刀 陸奥住道辰

 幕末頃の会津刀工道辰の、相州風の焼刃を示した作。会津には近藤勇や土方歳三が用いた秀國がおり、兼定がいるように、斬れ味鋭い刀が製作されていた。道辰は江戸前期の長道の門流。やはり高い斬れ味を誇った。引き締まった姿格好は江戸後期の会津刀工らしさが窺える。この刀は、小板目肌に板目を交えて良く詰み、穏やかな地景が網状に入り組んで細かな地沸が交じる。刃文は湾れに細かに乱れた互の目の複合で、刃境には沸が叢付きほつれ掛かり、刃中には足が無数に入り、湯走り掛かり、肌目に沿った金線や砂流しも活発、帽子も調子を同じくして火炎風に掃き掛ける。沸深く明るい出来である。
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刀 近江守清宣 Kiyonobu Katana

2016-12-21 | 
刀 近江守清宣


刀 近江守清宣

 清宣は寛永頃の美濃刀工。はじめは戦国時代の美濃刀工に多くみられる兼の文字を冠した兼宣と銘していたが、多くの美濃刀工と同様に、後に改銘した。作風は、帽子が乱れて返るところに美濃伝の特徴が現れているものの、沸強く砂流し沸筋の働く相州伝。特にこの刀は反りが深く身幅広く、鋒延び加減でがっちりとした印象。江戸時代とはいえ寛永頃であり、戦国時代を生きた武士がまだ生きており、いつまた戦乱の時代に戻るかもしれぬ気配が濃厚であった。だから刀も実戦を想定したもの。江戸時代初期は相州伝の流行期。この刀も板目が強く意識されて肌立つ部分と小板目調の肌が混じり合って覇気に富んでいる。刃文は互の目が不定形に乱れ所々に耳形や矢筈形が感じられ、刃中には金線を伴う砂流し、沸筋が強く働く。腰元の大ぶりな彫刻も相州風。


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脇差 伊勢守國輝 Kuniteru Wakizashi

2016-12-20 | 脇差
脇差 伊勢守國輝


脇差 伊勢守國輝

 一尺八寸強、身幅広く反りが深く重ねもしっかりとした、同工作中でも殊に優れた脇差。大坂新刀の特徴顕著な相州伝。沸の美観が全面に展開されている。まず、良く詰んだ小板目鍛えの地鉄に微細な地沸が付いてしっとりとして・・・などという説明は何度もしているが、特に綺麗に仕上がっている。それが故に刃沸も明るく、粒が揃い、匂を伴って刃中に鮮やかに広がっている。この沸の霞中に流れるような働きがあり、砂流しとなり、帽子は同調しているも、清く澄んでいる。
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薙刀 石見守信助 Nobusuke Naginata

2016-12-17 | その他
薙刀 石見守信助


薙刀 石見守信助

信助は戦国時代末期の同田貫派の刀工。同田貫派はがっしりとした造り込みで良く知られている。この薙刀も、一尺六寸と扱い易さを追求して寸が延び、短めの柄を装着したらさぞ扱い易く、戦場では活躍したろうと思う。ところが使われた武器としては、健全体が良く残されている。地鉄は板目が肌立つ風があり、地沸が付いて映りが立ち、強みが感じられる。刃文は湾れに互の目を交えた相州風。互の目は小互の目によって出入りが複雑。焼刃は小沸に匂が交じって刃縁締まり、匂が満ちた刃中には小足、葉が入って刃境は砂流しほつれで変化に富んでいる。帽子は湾れ込んで先小丸に返る。
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脇差 兼貞 Kanesada Wakizashi

2016-12-16 | 脇差
脇差 兼貞

 
脇差 兼貞

 戦国時代後期天正頃の美濃の刀工。この時代には、美濃刀工も相州伝を採り入れた作を遺している。というより、相州伝が流行した時代と言うべきであろう。この作では、地鉄などには美濃の要素があり、刃文が直刃に互の目を交えた構成で、帽子は物打辺りの互の目から連続させた地蔵帽子で、先がわずかに掃き掛けている。かなり刃文構成を意識して整えている。現在考えれば江戸時代に近付いている。でも地鉄には古風な要素が強く残り、ザングリとした肌立つ様子が良く判る。斬れ味を追求し、しかも刃文構成にも独創を求めているのだ。一尺三寸弱で、反りが強く、身幅があるからいかにも実戦的な武器といった印象。戦乱の場を経巡った背景にも興味が及び、迫力がある。55□


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脇差 越後守包貞 Kanesada Wakizashi

2016-12-16 | 脇差
脇差 越後守包貞

 
脇差 越後守包貞

 大小の互の目に砂流の掛かる綺麗な刃文構成の脇差。越後守包貞の特徴的作。地鉄は良く詰んだ小板目鍛えで、細かな地沸が付いて潤い感がある。大坂新刀期を代表する刀工の高い技術が示されている。一尺五寸強で、大小揃えとされたもの。身幅たっぷりとして重ねは尋常。この工の出来の優れた作は比較的肉厚感がなく、刃先が鋭く仕立てられている。先幅もたっぷりとして鋒延び、総体がおおらか。綺麗に揃った沸の妙趣がこの作の見どころである。100□


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脇差 伯耆守信高 Nobutaka Wakuzashi

2016-12-15 | 脇差
脇差 伯耆守信高


脇差 伯耆守信高

 信高は江戸時代前期の尾張を代表する鍛冶。その三代目。刃長一尺六寸一分。大小揃いの脇差とされていたものであろう。信高の特徴の一つにがっしりとした造り込みがある。その特徴が良く残されている肉の厚い健全体躯。地金は良く詰んだ小板目鍛えに小杢が網目状の細かな地景で綺麗に起って見える。これに地沸が付いており、鉄でありながらしっとりとした潤い感がある。刃文は互の目乱。互の目が二つずつ連れて耳形になるのが信高の特徴。小沸出来で焼刃が明るく、太い足が入って、これに砂流が流れ掛かる。相州伝に他ならない。75□
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薙刀 梅忠美平 Yoshihira Naginata

2016-12-15 | その他
薙刀 梅忠美平


薙刀 梅忠美平

 美平は梅忠を名乗っているように京都の刀工。埋忠明壽の弟子という伝承がある。この薙刀は、江戸時代前期延宝頃の作とみられるも、実戦を想定したがっしりとした造り込み。反りを控えて物打を張らせた、覇気ある姿格好。地鉄は良く詰んだ板目鍛えで、地沸で覆われ潤い感がある。さすが京の刀工、埋忠の門流を名乗っているだけの力量がある。刃文は湾れに穏やかな互の目を交え、刃縁ほつれ掛かり、刃中には砂流しが広がる。帽子は湾れ込んで先丸く返り、浅く乱れて焼き下がる。
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刀 近江守助直 Sukenao Katana

2016-12-13 | 
刀 近江守助直


刀 近江守助直

 大坂新刀らしい伸びやかで整った姿の刀。綺麗な地鉄に鍛え、刃文も躍動感のある綺麗な互の目を焼いている。助直は助廣の弟子で、助廣没後の大坂を代表する工。この刀では師の技術を余すところなく再現している。微塵に詰んだ小板目鍛えの地鉄は、微細な地沸が均質に付いてしっとりとした感がある。互の目の刃文も粒の揃った小沸に匂が複合して明るく冴え冴えとし、刃縁はわずかにほつれ掛かって刃中に広がる沸に砂流と淡い沸筋を働かせている。とにかく地刃が明るい。良い鋼を選び丁寧に鍛えたことが良く判る。
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