日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 越中守正俊

2012-02-18 | 脇差
脇差 越中守正俊

 
脇差 越中守正俊

 片切刃の造り込みになる、南北朝時代の腰刀の写し物。身幅広く先反り付いて、この場合には南北朝時代の本歌のように重ねが薄く、手にした時にはその扱い易さに時代観を間違えてしまいそうなほど。しかも相州物にあるように大振りな彫刻が施されており、これも楽しめる。
 越中守正俊は三品派の伊賀守金道、和泉守金道、丹波守吉道らの末弟。時代は次第に平和になるも戦国時代の作風は未だ衰えず、さらに古作に対する武士の憧れが強まって、まさに古伝に紛れる作品を遺したのが正俊。
 これも流れるような板目肌に沸が絡んで激しさは古作そのもの。焼刃の沸強い互の目に湾れの交じった相州伝で、刃中良く沸付いて乱れ、刃境には沸筋、湯走りが幾重にも重なって走る。殊に刃中に流れる匂は明るく冴え、沸が複合して明るく冴える。地中にも沸匂が働き、幽玄味のある景色を生み出している。三品四兄弟の中でも最も技量高く、人気のある正俊の得がたい逸品である。□



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 丹波守吉道 Yoshimichi Wakizashi

2012-02-15 | 脇差
脇差 丹波守吉道


 
脇差 丹波守吉道

 三品派金道の弟。平造脇差は南北朝時代の腰刀を想わせる造り込み。先反り付いて迫力がある。相州伝を基礎に独創的な刃文を生み出したのがこの工。堰を越えて下る川の流れを想わせる刃文がこれだ。刀身を横にして眺めれば一目瞭然。江戸時代には簾刃と呼んだらしいが、作者は簾を意図して刃文を焼いたわけではなかろう。むしろ雅な京の川辺に立つような、自然観をここに見るべきであろう。吉道は相州古伝の沸筋からこの刃文構成を創案したわけだから、優れた美意識の持ち主であり、現実に江戸時代前期には広く好まれ、この門流が大坂においても栄えてことから、意匠としても優れているといえよう。
 地鉄は板目が小模様になって詰み、地沸が付いて潤い感がある。技術改革によって洗練味が高まっていることが分かる。沸と匂の複合になる刃文は、沸筋が複式に刃先に沿って流れる構成で、刃縁には沸がほつれた相州古伝でありながらもやはり新時代の美しさが感じられる。地中にも沸匂の筋が流れて働きとなっている。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 和泉守藤原金道 Kinmichi Wakizashi

2012-02-08 | 脇差
脇差 和泉守金道


脇差 和泉守藤原金道



 伊賀守金道もそうだが、このような脇差は本来であれば脇差と言うべきではない。南北朝時代に太刀の添え差しとされた腰刀のスタイルを写したものであり、江戸時代も少し降ったころに定められた大小一腰の脇差とは異なる。
 さて、これも強い板目鍛えに地沸が絡んだ出来。身幅が広いところに激しい地鉄鍛えであり、見るからに緊張感が高まった作。刃文は南北朝時代の相州伝鍛冶である志津を想わせる湾れに互の目が入る刃文構成。板目の流れたところに互の目が掛かり、沸が働いて凄みのある景色を生み出している。棟にも焼が施されているが、末相州物のような皆焼状にはならず、むしろ折損など実用を考慮して焼が抑えられている。物打上から焼が深まり、帽子は古風な焼詰め風になるもごくわずかに返る。
 この作者は若くして没したため作例は頗る少ない。三品派伊賀守金道の弟で、越後守を受領したと考えられ、また後に和泉守を受領したといわれていたが、和泉守銘の作例が殊に少なく、また、本作のように藤原銘が添えられている作も極めて貴重。資料としての価値も頗る高い。慶長新刀の中でも特に味わい格別のものがある。□

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 伊賀守金道 Kinmichi Wakizashi

2012-02-04 | 脇差
脇差 伊賀守金道


脇差 伊賀守金道

 

 江戸時代前期の大坂に興った大互の目や濤瀾乱刃の基礎には相州伝がある。戦国時代末期から江戸時代初期にかけて相州古作に人気が集まり、殊に鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて製作された沸の激しい出来の、しかも長寸の太刀を磨り上げた作やその写し物が好まれ、その流行はそのまま江戸時代の刀の流れの一つとなった。その洗練味が高まったのが大坂新刀である。
 写真は江戸時代初期の相州伝の一例。戦国時代末期に美濃国から山城国京都に移住した三品派を代表する金道である。南北朝時代のような幅広で先反りの付いた腰刀のスタイルだが、重ねが極端に厚いのは江戸時代最初期の特徴。地鉄は板目肌が強く現われ、地沸がこれに絡んで一部飛焼によって沸が叢に付いている。このような地に沸の変化が見られるのも相州伝の魅力。地鉄はさすがに丁寧な鍛えで綺麗に詰んでいる。焼刃の激しさはもちろん相州伝の最大の特徴。沸があらぶり、和紙を引き裂いたような沸のほつれが現われ、沸筋、沸の島刃、沸の太い足が入る。地にも湯走りが流れ込む。帽子も沸付いて火炎状に激しく乱れて返る。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 銘 遠州横須賀住國安 Kuniyasu Katana

2012-02-03 | 
刀 遠州國安


刀 銘 遠州横須賀住國安作

 國安は水心子正秀の門人。やはりこの種の刃文は人気があったのであろう、この刀も師風を良く写し、濤瀾乱風の抑揚変化のある互の目を焼いた作。地鉄は良く詰んだ小板目肌で、師に良く似て無地風。細かな地沸が付いて、刃中にも粒子の揃った沸が深々と広がっている。互の目は極端な玉刃とはならないものの、焼頭が高低変化しており、助廣写しに独創的な部分を示しているように感じられる。美しいことには間違いない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする