日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 肥後大掾貞國 Sadakuni Tanto

2018-09-27 | 短刀
短刀 肥後大掾貞國


短刀 肥後大掾貞國

 慶長頃の越前刀工。刃長九寸五分、無反り、元幅九分三厘、重ね二分三厘、幅の広い樋を掻いている。がっちりとした造り込みの短刀。鎬の位置が樋の脇にあるため、かなり焼刃に迫っている、即ち切刃造に似ている。地鉄は小板目肌に細かな板目肌が交じり、越前刀工らしくザングリと肌立ち、いかにも切れそうで凄みがある。刃文は浅い湾れが小模様に乱れる感じ。肌目に沿って細かなほつれが掛かり、大仰な刃文ではないものの迫力がある。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

短刀 平安城住國路 Kunimichi Tanto

2018-09-25 | 短刀
短刀 平安城住國路


短刀 平安城住國路

 出羽大掾國路の初期、慶長十六年の作。一尺三分、反りは僅少、元幅九分六厘。脇差としては短めの造り込みで、反りが抑えられている点から寸伸び短刀というべきであろう。即ち短刀も長めに仕立てられている時代の典型。國路は國廣の門人だが、積極的に三品派と交流したと思われる点が、作風に現れている。それが、地鉄鍛えと焼刃構成である。この短刀では、地鉄は板目肌に流れ肌を交えて精良に詰んでいる様子が判る。刃文は湾れに互の目を交えた相州古作写し。帽子が特徴的で、美濃風に湾れ込んで掃き掛けを伴って返る。江戸初期の特徴的作の一つ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

短刀 弘幸 Yukihiro Tanto

2018-09-21 | その他
短刀 弘幸


短刀 弘幸

 九寸八分、反り九厘、元幅八分強、重ね一分四厘。南北朝時代の相州貞宗を手本とした作。重ねの薄いのは、本歌の時代のまま。元来が薄手にしたてられており、彫物も時代感があるも、実は南北朝時代からおよそ三百年の時の流れをも再現しているため。つまり時を経て研磨により彫りが浅くなったように仕立てている。巧みな表現だ。地鉄は小板目肌に板目交じり。刃文は浅い湾れに低い互の目交じり。小沸に匂が複合して明るく、刃境にはこにえの砂流しが微かに掛かる。






・・・・・・・・・・・・・・


短刀 弘幸

 一尺七分、反り僅少、元幅一寸強、重ね二分。がっちりとした寸伸び短刀か小脇差か、判断の難しいところ。即ち、いかようにも見使い勝手の良い武器。抜群に詰んで錬れ田小板目鍛えの地鉄に細かな地沸が付いて、刃文は湾れに穏やかな互の目が交じり、刃境は明るく冴え冴えとしている。先の短刀よりちょっと大振りにした感じ。これも南北朝時代の相州物の写し。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 越中守藤原高平 Takahira Wakizashi

2018-09-20 | 脇差
脇差 越中守藤原高平


脇差 越中守藤原高平

 初代兼若の晩年作。寛永初期。一尺三寸強、反り二分、元幅一寸二分強、重ね二分八厘。樋を掻いてあるが重い。兼若の刃文は、角張る互の目に厚い沸が付く出来。この脇差も、晩期だけあって良く詰んだ小板目肌を主調として板目が交じり、地沸が厚く付いて地相だけでもかなりの迫力。これに沸の厚く深い焼刃が施され、刃中には沸のほつれが掛かり沸筋が流れる。相州伝全盛期の中でも殊に凄い。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 越前国住兼法 Kanenori Wakizashi

2018-09-19 | 脇差
脇差 越前国住兼法


脇差 越前国住兼法 寛永五年正月

 貴重な年紀入の脇差。刃長一尺三寸、反り三分九厘、元幅一寸六厘、重ね二分六厘。元先の身幅が広く、反り深く先反りも加わって大鋒に結んだ、この時代の特徴的な造り込み。戦国時代の実用武器は、平和な時代に向かいつつある寛永年間にもまだ製作されている。戦国時代を生きた武将がまだ存命中で、時折各地でも武闘があったため、いつまた戦国期に戻るかもしれぬという気風も存在したのであろう。さらに武骨が大流行していた時代である。注文主は波多掃部。地鉄は越前らしい板目肌が起ってざんぐりとし、刃文は沸の強い湾れに砂流沸筋金線の混じる激しい出来。刃中の鍛え肌と感応して生じた複雑な働きが見どころ。注文作だけあって、かなり出来が優れている。最初に貴重な年紀作と記したが、この時代にはまだ年紀を入れた作は少ない。特別な場合に限られた。80□




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 越中守正俊 Masatoshi Wakizashi

2018-09-18 | 脇差
脇差 越中守正俊


脇差 越中守正俊

 一尺三寸強、反り三分弱、元幅一寸、重ね一分六厘。南北朝時代の相州物を手本とした作。このような古作写しが好まれたのが江戸初期。片切刃造の構造も古作相州物に間々みられる。地鉄は小板目肌に板目が交じって肌が強く見えるのだが、一方で良く詰んでおり、地沸が付いて清浄感に溢れている。古作に紛れると評価の高かった正俊の高い技術が窺える。彫り物も迫力がある。江戸初期らしい作となっている。正俊は三品四兄弟の一人。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 越後守藤原國儔 Kunitomo Wakizashi

2018-09-15 | 脇差
脇差 越後守藤原國儔


脇差 越後守藤原國儔

 これも、江戸最初期の特徴が良く現れた、がっしりとしている鎬造の脇差。金道の作に似ている。もちろん時代はほぼ同じ戦国末期から江戸初期の京都。互いに交流はあったと思われるが、國儔は三品派の金道に対して堀川派の代表工でもあり、言わばライバル。因みに師の國廣が老齢になったころ、弟子となった國貞(真改の親)や國助を指導したのが國儔であったことは有名。この脇差は、常にもまして良く詰んだ小板目鍛え。ザングリとせず、微塵に、しかも肌目が強く立って澄み、細かな地沸が絡んで清浄感がある。刃文は相州伝の湾れに浅い互の目交じり。沸深く強く、刃中には沸筋が流れ、帽子も沸強く掃き掛けが交じる。古刀期から新刀への橋渡しを成した刀工群の一人であり、多くの工に先んじて綺麗な地鉄へと到達している。一尺三寸強、反り四分強、元幅一寸八厘、先幅八分半、重ね二分五厘。江戸初期、このような武骨な作が大流行したことは間違いないが、健全な状態で遺されているものは少ない。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 和泉守藤原金道 Kinmichi-Izuminokami Wakizashi

2018-09-14 | 脇差
脇差 和泉守藤原金道


脇差 和泉守藤原金道

 刃長一尺四寸強、反り三分半、元幅一寸一分半、先幅一寸強、重ね二分三厘。重ねを厚く棟を削いで断面が菱型を成す造り込み。がっしりとしているのは脇差だけではない。刀も、南北朝時代の大太刀を磨り上げたような元先の身幅が広いもので、南北朝時代と違うのは肉が厚い点。この金道の脇差は先に紹介した忠廣の平造とは違って鎬造。元先の幅が広く鎬が立って重ね厚く、江戸時代前期から中期にかけて普通に見る脇差の姿とは全く異なる。板目鍛えの地鉄は強く肌立って戦国期のまま。刃文は湾れに互の目交じり。帽子は浅く乱れ込んで焼き詰め。この金道は三品派四人兄弟の一人。美濃の工で、父と共に京に出てきて活躍し、江戸時代における刀造りの基礎を成している。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 武蔵大掾藤原忠廣 Tadahiro Wakizashi

2018-09-13 | 脇差
日本刀買取専門サイト 銀座長州屋

脇差 武蔵大掾藤原忠廣


脇差 武蔵大掾藤原忠廣

江戸時代初期の脇差には大きな特徴がある。大小揃いで腰に帯びる際の小さな方が脇差。江戸時代に、武士が登城する際に帯びる式正の大小に則ったものを、脇差であると認識している方も多いようだ。しかも脇差は町人の持ち物であるため、出来があまりよろしくないのではなかろうかと、間違った認識の方も多い。以上の説明は正しいところもあるが間違いもある。加えて、現代の法律では一尺から二尺に満たない刀を脇差と分類することからややこしくなっている。
ま、脇差の分類と意味についてはこれまでも説明したので改めて言わないが、二尺を超える脇差もあるし、二尺以下の刀もあることは理解しておくべきだ。江戸初期の造り込みは、当時はやった婆娑羅に通じる傾奇者の美意識を鮮明にする、がっしりとした造り込みが多い。即ち寸法は使い勝手の良さを追求してやや短め、身幅広く重ね厚くどっしりとして、反り深めに先反りが付いており、南北朝時代の脇差を厚手にしたもの、或いは薙刀を脇差に直したような造り込み、と考えれば分かり易い。
写真は初代忠吉の晩年、武蔵大掾忠廣と改銘した後の、頗る完成度の高い作。刃長一尺二寸四分四厘、反り四分二厘、元幅一寸一分五厘、重ね二分四厘。完成された肥前肌に特徴的な小沸出来の直刃。区も深く残されている。先反りが深く付いて、いかにも武用の、実際に激しく打ち合い、切り込むことを想定した覇気ある造り込みで、しかも美しい。170□




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする