日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 同田貫兵部 Hyoubu Katana

2017-09-29 | 
刀 同田貫兵部


刀 九州肥後同田貫兵部

 二尺一寸強の片手打ちの刀。茎も応じて短く仕立てられている。身幅と重ねは尋常、片手で打ち振るに適した造り込み。豪快な同田貫を思い浮かべるとこのように優しい造り込みもあるので、人によってはがっかりするのではないだろうか。でも地鉄と焼刃は上質の同田貫だ。板目肌の鍛着が強く流れるような肌が地景によって浮かび上がり、沸付き映りが立ち、凄みがある。刃文は湾れ交じりの互の目乱で、匂口の潤んだ焼刃に砂流、沸筋が激しく掛かり、これが帽子にまで連続して掃き掛けとなり、わずかに返る。これぞ同田貫の上作と言い得る出来。140□
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刀 肥後同田貫上野介 Kouzukenosuke Katana

2017-09-28 | 
刀 肥後同田貫上野介


刀 肥後同田貫上野介

 同じ上野介の刀。こうして眺めると、地鉄の綺麗さ、詰みよう、地沸や地景の様子などはよく似ている。刃文は湾れに小互の目が交じり、刃中は沸筋、砂流し、金線が渦巻くように入る。帽子も調子を同じくして浅く乱れ込み、先掃き掛けてわずかに返る。刃文は薙刀の出来に良く似ている。二尺三寸強、幅広く肉厚くがっちりとしている。「同田貫」は、言い難いのでつい「どうたぬき」と呼んでしまうが、「どうだぬき」と読む。だから、刀身の平肉がたっぷりとして狸の胴体のようだというのはまったくの創作。決して肉厚の刀ばかりを製作していたわけではない。ごくごく穏やかな作もある。


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刀 肥後同田貫上野介 Kouzukenosuke Katana

2017-09-27 | 
刀 肥後同田貫上野介


刀 肥後同田貫上野介慶長十六年

 上野介は正國と同人。同田貫派というと、先の薙刀のように地鉄が強く肌立っている作風を想い浮かべるが、本作のような頗る地鉄の綺麗な刀も遺している。板目肌が良く詰んで小さく肌立ち、細かな地沸で覆われ、所々に淡い湯走りが掛かる程度。刃文は小互の目で、帽子は浅く乱れ込んで先わずかに掃き掛けて返る。匂口の沈んだ焼刃は凄みがあり、刃中には小足、砂流し、金線が穏やかに働く。先の薙刀とはずいぶん印象が異なっている。




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薙刀 同田貫正國 Masakuni Naginata

2017-09-26 | その他
薙刀 同田貫正國


薙刀 肥後同田貫正國

 銘がしっかりと遺された、薙刀。かなり板目肌が強く、美しさなどは微塵も感じさせない、使うためだけの武器といった印象だが、刃文は互の目を交えた湾れ調子の構成で、匂に小沸が付いて凄みがある。これを振り回されたらひとたまりもない。斬られるというより、殴られるという感じながら、刃味は頗る良いのだろう、気づいたときには首が胴から離れていた、といったところ。
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薙刀 肥後同田貫 Doudanuki Naginata

2017-09-25 | その他
薙刀 肥後同田貫


薙刀 肥後同田貫…

 茎が朽ち込んで銘が判明しないが、正國と鑑られる上出来の薙刀。適度な長さで、物打が張り、重ねが厚くがっしりとしており、敵が防御する太刀など簡単に折ってしまいそうな武器。このような武器が鎌倉、南北朝、戦国期と、戦場で活用されたのだ。恐ろしいことこの上ない。地鉄は板目肌に地沸が付き、地景が顕著に入って強く肌立つ。刃文は湾れ調にほつれ掛かり、刃中には砂流し、沸筋、金線が流れるように入る。
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刀 同田貫 Doudanuki Katana

2017-09-21 | 
刀 同田貫

 
刀 同田貫

 元来は寸法が長く、身幅広く重ねの厚い豪快な刀。磨り上げられて無銘。総合的な出来から同田貫派の作と極められている。同田貫派というと、戦国期の実戦武器という印象が強く、大身槍や大薙刀が思い浮かぶ。刀も応じてがっちりとしたものを製作しており、頑強な鉄製の具足や兜に対する武器、即ち堅物斬りの印象がある。ところが同田貫派の作は斬れ味が良いことも知られている。劇画の題材にとられる理由も良く判る。折れ難さを追求すると、柔軟性が高められて斬れ味が劣るような印象があるも、同田貫鍛冶はそれを払拭した。この同田貫極めの刀は、地鉄は板目肌が強く現れて地沸が付き、映りが立ち、刃文は湾れ調子に沸が深く付き、刃中に砂流し、金線、沸筋が盛んに入る。刃文が判らないような乱れ方をしている。これが同田貫派の特徴なのかというと、実際には刃文構成が多彩である。直刃調、互の目や丁子が顕著な刃文、匂口が明るく冴えた刃文、逆に匂口が沈んで焼刃があるのかわからないような出来もある。




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刀 長浜住正廣 Masahiro Katana

2017-09-21 | 
刀 長浜住正廣


刀 長浜住正廣天文十三年

 戦国時代の石州長浜住人正廣の刀も珍しい。作風は、備前の影響を強く受けているとみられ、板目鍛えの地鉄に直刃出来。刃中は匂に小沸が交じり、刃境がほつれ、ごく淡い足が入る。物打から特にほつれが強まり、清光に見られるように浅く乱れ、これが焼崩れた帽子にまで連続している。作品を多く見たわけではないので、これが正廣の主たる作風であろうかは断言できないが、備前刀の影響を受けていると捉えれば、大きく見違えることはないだろうと思う。
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脇差 貞末 Sadasue Wakizashi

2017-09-19 | 脇差
脇差 貞末


脇差 貞末文安二年

 遺されている作例が少ない石見国の貞末の、室町初期応永頃の作風を伝える一尺二寸強の脇差。上級武将が室内で備えとした腰刀であろう。腰元に彫物が施されて所持者の信仰が示されている。地鉄は板目肌に小板目肌が交じって所々肌立つ風があり、地沸が厚く付き淡く映りが立つ。刃文は浅い湾れで、帽子も調子を同じくして浅く返る。小沸が付いて匂口の締まった焼刃は、刃境ほつれ、金線走り、物打辺りは二重刃風に乱れる。貞末は石州直綱の門流。だがこの頃になると古伝の相州振りはおとなしくなっている。
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薙刀直し脇差 石州貞綱 Wakizashi Sadatsuna

2017-09-16 | 脇差
薙刀直し脇差 石州貞綱


薙刀直し脇差 石州貞綱

 刃長が一尺八寸強の元来は大薙刀。正宗の弟子の一人とも伝えられている直綱の子、貞綱の作と極められている。伝書は別としても直綱は相州伝鍛冶の一人で、その影響を受けた貞綱には互の目が顕著に表れた作があり、見どころの一つとなっている。この薙刀直しも、地鉄は板目が強く現れ地沸が強く付いて肌立ち、相州伝の沸の強い刃文が焼かれて覇気に富んでいる。その刃文の所々に互の目が窺え、ほつれ掛かった刃中には金線が連なり、沸筋が走る。
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刀 石州貞綱 Sadatsuna Katana

2017-09-15 | 
刀 石州貞綱


刀 石州貞綱

 南北朝後期の貞綱と極められた作。南北朝中期までの大振りな造り込みから古作に戻ったかのような姿格好。地鉄は良く詰んだ小板目肌に見えるが、繊細な地景で杢目が浮かび上がっており、地沸が絡んでしっとりとした潤い感のある地相。所々に流れ肌が窺え、総体に躍動感に満ちている。刃文はこの工の特徴と言える焼頭に丸みのある矢筈風の互の目出来。匂口柔らか味があり、刃境に繊細なほつれが掛かり、淡い足は刃中に流れ込む。帽子は刃文と調子を同じくした乱れ込みで、浅く返る。
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刀 三原貝正興

2017-09-14 | 
刀 三原正興


刀 三原貝正興

 同じ室町後期天文頃の三原正興の刀。先に紹介した正興とは、地鉄の質、刃文と刃中の働きがよく似ているのは当然だ。ほとんど同じ説明文となるだろう。帽子だけ、掃き掛けが強い点が異なる。
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刀 三原正興 Masaoki Katana

2017-09-14 | 
刀 三原正興


刀 三原貝正興天文十二年

 室町時代後期の三原鍛冶。二尺三寸強。一寸弱の磨り上げだが、原姿が良く判る。三原派の板目肌が流れて柾がかった地鉄は伝統のものであろう、時代が降っても肌目が強く現れている。もちろん柾目が強く強調されたものもあるし、杢が強く意識された作もある。刃文は中直刃。小沸出来の焼刃は刃境が小さくほつれ、帽子は肌目に沿って掃き掛け、わずかに返る。
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脇差 法華 Hokke Wakizashi

2017-09-13 | その他
脇差 法華


脇差 法華

 南北朝時代の三原物の特徴が示された作で、法華派と極められている。同時代に間々みられる身幅の広い造り込みで、菖蒲造の鎬を立て、棟重ね薄く、柾目交じりの板目肌に穏やかな小互の目を交えた細直刃が焼かれている。このような無銘物にどこが法華派と極めるポイントかと問われても明確に答えられないのだが、上記の説明が法華派の作風であり、広く南北朝時代の備後刀工、中でも大和鍛冶の影響を受けている刀工の中の一つとみればよいのではないかと思う。地鉄が特に綺麗。
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短刀 備州尾道辰房光重 Mitsushige Tanto

2017-09-12 | 短刀
短刀 備州尾道辰房光重


短刀 備州尾道辰房光重延徳四年

 六寸ほどの鎧通し。以前にも紹介したことがあるだろうか、三原鍛冶の中では、銘にある通り尾道にて活躍した刀工。刀身に比較して茎が長く、重ね厚く細身に仕立てられている。見るからに刺突の効用を高めた構造だ。地鉄は杢を交えた板目肌で、地沸が強く焼が強いために肌立って見える。典型的皆焼の焼刃は、尖り調子の互の目、湾れ、矢筈刃、など複雑に乱れる様相で、鋒の焼きもたっぷりと残り、先は掃き掛けて返り、乱れた棟焼に連続し、所々に飛焼も配している。これらに地中の湯走り、沸筋、砂流しが加わっている。
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刀 重明 Shigeaki Katana

2017-09-11 | 
刀 重明


刀 重明

 室町後期永禄頃の備後国五阿弥派の工。備後国では三原派の活躍が良く知られているが、少し先行する工として国分寺助國がいたことは以前に紹介した。南北朝時代以降の活躍工では辰房派、鞆派、五阿弥派、三原の流れを汲む法華派が知られ、いずれも名作を遺している。この重明は、永禄頃だから備前国では祐定や清光が活躍していた。そのような影響を受けたものであろうか、この刀は清光に紛れるような出来。物打辺りから鋒にかけての刃文にその雰囲気が窺える。地鉄は板目肌が良く詰んで地沸が付き、乱れた映りが立つ。刃文構成は湾れに互の目交じり。物打辺りが焼崩れて地中に盛んに働き掛かり、帽子は一枚風。
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