日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 相州住康春 Yasuharu Tanto

2016-07-30 | 短刀
短刀 相州住康春


短刀 相州住康春

 刃長九寸七分、先反りが付いた、この時代の相州刀の特徴的姿格好。重ね一分七厘で、この時代として尋常。物打辺りに張りがあり、舟底片茎に連なる構成線。板目鍛えの地鉄は地沸が付いて地景が入り組み肌立ち、強さと凄みがある。刃文は不定形に乱れる互の目で、刃中に矢筈刃が交じり、ほつれ、沸筋、砂流し、金線が激しく掛かり、刃中には沸が凝って島刃を形成、乱れこんだ帽子は沸付いて返る。総体に沸の美観が強く示された出来。康春は島田鍛冶の出で小田原において、相州鍛冶と交流し、相州風の造り込みを特徴とした。いわゆる小田原相州と呼ばれる一人で、名工である。
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脇差 相州住綱廣 Tsunahiro Wakizashi

2016-07-29 | 脇差
脇差 相州住綱廣


脇差 相州住綱廣

 一尺七寸三分強。元幅一寸五厘あり、先幅も広く、大鋒とされていることから、表記されている寸法からの印象以上に大きく感じる。豪刀だ。戦国時代末期の作だから、これも片手打ちの刀として用いられていたのであろう。わずかに磨り上げられていることから茎の形状はバランスを失っている。彫り物が、腰元の素剣、中に梵字を配し、その上は棒樋で、腰元の爪も含めて総体が格好いい。地鉄は綱広らしい激しい杢目交じりの板目肌で、地沸に地景が強く入っている。刃文は飛焼が激しい小互の目乱れ。地中に黒く深く澄んだ斑模様が飛焼だ。焼刃は沸が強く深く付いており、この中に小互の目丁子が密集している。ここまで沸が強いと、手に取って鑑賞すれば刃中の働きは良く分かるが、写真では分かり難いと思う。
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脇差 相州住綱廣 Tsunahiro Wakizashi

2016-07-28 | 脇差
脇差 相州住綱廣


脇差 相州住綱廣

 一尺一寸強で先反りが深く三分もある。身幅たっぷりとして重ねも極厚、戦国時代末期の相州綱広の特徴的造り込み。彫り物上手で知られる相州彫の特徴も顕著。地鉄は地景を伴う杢目交じりの板目肌が縮緬状に入り組んでおり、地沸が付いて地斑状に鉄色に変化があり、迫力と凄みがある。相州古作を手本とし、戦国時代後期の特質でもある異風を強調したような、時代に応じたものであろう、刃文も皆焼。もちろん彫物の辺りは深い焼きを避けているが、刀身中ほどから上は互の目が深く入り組んで網目のように飛焼が入り、棟焼が施されている。この乱れの中に矢筈刃、尖刃、丁子などが組み込まれている。焼刃は匂を主体に沸が厚く付き、刃中は沸が大きく乱れ、地刃を越えて金線が稲妻状に走る。写真では刃文や焼刃の様子が良く分からないと思う。これも綱廣に良くみられる特徴。扱いやすい寸法であり、鉄兜の上からガツンと叩き切るような、あるいは鉄鎧の隙間にねじ込んで切り裂くような使い方がされたものであろう。
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短刀 播磨守輝廣 Teruhiro Tanto

2016-07-26 | 短刀
短刀 播磨守輝廣


短刀 播磨守輝廣

刃長が九寸強だから、現代に分類では短刀だが、造り込みは先反りが付いた古風な小脇差だ。太刀や刀の添え差しとされ、戦場で盛んに用いられた実用具として捉えられる。江戸時代も寛永まで降ると、世上はそろそろ安定してきた。とはいえ、各地で小さな紛争もあり、刀はまだまだ実戦具としての意味合いを強くしていた。時代に応じて地鉄は小板目肌風だが総体に細かな地景によってザングリとした感があり、いかにも切れそうだ。鋒辺りに輝廣の特徴が窺える。刃文は小沸出来の、綺麗に揃った互の目。刃中に匂が広がり、わずかに沸筋が流れており、すっきりとしている。

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脇差 播磨守輝廣 Teruhiro Wakizashi

2016-07-25 | その他
脇差 播磨守輝廣

 
脇差 播磨守輝廣

 刃長一尺二寸半の平造。先反りが付いて物打辺りに張りがあり、緊張感に満ちている。板目鍛えの地鉄は地景で強く肌が立っているのは輝廣の特徴。細かな地沸を分けるように地景が入り組み、冴えわたっている。刃文は浅い湾れに浅い互の目交じり。匂口やわらか味があり、刃中に広がる沸と匂は明るく、相州古作が持つ印象とはだいぶ異なっている。
 
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刀 藤原輝廣 Teruhiro Katana

2016-07-23 | 
刀 藤原輝廣


刀 藤原輝廣

 播磨守を受領した二代目輝廣。初代肥後守の弟子で後のその名跡を継いだ。福島正則に仕え、正則が移封された後は隠居し、一門はそのまま安芸国に定住し、その子が浅野家に仕えている。この刀は特に地鉄鍛えが地景によって強く表れている。微妙に性質の異なる鉄を織り交ぜていることにより、地沸の付き方が異なり、結果として明るさや色合いなど見え方が異なり、地景と認識される。板目肌が強く、古調である点は初代によく似ている。刃文も相州伝の志津を手本としたものであろうか湾れに互の目を交えた出来。刃中も沸が強く明るく、肌目に沿って沸筋砂流し金線が激しく流れ掛かる。


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槍 肥後守輝廣

2016-07-22 | その他
槍 肥後守輝廣


槍 肥後守輝廣

 輝廣もまた美濃の出身。兼常の流れで、はじめ兼友と銘し、後に改銘した。福島正則に仕え、安芸国に移住した。志津風の相州伝を得意としているが、刀の遺例は少ない。デジタル写真で手許に遺されている資料がこの槍だけであるため、これでしか紹介できない点をご容赦願いたい。多くの槍がそうであるように柾目長の鍛えで、刃文は直刃基調。鋒辺りが強く沸付いて砂流しや金線が走る。
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刀賀州住兼若 Kanewaka Katana

2016-07-21 | 
刀賀州住兼若


刀賀州住兼若

 これも四郎右衛門兼若の作。互の目が連続しており、箱刃と呼ばれる刃文構成の実体が良く分かる作だ。即ち、箱刃とは互の目がこのように連続して高さが揃ったもの。互の目を強く意識すると焼頭が丸みを帯びて際立つ。そうだ相州伝の一つに、このような構成、浅い湾れの所々が深く焼き込まれるという刃文があることに気付く。焼頭のところどころに尖り刃や玉刃などがみられるのも相州伝。地鉄は小板目肌で、鎬地は細かいものの柾気が強い。小沸と匂が混じり合って刃中明るく、その所々に砂流沸筋が流れる。
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刀 賀州住兼若 Kanewaka Katana

2016-07-20 | 
刀 賀州住兼若


刀 賀州住兼若

 四郎右衛門兼若の刀。二尺三寸だから、この時代の登城用の刀としては、いわゆる定寸。時代を無視して総ての刀に対して「定寸」という方がおられる。大きな間違いをしているようなので何度も言うが、江戸時代前期から後期にかけてのわずかな時代に「定寸」はあったが、戦国時代以前の実戦の時代や、騒乱の幕末の実用刀に定寸はない。さて、この刀は、兼若の得意とした箱乱刃が焼かれた作。互の目の頭が伸びて長方形のような長めの互の目となる。これを箱刃と呼んだ。もうちょっと良い名称はないかと思うのだが、なんとも色気がない。地鉄は小板目肌がザングリとして肌立つ感があり、地沸が付いて冴えている。焼刃は沸が強く、刃縁にほつれが掛かり、所々砂流し状に刃中を流れ掛かる。帽子は掃き掛けを伴う小丸返り。


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脇差 賀州住兼若 Kanewaka Wakizashi

2016-07-19 | 脇差
脇差 賀州住兼若


脇差 賀州住兼若

 二代目又介兼若の作。時代背景を移して安定感のある造り込み。それでいてがっちりとしており、いざというときには使える、武器だ。板目鍛えの地鉄は地沸が付いて肌立ち、斬れ味もよさそうだ。加賀前田家は徳川家に対する恭順の意識を強めるべく、武より芸術に力を入れた…と見せていた。実際に京都から後藤家などを招聘して金工芸術に力を入れたが、その一方で、こうした兼若などの高い技術を守りの要としていた。刃文は沸の強い湾れ互の目。刃中に沸が厚く深く付き、この中を沸筋砂流しが流れる。互の目は頭が乱れてほつれ掛かるなど、相州伝を基礎として変化に富んでいる。
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刀 賀州住兼若 Kanewaka Katana

2016-07-16 | 
刀 賀州住兼若


刀 賀州住兼若

 美濃から加賀に移住して栄えたのが兼若。初代甚六兼若は元和年間に越中守高平と改銘している。たびたび説明している、太や刀の添え差しとされた、一尺三寸前後の小ぶりな武器のことであるが、兼若の慶長年間の身幅の広いがっしりとした小脇差を見かける。その古風な地鉄に沸の深い焼刃は迫力があり、凄みがある。それはそれとして、この刀は、磨り上げられて一尺九寸ほどだから、明らかに抜刀術の使い手が、自らの体に合わせて最も使いやすい寸法に仕立てたもの。板目鍛えの地鉄は小板目肌を交えて流れる部分もあり、白気てここも凄みがある。鎬地が完全な柾目で、この造り込みに高い信頼が寄せられていたことも窺える。刃文は浅い互の目乱。互の目の間が長く伸びたようなところが兼若の特徴。匂主調ながら刃境に沸が付いて流れ掛かり、地刃を越えて湯走り状に働いている。帽子も浅く乱れ込んで先は掃き掛け。


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刀 越前國兼植 Kanetane Katana

2016-07-15 | 
刀 越前國兼植


刀 越前國兼植

 互の目出来の刀。兼植は美濃から移住した刀工であり、美濃の地鉄鍛えを基礎としている。この作でも、地鉄の様子を観察すると、平地部分は板目に小板目肌交じりで、ザングリとした肌合いとなるが鎬地が柾目鍛えになっているのが分かる。この平地と鎬地が異なった鍛え方になっているところが美濃伝の特徴だ。そして、この鍛え方は江戸時代の多くの刀工が踏襲している。即ち江戸時代の地鉄鍛えの基礎に美濃伝があると言ってよい。刃文は互の目だが、尖り刃が交じり、矢筈状の刃が交じるなど、やはり相州伝が遠く基礎にあるのかと思われる。焼刃は小沸出来。沸の粒がそろっており、刃中に足が盛んに入り、互の目の内側に島刃が交じり、刃縁をほつれが流れる。帽子もわずかに掃き掛けて先は小丸に返る。


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刀 越前國兼植 Kanetane Katana

2016-07-14 | 
刀 越前國兼植


刀 越前國兼植

 兼植は北陸防備の要として越前に置かれた結城秀康の意思に従って集められた刀工の一人。高い技術を持ち、越前の武士の求めに応じて頑丈な刀を製作している。二尺五寸強のこの刀は、その中でも特別の注文作であろう、常にみられるようなザングリとした肌合いではなく、杢目を交えた板目肌が良く詰んで小板目状になるが、その中に繊細な地景が交じって秘めたる動きが感じられる。刃文は直刃で、刃境には均質な沸が流れてほつれ掛かり、繊細な金線を生み出している。地刃を超えて景色をつくり、帽子も調子を同じくしたほつれが掛ける出来。相州物を目指しているとすれば、相州行光を狙ったものか。


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脇差 越前國兼植 Kanetane Wakizashi

2016-07-13 | 脇差
脇差 越前國兼植

 
脇差 越前國兼植

 一尺七寸強の長い脇差。長脇差というと、江戸時代のやくざ者や商人の持ち物といった印象があるも、この作者の時代は江戸最初期、使い勝手の良さを追求した武士の持ち物に他ならない。式正の大小の寸法も少し時代が下がって定められているから、江戸時代に入ったとはいえ、まだまだ戦国の気風に下で作刀しており、長脇差は片手打ちの刀と同様に頗る実用的な武器であった。いかにも戦国武将の持ち物といった印象。截断を目的としたもので反り深く身幅広くがっちりとした造り込み。地鉄はザングリとして肉や筋を断ち切るに刃味が良さそうだ。刃文は湾れ刃。刃境に沸筋、金線、砂流しが掛かっており、相州伝を背景にしていることが分かる。刀身中ほどに至る大ぶりの彫物も相州伝の影響。
 
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脇差 越前國住兼植 Kanetane Wakizashi

2016-07-12 | 脇差
脇差 越前國住兼植


脇差 越前國住兼植

 一尺強だから、現代では脇差に分類されるが、戦国期実用の時代には太刀や刀の添え差しとされ、咄嗟の場合の抜き打ちに用いたものであろう、頗る使い勝手が良さそうだ。反りも付いており、截断も効率的に行えそうだ。良業物に指定されているから斬れ味も良い。兼植は高い技術が評価されて美濃から越前に移住した工。この脇差は、身幅広く先もたっぷりとしており重ねも頑丈で、江戸時代最初期の造り込み。地鉄はザングリとして肌立ち、地沸が付いて強みが感じられる。焼刃は相州伝湾れ刃。沸が流れてほつれ掛かり、刃中には多くの文様を施さない、質実とした、いかにも実用の武器だ。


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