日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 因幡守廣重 Hiroshige Wakizashi

2016-12-12 | 脇差
脇差 因幡守廣重


脇差 因幡守廣重

 武蔵国下原派の、江戸時代前期の刀工。下原派は相州鍛冶の流れを汲み、戦国時代には関東全域から東海道筋にかけて活躍している。この脇差は、江戸時代ながら少し時代が上がって戦国末期から江戸最初期を思わせる、がっちりとした造り込み。元先の身幅が広く重ねが厚く、帽子も伸び加減。地鉄は板目鍛えで細かな地景を伴って肌立つ感があり、地沸がこれに付随して激しい景観。刃文が変化に富んだ互の目乱。互の目の頭が複式に焼かれており、時に茶の花を思わせる形状。帽子は掃き掛けを伴う小丸返り。焼刃は沸が強く、互の目の足を切るように砂流し、沸筋が流れ掛かる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 相州住隆廣 Takahiro Wakizashi

2016-12-10 | 
脇差 相州住隆廣


脇差 相州住隆廣

 室町中期文明頃の相州鍛冶。南北朝時代からの相州振りをよく伝え遺した造り込み。身幅広く堂々とした彫刻も相州物の要素。地鉄は杢目を交えた板目肌が地景を伴って強く立ち、地沸がこれに絡んで躍動感に満ち溢れている。刃文は形状の定まらない互の目で、所々に湾れが交じって変化に富んでおり、帽子は強く掃き掛けて火炎状になり、返りは長く焼き下がる。焼刃は激しい互の目を主張に濃淡があり、この乱れの中に沸筋、金線、砂流しが重なって流れる。物打辺りには島刃が交じってここも特徴的。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 月山貞一 Sadakazu Katana

2016-12-09 | 
刀 月山貞一


刀 月山貞一彫同作

 昭和の人間国宝の、相州伝に独自の刀身彫刻を施した覇気ある作。月山一門は、綾杉鍛えで知られているように、鍛え肌をきれいに浮かび上がらせる技術を特徴としている。綾杉肌だけではなく本作のように大板目が繊細な地景によって浮かび上がり、刀身の上を渦巻き流れるような肌物とした作もある。もちろん鋭い彫口になる龍神の彫刻も見どころ。刃文は湾れに互の目交じりで、帽子は掃き掛けを伴う小丸返り。小沸出来の焼刃は匂を伴って明るく冴えて刃中に広がり、複雑なほつれと足を形成し、これに砂流が加わり、さらに鋭い金線が焼刃の雲間を走る。龍神の彫刻に合わせた焼刃構成と言えよう。
  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 上野大掾久國 Hisakuni Katana

2016-12-08 | 
刀 上野大掾久國



刀 上野大掾久國

 この久國は、京都三品派近江守久道の門人。二尺二寸強の扱い易い寸法ながら、たっぷりとした身幅。地鉄は小板目鍛えが良く詰んで梨子の実を割った断面のように粒立ち、微細な地沸で潤い感がある。江戸時代中頃の三品派の地鉄もこのように綺麗になっている。刃文は湾れに互の目交じりで、帽子は横手下で一旦焼き込み、先は小丸に返る。沸深い焼刃は刃境に砂流を伴って明るく、深く地に突き入る互の目は鎬地にまで達し、時に先端が離れて飛焼となる。相州伝を下地とした伸びやかな出来となっている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 越前下坂 Shimosaka Katana

2016-12-07 | 
刀 越前下坂


刀 越前下坂

 下坂は江戸時代初期の越前の刀工群。初代康継や肥後大掾貞國なども、初期に下坂の工銘を用いていた。この刀は、康継でも貞國でもないが、地刃が良く出来た作。二尺六分ほどに扱い易い寸法とされており、抜刀術にたけた武人の刀であったことが推考される。地鉄は板目と杢目を交じえた小板目鍛えで、さほどザングリとした風はなく、細かな地沸で覆われ、細かな地景で流れるような肌が窺える。刃文は湾れ調子の構成に所々互の目を交えたものながら、南北朝頃の相州ものほどには大きな乱れ込みはなく、帽子は掃き掛けを伴う小丸返り。焼刃は小沸が深く明るく、刃境に流れるような沸筋ほつれ砂流しを生じさせ、長短の足に流れ掛かる。清浄感のある出来である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

短刀 直心斎兼虎 Kanetora Tanto

2016-12-06 | 短刀
短刀 直心斎兼虎


短刀 直心斎兼虎

 小振りに引き締まった短刀。刃長七寸、わずかに先反りが付いた菖蒲造りは、幕末から明治に間々みられるもので、懐に収め易い、いざという場合の守りの武器。兼虎は真雄の子で清麿の弟子。清麿ほど強い地景や金線を出さない小板目鍛えで良く詰み、地沸が厚く付いて刃文も沸の深い乱刃出来。真改や左行秀にみられるような焼刃である。穏やかに出入りする刃境にはほつれが掛かり、刃中に沸が厚く広がって刃先にまで至る。帽子は掃き掛けを伴って小丸に返る。小振りながら覇気に富んだ出来である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 清水久義 Hisayoshi Wakizashi

2016-12-05 | 脇差
脇差 清水久義


脇差 清水久義文久三年

 菖蒲造の、一尺九分ほどの小脇差。反りが適度について物打辺りが張り、鎬が高くがっちりとして武器の様相が鮮明。地鉄は柾目が良く詰んで流れ、これに小板目鍛えを交ぜ込んで緊密な地造りとしている。刃文は互の目の連続ながら、沸が深く互の目が良く判らないほどに太い足が入り、これが砂流し状に肌目に沿って流れている。物打辺りの沸の流れが鮮明であり、帽子も小模様に乱れ、先掃き掛けて返る。刃境に流れる繊細な沸筋と砂流しが刃肌を強調しており、大きな見どころ。久義は備前伝主とした細川正義の門人ながら相州伝を得意とし、左行秀を育てている。刃沸の深さは左行秀に伝えられている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

刀 肥前吉貞 Yishisada Katana

2016-12-03 | その他
刀 肥前吉貞


刀 肥前吉貞

 肥前の正系初代忠吉の異母兄とも伝える吉貞の、肥前刀工らしい作。吉貞は忠吉の協力者という立場であったため、残されている在銘作は少ない。この刀は、元先の身幅広く鋒が延びて堂々とした、江戸初期独特の造り込み。地鉄は弛んだところのない良く詰んだ小板目肌に地沸が付いた洗練味のある肥前肌。刃文は湾れの所々に互の目を深く施したもので、相州振りが鮮明。ただし、互の目は焼頭が丸みを帯びて茶の花房のように複式に焼かれ、互の目の中には葉が配されるなど、肥前刀の互の目の特徴が所々に表されている。帽子も乱れ込んで先は小丸に返る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脇差 備前守氏房 Ujifusa Wakizashi

2016-12-01 | 脇差
脇差 備前守氏房


脇差 備前守氏房

 寛永頃の尾張刀工、古刀末期から続いた兼房の流れであることから、出は美濃。だが氏房の系統は、他工と同様に相州伝を採り入れており、殊に沸強く深い湾れ互の目を得意としている。この脇差も、一尺三寸ほどの平造であり、実戦の時代にも多く製作された扱い勝手が頗る良い攻撃的武器。たびたび紹介しているように、南北朝時代からこの造り込みが重宝され、戦国時代には美濃において盛んに製作されたが、江戸時代に入り寛永を過ぎた辺りであまり製作されなくなる。平和な時代が訪れたからに他ならない。この脇差は刃先鋭く棟厚く堂々としている。地鉄は板目に小板目が交じって肌立ち、ここでも激しさが窺える。刃文は湾れに互の目を加味し、沸強く刃境にほつれ砂流し金線を、織物を引き裂いたように働かせている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする