日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 出羽大掾國路 Kunimichi Katana

2012-10-10 | 
刀 出羽大掾國路


刀 銘 出羽大掾藤原國路



 堀川國廣の高足として遍く知られる國路は、また同じく京に栄えた三品派にも学んで独創を高めたことも良く知られている。いずれも古作相州伝を基礎とする作風ながら、肌目立って凄みのある國廣の鍛え肌と、美濃の作風を残し伝える三品派の焼刃構成は、優れた切れ味と古作に紛れる景観を生み出すに充分すぎる要素であった。
 二尺三寸二分と寸法を手頃に身幅広く、兜など硬物斬りを想定したものであろう地肉が付いて重ね厚く手持ち重く、反り深く付いて見るからに豪壮。小板目鍛えの地鉄は良く詰んで均質ながら、処々に鍛着部が緊密な板目流れの肌が現われ古作の景観が充満。厚く付いた地沸も肌目に沿って流れるように働き掛かる。浅い湾れに互の目を交えた刃文は、焼頭の個々はなだらかに出入りするだけでなく高低変化し、尖りごころ、矢筈ごころとなり、その一部が地に深く突き入って飛焼となり、帽子は弛み込んで表は小丸に、裏は掃き掛けごころに尖って返る。明るい匂に包まれて澄んだ小沸主調の焼刃は、刃境冴え冴えとして際立ち、刃中に満たされた匂に淡い小沸の足が射し、刃境から刃中にかけて金線を伴う砂流しが肌目に沿って流れる。大和古伝に相州伝を加味し、移り住んだ美濃の特質をも示す志津の作風を再現している。□

 
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刀 河内大掾正廣 Masahiro-Ⅰ Katana

2012-10-04 | 
刀 河内大掾正廣


刀 銘 肥前國河内大掾藤原正廣



 初代正廣は初代忠吉の娘婿吉信の長男で慶長十二年の生まれ。忠吉の名跡を継ぐことを念頭に修業に励み、十九歳の時には忠吉とは作風を異にする相州伝互の目出来が藩主鍋島勝茂公の目に留まり、その高い技術が評価されて正廣の銘が授けられたという。年下の忠廣を補佐するなど忠吉家隆盛の陰の力となったことも良く知られている。
 寸法長く反り適度に伸びやかなこの刀は、洗練味に溢れて品があり、掻き流された樋によって一段と姿が引き締まっている。小板目鍛えの地鉄は微細な地沸が付いて肥前肌の特質が顕著。淡く地景が入って板目がうっすらと浮かび上がる。互の目の刃文は直焼出しから始まり、丸みのある焼頭が軽やかに抑揚変化して連続し、帽子はわずかに刃方に倒れて先小丸に返る。粒子の揃った小沸主調の焼刃は、肌目に沿って刃縁がほつれ掛かり、淡く匂の広がる刃中には長く足が射し、これを切るように砂流し金線流れ、互の目に虻の目状の葉が入って肥前正廣の特色が示されている。

 
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脇差 長曽祢虎徹 Kotetsu Wakizashi

2012-10-01 | 脇差
脇差 長曽祢乕徹

 
脇差 長曽祢興里入道乕徹

 一尺五寸五分の、大小揃いとされた内の脇差。寛文年間の作で、比較的反りが少ないとはいえ、バランスよく反り、扱い易さが追求されている。地鉄は小板目肌が均質に詰んで地沸が付いて冴え冴えとしており、これを縫うように板目肌が、特に物打辺りに見える。鎬地の柾目は江戸期の刀の特質。刃文はゆったりとした湾れ刃で、横手辺りでいったん浅くなり、帽子はふくらが尋常に先小丸に返る、いわゆる虎の顎。焼刃は小沸出来ながら、刃境から刃中に明るく冴えた匂が濃密に広がり、刃先に至るまで匂で満ち満ち、この上を太く細くと沸筋が幾筋も走る。光を反射させて観察すると、このような匂の存在が乕徹の真価であり、誰にも真似の出来ない作風であると言い得る。この脇差の基礎は相州物にあり、古名作を手本としたことがよく判る。

 
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