日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

太刀 則常 Senoo-Noritsune Tachi

2010-10-28 | 太刀
太刀 則常

太刀 銘 則常

 

 時代の上がる備中青江鍛冶で妹尾と呼ばれる則常(のりつね)の太刀。わずかに磨り上げられて折り返し銘とされているが、鎌倉時代前期の姿を留めて品位が高い。この太刀の大きな特徴は、地鉄に現われている鮮明な映り。青江次直でも紹介したように、鯰の肌模様に擬えた呼称で、まさにそれに似た叢のある肌合いが現われた作例。緻密に詰んだ板目鍛えの地鉄の、焼刃寄りが一段黒く深く沈んだ暗帯となり、鎬寄りに白く乱れた映りが鮮明に現われる。写真を見ても理解できよう。映りは写真に写らないのが普通だが、この作では良く分かる。ここを楽しんでほしい。焼幅の広い直刃調刃中には小足、葉、沸筋盛んに働き、ここにも青江物の特徴が良く現われている。□

 

太刀 助次 Aoe-Suketsugu Tachi

2010-10-21 | 太刀
太刀 助次

太刀 銘 助次



 鎌倉時代前期の、古青江助次(すけつぐ)の貴重な在銘の太刀。古青江の作品は中青江に比して地鉄鍛えに強みがあり、微塵に詰んだ小板目鍛えに板目肌が現われ、澄肌とか鯰肌と呼ばれる映りが現われるのを特徴とする。その特徴が現われている作品を紹介する。
 映りは一般的に写真に映り難い。光を直接反射させて鑑賞することによってようやく分かる働きである。この写真では、よく詰んだ小板目鍛えを基調とし、所々に板目肌が現われ、刃文に近い部分が和図かに沈んで暗帯部を形成、鎬寄りに大きく乱れた淡く白っぽい叢が全体にみられる。映りが島状あるいは斑状に点在するところが、鯰肌の表現に繋がっていると思われる。□


刀 春光 Harumitsu Katana

2010-10-16 | 
刀 春光 

刀 銘 春光天文二十三年十一月吉日



 鉄砲の伝来した天文頃の、長舩十郎左衛門尉春光の刀。一寸弱ほど磨り上げられて、現状で二尺三寸六分、元来は二尺四寸五分。身幅人状にがっちりとして反り深く、姿は伸びやか。小杢目鍛えの地鉄が良く詰んで地沸が付き、映りはこの工にしては淡く入る。刃文構成は焼の深い匂出来の湾れ調ながら、刃縁が小模様に乱れ、小足盛んに入り飛足入り、葉が入って連続し、刃中冴え冴えとした複雑な景観を呈する。殊に刃縁の微妙で細やかで複雑な調子は言い表わせない魅力がある。帽子は焼の深い湾れ込みで先わずかに掃きかけて長く返る。逆足傾向は弱いながらもこの工の特徴的な働き活発な出来となっている。□


刀 春光 Harumitsu Katana

2010-10-10 | 
刀 春光


刀 備州之住長舩十郎左衛門尉藤原春光作元亀四年八月



 戦国の世が激化してゆく頃に活躍した長舩十郎左衛門尉春光(はるみつ)の、寸法の長い刀。春光は、同時代同国の祐定や清光に比較して作品が少ない。ところが戦国武将の注文打ちが間々遺されており、寡作ながら技量の高い優工であったことが想像される。祐定などに比較して一時代上がる感のある古風な作風を特徴としている。もっと高く評価されて然るべき刀工の一人。地鉄は詰んだ杢目鍛えで、映りが鮮明に立つところに大きな特徴がある。映りの働きはこの時代の備前刀には現われないのが特徴であるが、春光の明るい地鉄の質感からも、素材そのものが祐定や清光とは異なっていた可能性がある。刃文は湾れ互の目や本作のような逆足の盛んに入る互の目丁子で、刃中には小足、飛足、葉、その連続になる沸筋や砂流しが盛んに入るのが常。刃縁が複雑に出入りし、焼深く、刃縁のほつれも激しい。帽子は乱れ込んで返り、物打辺りの上部近くまで棟焼を施す。



刀 法光 Norimitsu Katana

2010-10-06 | 
刀 法光

刀 銘 備州長舩法光作明応九年八月日



 優作を多く残すも、個銘の切られた作品が極めて少なく、その家系が詳らかではない法光(のりみつ)の刀。一寸五分程の磨り上げで、現在は二尺二寸八分。八分の反りで、元幅広く先幅バランス良くこれに伴う典雅な姿格好。小板目に杢交じりの鍛え肌は密に詰んで繊細な地景が肌目に沿って入り、刃文を写したような乱れ映りが入る。匂主調ながら刃縁に小沸の付く互の目丁子の焼刃は、小模様の互の目、地に突き入る角状の刃、小丁子などを交えて刃形は複雑。匂が立ち込めて透明感のある刃中には小足が入り、砂流しが細い金線を伴って掃き掛かり、帽子は乱れ込んで焼き深く返る。




刀 忠光 Tadamitsu Katana

2010-10-01 | 
刀 忠光

刀 銘備州長舩忠光 延徳二年二月日

 

 室町時代中頃の長舩を代表する刀工である忠光は、直刃に魅力的な作品が多い。端正な中直刃にほつれ、金線入り、淡い足が入ることもあるが、激しさよりも落ち着いた風情を呈する。
 この刀は、この頃に盛んに製作された、二尺をわずかに切る片手打ちのスタイル。板目肌に杢目が交じった地鉄は密に詰んで微細な地沸で覆われ、応永杢とは微妙に風合いが異なるも、備前刀の優質を鮮明にしている。刃文はわずかに湾れた直刃で、物打辺りに金線否妻が強く現われて大きな見どころとなっている。