日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 津田近江守助直 Sukenao Wakizashi

2017-11-22 | 脇差
脇差 津田近江守助直


脇差 津田近江守助直

 助直の互の目の美しさは最高だが、このような湾れ調の焼刃構成も美しい。刃文の形状が美観の一つであることはもちろんだが、地鉄が刀の本質であることを改めて認識させられる作でもある。きめの細かな小板目鍛えに、微細でしかも粒の揃った地沸が付き、そのまま焼刃の刃沸となり、刃先に向かっては明るい匂と共に淡く溶け込んでゆくような風合い。刃中には小沸の粒子が微かに肌目に沿って流れるような景色が窺え、帽子は細筆で掃きかけたように帽子の先端が流れ掛かる。総てが良い。230□
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 津田近江守助直 Sukenao Wakizashi

2017-11-21 | 脇差
脇差 津田近江守助直


脇差 津田近江守助直

 助廣の弟子で、助廣没後の大坂鍛冶を牽引した助直の脇差。濤瀾乱はもちろんいいけれど、時代の上がる相州物に倣ったものであろう、互の目に変化を与えており、その刃中に叢付く沸の様子が良い。沸は焼刃を構成しているだけでなく、粒が荒れることなく、沸筋、砂流し、刃中に溶け込むような沸足を生み出し、地側にも湯走り、飛焼などを生み出している。刃文だけではなく、地全面に均質に付く強い地沸の景色も感動的だ。焼が深いために地の景色は良く見えないのだが、細かな地景が地沸の合間を縫っている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 雙 越前守助廣 Sukehiro Katana

2017-11-17 | 
刀 雙 越前守助廣


刀 雙 越前守助廣

家督を継いだ助廣は、後に濤瀾乱刃を完成させてゆく。この頃には互の目に大小があり小互の目が加わって花弁のように見えたり、刃中に沸が叢付き、砂流しがあり、沸筋がある、未だ自然な互の目の形状がみられる刃文構成。全くの自然体かというとそうでもなく、互の目は丸みがあり、その大小の円形の組み合わせによる刃文構成であることが判る。互の目を切って流れる沸の美観も見どころ。波の押し寄せてくるような綺麗に揃った濤瀾乱は、もちろん他の多くの刀工に刺激を与えたように優れているが、助廣は濤瀾乱だけを焼いていたわけではない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 越前守助廣 Sukehiro Wakizashi

2017-11-14 | 脇差
脇差 越前守助廣


脇差 雙 越前守助廣

 二代目助廣が、家督を継いだわずかな期間のみ用いた雙の文字が刻された作。互の目乱に玉状の飛焼が交じる構成。細かな地景が網目状に入り組んで活力の感じられる綺麗な地鉄で、後の均質な小板目肌とは異なる強い動きの感じられるところが面白い。焼刃は頗る明るい小沸出来。刃中にほつれが掛かり、肌目に沿って互の目に流れ掛かるような風合い。帽子は端正な小丸返りにわずかに掃き掛けが掛かる。□220
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 粟田口近江守忠綱 Tadatsuna Wakizashi

2017-11-13 | 脇差
刀 粟田口近江守忠綱


刀 粟田口近江守忠綱

 初代忠綱が得意とした備前伝、古作一文字を見るような複式に焼かれた小互の目丁子。丁子足が長短入り乱れ、焼頭はわずかに逆がかっており、とても華やか。刀は湾れに互の目を配した出来。互の目の頭は尖り調子であったり丸みを帯びたり、それが複合して山形になったりと変化に富んでいる。構成美の創造を求めたものであろう。江戸時代にはこのように創作意識が高まった時代と理解すればわかり易い。この意識が二代目に受け継がれてゆくのであろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 大慶直胤 Naotane Wakizashi

2017-11-10 | 脇差
脇差 大慶直胤


脇差 大慶直胤文化元年

 若かりし直胤の、沸を強く意識した迫力ある互の目乱の脇差。一尺五寸。小板目鍛えの地鉄は良く詰んで細かな地沸で覆われ、湯走りから地沸が厚く広がる。刃文は大小の互の目が連れるような構成。さらに沸による乱れが加わり、沸の流れ、切り立つような沸筋が加わっている。相州伝に違いないが、もう少し時代が下がってくると、鍛え肌を意図的に強く出して肌目に沸が絡むような作品を製作するようになる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 固山宗次 Munetsugu Katana

2017-11-09 | 
刀 固山宗次


刀 固山宗次天保十二年

備前兼光を手本としたものであろうか、穏やかな小互の目の刃文構成。焼を高めない小互の目にしている。地鉄は良く詰んだ小板目肌で、所々に板目、杢目が綺麗に現れている。刃文こそ独創的。互の目の頭が穏やかに高低変化し、その先端から地中に淡く足状の働きが延び、淡い映りに感応し合っているようだ。南北朝時代の備前物、その後の応永備前などによく見られる働きだ。小互の目の刃文は一定にならず、匂が冴えて小沸が加わり、匂足が射して所々に金線が流れる。綺麗だが凄みのある刃文だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 越後守包貞 Kanesada Katana

2017-11-08 | 
刀 越後守包貞


刀 越後守包貞

大小の互の目を、変化を付けて連続させた刃文構成。助廣風の濤瀾乱刃を得意とした包貞ではあるが、そのままに構成するのではなく、丸みのある互の目、角状に尖り調子のある互の目、これによって角張る風の互の目、角が三方向に突き出た互の目、玉刃など、互の目に変化を付けている。助廣を真似ているのではないぞという意識の表れであろう。沸の粒子は均質で匂を伴い、砂流し、沸筋金線が流れ掛かる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 尾崎助隆 Suketaka Wakizashi

2017-11-07 | 脇差
脇差 尾崎助隆


脇差 尾崎助隆享和元年

一尺八寸強、身幅広く重ねは尋常、刃先の肉を削いで斬れ味を高めている。助隆の濤瀾乱刃。助廣以降、助直、照包、正秀、助隆、正繁、助政など多くの刀工が濤瀾乱に挑んで成功しているが、それぞれ個性を出そうと、互の目頭の形状や連続性、大小のバランスなどに変化を付けているようだ。創始者として特別人気の高い助廣と、それを手本とした諸工とを比較して優劣をつけることの愚かしさは、時代背景を含めて論じてもむなしい。「〇〇は…助廣の足元にも及びません」との評価は、弟子の助直以下総ての濤瀾乱写しをした工に与えられた言葉であろう。なんて愚かな評価であろうか。助廣そっくりに製作したら優れているのかというと、それは単なる写しであり、新たな創造性が加わって新趣なる刃文が出来上がる。仮に互の目の高さが揃い調子であっても、波と波の間に湾れが配されていても、互の目が角張り調子であったとしても。濤瀾乱刃の注文を受けた刀工は、助廣臭さを消すべく独創を加味したのであろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 眠龍子壽實 Toshizane Wakizashi

2017-11-04 | 脇差
脇差 眠龍子壽實


脇差 眠龍子壽實文化四年

 刃文で富士山を焼くを得意とした刀工。刃文を絵画のように焼くのは外道だとでも言いたい方もいるだろうが、製作という点では難しい。筆で描くわけではない。刀は焼刃土の置き方で刃文が決定するわけだが、必ずしも富士山のように土を塗るわけではない。焼刃は頗る冴えており、焼ムラがなく、刃境が鮮明、しかも刃中にも足が入り雲が掛かったように匂が立ち込めている。富岳の頂き辺りには雪が残っているかのように匂が配されている。丁子乱で表現した木立の様子も優れている。総てが優れている。これで斬れ味が良いのだから文句あるまい。刃文の形だけではない。そもそもこの一尺二寸前後の、南北朝時代には腰刀として重宝されていた武器とは、抜刀し易いことから室内での防備にはもちろん、戦場でも混戦の中での抜き打ちなどに用いられた、究極の武器である。絵画調の刃文だからと言って低く評価するのは愚かだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 横山祐包 Sukekane Katana

2017-11-02 | 
刀 横山祐包


刀 横山祐包安政二年

 祐永もそうだがこの祐包も、腰反り深く姿に伸びやかな印象があり、鎌倉時代の太刀を想定していることが判るだろう。地鉄は良く詰んで無地風に透明感があり、微細な地沸で覆われ、しっとりとした質感。刃文は互の目が複式に焼かれて茶の花の膨らんだようなむっくりとした互の目。大小抑揚があり、綺麗に連続している。祐永‐祐包と続くこの一門らしい出来である。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする