日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 兼門 Kanekado Tanto

2010-11-30 | 短刀
短刀 兼門


短刀 銘 兼門 永禄五年



 特別の注文で製作されたものであろう、美濃物としては珍しい製作年紀が刻された兼門(かねかど)の短刀。出来栄えも殊に優れている。九寸一分とやや延び加減の寸法で、身幅は尋常。良く詰んだ板目鍛えの地鉄は、地沸が付いた全面に網目状に地景が異って躍動感に満ち、焼刃に迫る関映りが鮮明に起ち現れて凄みがある。直刃に小互の目を交えた変調の焼刃は、匂口が締まって明るく冴え、刃境には匂のほつれ、喰い違い、うちのけなどが働き、帽子は小沸付き地蔵風に乱れて返る。いずれ名のある武将の腰に備えられていたものであろう、名品である。

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短刀 兼房 Kanefusa Tanto

2010-11-28 | 短刀
短刀 兼房


短刀 銘 兼房



 関鍛冶の中にあって、大房互の目を焼くことで特徴のある、永禄頃の兼房の短刀。一尺八分の寸延び短刀は反りがわずかにある。板目鍛えの地鉄は小板目を交えてよく詰み、その中に柾目状の肌が現れる。地沸で表面明るく、関鍛冶の優秀性が示されている。匂口の締まった互の目乱の焼刃は、互の目の頭が小互の目で茶の花状に変化のある態で、互の目の高低強く、この刃文構成を兼房の特徴から兼房乱(けんぼうみだれ)などと呼ぶことがある。互の目の中には匂の雲が揺れ、匂の砂流しが金線を伴って流れ、これに沸が叢付く。地には一部に飛焼状に沸の叢付いたところや湯走りがある。帽子は地蔵風に乱れて返る。
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刀 兼得 Kanenari Katana

2010-11-26 | 
刀 兼得


刀 銘 兼得



 関善定派の兼得(かねなり)の、天文頃の刀。一寸ほどの磨り上げで、現在は二尺三寸強。あまり耳にしない刀工名だが、この作品は出来優れており、美濃刀の優秀性が良く分かる。板目鍛えの地鉄は杢目と大きく流れる肌を交えて総体に小板目肌で詰み、繊細な地景が肌を強く起たせて躍動感があり、地沸が厚く付いて関映りで明るい。直刃湾れの焼刃は、小沸の帯が広く狭くと抑揚し、刃境には小沸のほつれが掛かり、刃中に砂流し、金線、小足が入り、一部これが二重刃状に見える。大和古伝を基調とする、善定派の特質が現れている。
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刀 兼杉 Kanesugi Katana

2010-11-24 | 
刀 銘 兼杉


刀 銘 兼杉



 単調な互ノ目乱刃に特色のある刀。兼杉(かねすぎ)は美濃国の天文頃の工。戦国時代の美濃の特徴と優秀性が鮮明に現れている作の一つ。小板目肌鍛えの地鉄は良く詰み、細かな地沸が付いて細かな地景が全面に自然に現れる。粒子の均一な小沸出来互の目の焼刃は、犬牙刃ほどではないがわずかに尖りごころがあって美濃物の互の目の典型。刃中には乱れた砂流しや葉などはなく、微かに足が焼きの谷からは先に向かって入る。帽子は湾れ紺で先小丸に返る典型的地蔵帽子。このような仕立ての基礎が、後の江戸時代の一般的な刀の特徴、すなわち綺麗な地鉄へと発展してゆくのであろう。
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刀 兼常 Kanetsune Katana

2010-11-22 | 
刀 兼常


刀 銘 兼常



 同じ兼常の刀。これもわずかに区送りとされて二尺ちょうどの、頗る扱いやすい寸法。実用の時代、この寸法に仕立て直した理由は歴然。樋を掻いて重量を軽減し、刃先を鋭く仕立てているのも截断能力を高める意味があった。
 小板目に板目鍛えの地鉄は肌立ちごころとなるも総体は良く詰み、地沸が付いて地景が躍動的に入る。直刃調の浅く湾れた焼刃は、刃縁に小沸が付いて刃中匂で冴え、凄みが感じられる。刃縁は小沸でほつれ、喰い違い、淡い金線を伴う沸筋が走る。先に紹介した兼常は古い研磨であるため、地鉄が特に立って見えるが、地刃の本質は良く似ている。帽子は浅く湾れ込んで掃き掛けごころに丸く返っており、地蔵帽子は顕著ではないが、その雰囲気は充分に感じられる。□



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刀 兼常 Kanetsune Katana

2010-11-20 | 
刀 兼常

 
刀 銘 兼常

寸法を控えて下半に深く反りを付けた、片手打ちの様式の兼常の刀。戦国時代には、二尺前後の片手で打ち振るうに適した寸法と造り込みの刀が盛んに製作された。刀の寸法を二尺三寸が標準と言う方がおられるようだが、刀の寸法は時代や使用方法、江戸時代には剣術の流儀によって様々、一様に二尺三寸と言うは大きな間違い。
板目鍛えの地鉄は流れて柾がかり、地景によって肌が強く立ち、地沸が付いて鎬寄りに映りが現れる。匂口の潤んだ湾れ調の焼刃は、刃縁に沸が強く付き、沸の砂流し沸筋が金線を伴って流れ、刃境を越えて沸が地に流れ込む部分もあり、帽子は浅く乱れんで先掃き掛けを伴って返り、棟焼に連続する。光を反射させては沸の粒が際立ち、迫力のある景色が展開している。

 
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短刀 兼常 Kanetsune Tanto

2010-11-19 | 短刀
短刀 兼常

 
短刀 銘 兼常

 

 美濃国では孫六兼元や和泉守兼定(のさだ)に次ぐ上手として知られる兼常の、鎌倉時代の粟田口や来などの短刀を手本としたものであろう、引き締まった姿格好の短刀。板目鍛えの地鉄は地景を伴って肌起ち、淡い映りが棟よりに現れる。これが室町後期の美濃物の特徴的な地鉄。直刃仕立ての焼刃は、匂口が引き締まって端正に刃先に沿い、帽子は小丸にわずかに刃側に倒れて返る。この緊張感に満ち満ちた、細く鋭い構成線こそが美濃物の直刃の魅力。光を受けては明るく冴え、刃境から地側にも淡く匂いが広がり、繊細な筋上の働きが観察される。
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刀 兼元(孫六) Magoroku-kanemoto Katana

2010-11-17 | 
刀 銘 兼元(孫六)


刀 銘 兼元(孫六)



 最上大業物作者として知られる、戦国時代大永頃の美濃の孫六兼元(まごろくかねもと)の特徴顕著な刀。わずかに磨り上げられてはいるが、銘は健全に残り、姿も生ぶの様子を思い浮かべるに充分。身幅は比較的広く、わずかに鎬筋が立ち、刃先の肉は控えめに、先端鋭く仕立てられている。板目鍛えの地鉄は柾目流れ肌を交えて総体に小板目状に詰むも、細かな地景を伴って肌起ち、地沸が付いて凄みがある。焼出し映りが起って関映りが鎬よりに現れ、兼元と特徴と質の高さを示している。匂口の締まった互ノ目乱の焼刃は尖刃を交え、焼の谷に入る足は刃先に抜けるように刃の高さが高低変化している。その刃境にはほつれかかり、小沸の砂流が淡い金線を伴って刃中を流れる。帽子は弛み込んで先掃き掛けて返る。三本杉乱の刃文でよく知られている孫六兼元だが、三本杉の構成は顕著にならず自然味がある。



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短刀 兼綱 Kanetsuna Tanto

2010-11-15 | 短刀
短刀 銘 兼綱


短刀 銘 兼綱

 

 室町時代の明応頃の美濃鍛冶、兼綱(かねつな)の短刀。板目鍛えの地鉄は杢目が交じって肌立つ感があるも、良く鍛えられており、地景も自然に現れており、さぞや良く切れるものと推測される。小沸に匂を複合した焼刃は、直刃に仕立てられてはいるものの、物打辺りにのみ互の目を焼いている。沸匂の深い刃縁は細かなほつれが顕著で、細い沸筋が刃縁を走って二重刃風に見える部分もあり、物打辺りは、刃先に向かって淡く広がる匂の中を鋭い金線が屈曲して走る。

 
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刀 兼国 Kanekuni Katana

2010-11-14 | 
刀 兼国

 
刀 銘 兼国

 室町時代中期享徳頃の美濃三阿弥派の兼国(かねくに)。戦国の増産期に入る以前の、古風な地鉄が魅力の作例。板目鍛えの地鉄は柾気を帯びて良く詰み、全面に地沸が厚く付いて一部に淡い飛焼状に沸が叢付く。肌目に絡んだ沸の粒が黒く沈んで凄みがあり、その一部は地景となって肌を強く見せる。匂と小沸が見事に調和している焼刃は、直刃仕立てでわずかに湾れ掛かり、刃境から刃中に匂の雲が沸き立つように広がり、これが砂流しのように刃中を流れる。刃境にも沸が叢付いて所々ほつれ掛かり、帯状に連なって圧巻。帽子は沸匂深く、刷毛目のように綺麗な掃き掛けとなる。美濃刀の優質を示す作である。

 
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太刀 國資 Kunisuke Tachi

2010-11-13 | 太刀
太刀 國資


太刀 銘 國資



 鎌倉時代後期の肥後延寿國資の在銘の太刀。最高傑作と言って良いだろう。地鉄は緻密に詰んだ小板目鍛えで所々柾がかった板目を交え、九州物にあるような白っぽい映りではなく、山城本国物にみられるような鮮明な沸映りが区から先まで嫌いに乱れて立ち現れ、しっとりと潤いに満ちた肌合いとなる。
 延寿刀工は山城京の来派の流れで國村に始まる。その子が國資。中央の作刀文化を肥後国に伝えるも、その地域の風土に適合した刀造りの至るものだが、國資は延寿の中でも殊に技量優れ、本国物にまぎれる作品を遺している。
 小互の目乱の焼刃は匂に小沸が交じって冴え、匂口深く明るく、出入りは國俊ほど激しい乱ではないが品良く変化している。刃中には京逆足の交じった足が入り、葉入り、金線砂流わずかに入って湯走り掛かり、帽子は焼詰風。鑑賞会の鑑定刀に出題された際、京本国の来國俊や國光と鑑定した方が多くおられたということからも、この太刀の質の高さが窺い知れよう。□

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