日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

太刀 青江住末次 暦応四年 Suetsugu Tachi

2018-07-31 | 太刀
太刀 青江住末次 暦応四年

 
太刀 青江住末次 暦応四年

 青江末次の南北朝時代初期の在銘作。二寸ほどの磨り上げで、現在は約二尺三寸。元幅広く、先幅は研ぎ減ってはいるが、比較的広めに残されている。戦場に出て使用されていることから、この程度でもかなり健全な部類であると考えてよい。奉納刀のような生ぶのままの状態の身幅と重ねを保っている太刀は、まずないのだ。地鉄は、板目肌と小板目肌の複合。質の異なる地鉄によって地景が鮮明に現れている。細かな地沸はもちろんだが、乱れ映りが焼刃に迫るように現れている。刃文は匂口の締まった直刃に小足が品よく入り。刃境がほつれ掛かり、所々二重刃が交じり、帽子には三日月状の働きがある。








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刀 青江 Aoe Katana

2018-07-30 | 
刀 青江


刀 青江

 鎌倉後期の磨り上げ無銘の刀。板目肌が揺れるような、しかも均質に詰んで細やかな地沸で覆われ、繊細な地景で肌目が際立つ。とても綺麗な地鉄で、青江物の優秀性を示す作とも言えよう。刃文は直刃で、帽子は小丸返りの綺麗に整った出来。焼刃は小沸を主調に匂を伴い、刃縁小沸で乱れて小足が入り、物打辺りが特に乱れた感じとなる。






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脇差 青江 Aoe Wakizashi

2018-07-28 | 脇差
脇差 青江


薙刀直し脇差 青江

 鎌倉時代後期の、大薙刀を脇差に仕立て直したもの。一尺六寸弱だから江戸時代には大小揃いの小とされたものであろう。揺れるような板目肌に地沸が付き、総体は緊密な詰みよう。刃文は沸を主調とする幅の広い湾れ調子で、刃境にほつれが掛かり、二重刃風に沸筋が働く。刃境の杢肌が渦巻き状にも見え、砂流しが掛かるなど刃中は地肌に同調した細やかな働きが濃密。ただ、青江にあるような鋭い小足は少ない。帽子は浅く乱れ込んで先はわずかにほつれ掛かり、返りが長い。




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短刀 備中國右衛門尉平吉次 Yoshitsugu Tanto

2018-07-26 | 短刀
短刀 備中國右衛門尉平吉次


短刀 備中國右衛門尉平吉次作 嘉暦三年

 刃長七寸九分、内反り、振袖茎に仕立てられた、鎌倉後期の一典型的姿格好の短刀。青江吉次の作。揺れるような板目肌と、微塵に詰んだ小板目肌が交じり合い、地沸が付き、板目が肌立つ風がある美しい肌合いとなっている。この種類の短刀は、武具というより武家が最後の守りとして備えていた品位の高い精神性に通じていたもの。刃文は細直刃。腰刃を深く焼いている点が見どころ。強くは乱れずに鼠足が入り、帽子はわずかに掃き掛けを伴い、先小丸に返る。




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刀 青江 Aoe Katana

2018-07-23 | 
刀 青江


刀 青江

 大磨上無銘で、青江と極められた作。鎌倉後期の、未だ古青江の風情が遺されたままの作。姿格好はさほど身幅が広くはならず、総体に輪ぞりとなって直刃との調和もとれているい。鋒は中鋒で、先幅とのバランスも良い。地鉄は杢目を交えた板目肌が微塵に詰んでいながらも、肌に縮緬状に揺れる風が窺え、微細な地沸、繊細な地景、淡い斑のような映りが立つも鯰肌とは異なる穏やかな景色となっている。刃文はごく浅い湾れ調の直刃で、匂口締まり調子に刃境には小沸が付き、ほつれ掛かり、喰い違い、二重刃などがやはり過ぎることなく品よく入る。帽子も二重刃風にながれ、ふくら辺りが穏やかに湾れ、先は焼き詰め風にごく浅く返る。この時代の極上の地鉄からなる作品である。






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太刀 助次 Suketsugu(Ko-Aoe) Tachi

2018-07-21 | 太刀
太刀 助次


太刀 助次

 鎌倉時代前期の、かなりがっちりとした太刀。前回紹介した助次とは異なる工であろう、銘字も微妙に異なる。二尺四寸強、二寸強の磨り上げとすると、元来は二尺六寸半ほど。重ねも厚く、七百数十年を経ながらも、区深く残されている。鎌倉最初期のような先伏さり調子ではなく、わずかに先反りが加わっている。小模様の杢目を交えた板目肌が良く詰んで揺れたような肌合いとなり、細かな地沸が付き、肌目に沿って細やかな地景が入り、鎬寄りの高い位置に映りが立つ。匂に小沸を交えた刃文は直刃調子でわずかにみだれ、鼠足が穏やかに入って小乱調ではないところ品位が感じられる。銘字が大振りで鑚強く刻されているところが古青江の特徴。




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太刀 助次 Suketsugu-KoAoe Tachi

2018-07-19 | 太刀
太刀 助次


太刀 助次

 鎌倉時代中期以前の古色溢れた青江の作を古青江、それ以降の作を青江と呼び分けている。以前は、南北朝時代中頃より時代の下がる作を末青江と分類していたが、現在は、古青江と青江の二類のみ。何しろ、青江鍛冶は南北朝時代後期には姿を消してしまう。時代の下がる青江の作品を見たことがない。備前鍛冶の衰退が吉井川の氾濫に起因したように、高梁川の氾濫で鍛冶場を移したのであろうか、最近の水害から、ふと、そんな思いがよぎる。
 さて、前回紹介した助次の太刀の続き。この太刀の地鉄をみると、南北朝時代の詰み澄んだ青江鍛冶の作風とはかなり異なっていることがわかる。杢を交えた板目肌の揺れたようなところは青江の特徴だが、頗る古調で、映りは淡く乱れ、鯰肌のような景色はない。板目や杢目の肌間が小板目状に詰んでおり、淡い地景が交じって肌立つ様子も古調。刃文は小沸出来の不定形な互の目が交じった小乱調に逆ごころの小足が入り、時代の下がる匂口の締まった直刃や火炎状の逆丁子とは異なる構成。帽子は浅く乱れ込んで返る。鎌倉初期の青江助次である。□








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太刀 助次 Suketsugu-KoAoe Tachi

2018-07-18 | 太刀
太刀 助次


太刀 助次

 鎌倉初期の古青江助次。青江は備前の隣国。備前鍛冶と同様に中国山地の砂鉄を材料として作刀を発展させた。技術の根源が異なるのであろう、備前刀とは全く違う地鉄が青江の個性となっている。助次は鎌倉初期の青江鍛冶。同銘が何代か続いており、系流は不明ながら末は南北朝期に至っている。このような大振りの銘が古青江と分類される鎌倉時代前期の特徴。本作は生ぶのままの姿を留める、極上の出来。腰反り強く踏ん張りがあり、先に行って反りが穏やかになる典雅な姿格好は、武器というより洗練された宝飾品。もちろん斬れ味は鋭い。鉄をどう処理したらここまで美しくなるのであろうか、後の刀工は様々に研究し、その再現を試みたが、未だかつて、鎌倉時代の地鉄を再現できた近世から近代、現代の刀工は存在しない。刀身の姿格好や刃文の形状はどのようにも真似ることができる。本質は地鉄である。□
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太刀 真利 Sanetoshi Tachi

2018-07-17 | 太刀
太刀 真利



太刀 真利

 真利は鎌倉前期から中期にかけての古一文字派の一人。二寸ほどの磨り上げで一尺七寸半ほどだから、元来は二尺弱の小太刀。先に紹介した大太刀に比較して扱い易さが追求された造り込みだ。この方が断然武士の備えという印象が強まる。だが、地鉄の美しさは絶品だ。杢交じりの板目肌が均質に詰み、細かな地沸で覆われ、細い地景が肌目を美しく際立たせている。この上に映りが乱れ掛かっており、鋼と思えぬ景観。焼刃は時代の上がる太刀に特徴的な刃形が不明瞭な小乱。沸が強く深く、刃先近くまで沸が広がっており、その中に沸匂の濃淡があり、金線稲妻が入り組んでいる。地鉄が良いと、このような濃密な刃中の働きになるものだと、改めて鎌倉期の鉄の凄さを思い知らされた。






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太刀 助宗 Sukemune Tachi

2018-07-13 | 太刀
太刀 助宗


太刀 助宗

 鎌倉初期に番鍛冶を勤めた助宗より少し時代の下る、鎌倉中期の一文字と鑑られる助宗の在銘作。生茎で、二尺七寸強、反り一寸一分強の、身幅広い堂々とした姿格好。刃文は一文字に多くみられる重花丁子ではなく、湾れに不定形な乱れが交じる程度の構成。もちろん一文字だから総てが重花丁子というわけではない、このような穏やかな作もある。地鉄が古調である。良く詰んだ板目肌に地沸が付き、映りは刃文の上に暗帯部があって鎬から平地中ほどまで乱れている。普通に考えて、こんなに長い太刀は扱い難い。馬上から振り下ろすのだといわれても、片手で扱うには重すぎる。本当のところはどうなんだろう。武士の象徴という意味合いで備えられていたのだろうが、これを備えることができる武士と言ったら、かなり位が高かったろうと思う。






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太刀 行秀 Yukihide Tachi

2018-07-12 | 太刀
太刀 行秀


太刀 行秀

 鎌倉前期の古備前行秀の太刀。二寸ほどの磨り上げで二尺三寸強、反りが五分強。腰反りがまだ残されており、いかにも鎌倉前期の備前刀。写真では細直刃調だが、実際には所々に逆足の入る行秀の特徴的な乱れ刃。地鉄は杢交じりの板目肌が良く詰んで映りは焼刃に迫るように濃密だが、これも写真では分かり難い。古作の最大の魅力が、写真で示せないところがもどかしい。地鉄が良いから刃中にも繊細な働きが生まれる。この後にさらに備前鍛冶は技術力を高めてゆく。






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太刀 吉包 Yoshikane-Kobizen Tachi

2018-07-11 | 太刀
太刀 吉包


太刀 吉包

 鎌倉時代前期の、古備前の大磨上無銘の作で、刃文構成に地に深く入り込むような丸みのある互の目丁子が強く現れている点などの特徴から吉包と極められている。古調な作風が多い古備前の中にあって、一文字風の華やかな作が多いのが吉包。地鉄は板目肌が良く詰んで流れるような肌合いとなり、地沸が付き映りは鎬寄りの高い位置に出る。写真では分かり難いが、光の加減で鮮やかに観察できる。板目が強く、しかも緊密であることから刃境にほつれが生じ、刃中の働きも小足に金線を伴うほつれが加わって景色は複雑。手を合わせたくなるような極上の地刃である。






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太刀 古伯耆 Ko-Houki Tachi

2018-07-10 | 太刀
太刀 古伯耆


太刀 古伯耆

 童子切安綱などで知られる、平安時代末期の伯耆の刀工の作と極められている、ほとんど生ぶの太刀。時代の上がる太刀は腰反りが深く踏ん張りがあり、先に入って伏さるように反りがなくなる構造であるという認識だが、物を切るという実用を考えると、本作のように先反りが加わってくる。製作の時代は、武士の自立が意識されるようになり、源平合戦が激しくなってきた頃と考えられる。もちろん薙刀のような武器が実用的ではあるが、太刀でも受け、或いは斬り付けるという、戦闘行動の中で、の扱い易さが太刀の姿を変えていったに違いない。地鉄は、頗る古調な杢目交じりの板目肌。地斑、映り、微妙に質の異なる地鉄の複合、地沸などが複合して言葉に表せない濃密な景色を生み出している。「映り」が写真に写らないものであるという認識だが、写真で見てもその変幻の様子が判る。名品であると思う。そのように理解されてきたのであろう、八百年以上もの長い間大切に伝えられてきた。この地鉄に焼き施された刃文は、古作に特徴的な直調ながら刃形の判らない小乱調だが、所々に互の目が交じり始めている。時代の流れであろう、この点でも、安綱より少し時代が下がるとみている。刃境から刃中に広がる焼刃の働きはもちろんだが、地中に広がる湯走りだけではない濃密な沸と匂の景色がある。古作の地鉄とはこのようなものである、ということが強く感じられる名品である。□








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太刀 豊後國行平 Yukihira Tachi

2018-07-09 | その他
日本刀買取専門サイト 銀座長州屋

太刀 豊後國行平


太刀 豊後國行平

太刀 豊後國行平

二尺一寸強。腰反り深く踏ん張りがあり、先反り少なく、生ぶの姿格好が良く判る造り込み。焼落としから始まる焼刃と腰元の小さな彫物も行平の特徴。地鉄は板目肌を基調としているが、ねっとりと詰んだ様子も分かり、この時代の極上の地鉄が用いられていることが想像される。比較的状態が良いので、各部を観察してほしい。映りというか地斑というか、古調な、しかも濃密な地の景色が貴重である。焼刃は沸が強く刃先まで広がっており、刃文は小乱調となって写真では明瞭ではない。この辺りも古作の特徴。








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太刀 豊後國行平


太刀 豊後國行平

 一尺三寸ほどの、元来が小太刀。板目肌が強く現れ、その肌間がねっとりとした質感の地鉄。古作の特質が良く現れている。鎌倉時代初期に活躍した豊後国の行平の在銘であり、貴重な標本的小太刀である。古い研磨なので分かり難いが、頗る古調で、時代感は良く判る。




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太刀 古備前 Ko-Bizen Tachi

2018-07-05 | 
 刀の地鉄が大きく変化したのは、鎌倉時代前期と戦国時代後期であろう。戦国時代の変化は、「祐定」と銘された作品群の変化を眺めると、少しは判かってくる。江戸時代にも進化はしているが、むしろ刀工の関係が複雑になりすぎて分かり難くなっているようにも思える。
平安時代から鎌倉初期にかけての地鉄の見かけは、映りというべきか地斑というべきか総体に白っぽく感じられる。技術革新はどこから起こったものであろうか、大和の古千手院派が古くから活躍しており、大和鍛冶に限らずこの辺りを深めてみたい気もするが、なかなか時代の変化を如実に示している作品群に接する機会がない。
備前鍛冶も歴史が古く、平安時代末期から鎌倉時代初期には大きな変化がみられる。古備前鍛冶から古一文字へ、さらに福岡一文字、長舩鍛冶、吉岡一文字などへと、作風を微妙に違える流派の隆盛に至っている。


太刀 古備前


太刀 古備前

 鎌倉時代初期備前鍛冶の大磨上無銘の太刀。備前の古作では、平安時代から鎌倉初期の作を古備前と呼び分けている。古一文字も時代的に含まれるが、一文字の特徴が現れているものを特に古一文字と呼び分けている。本作は、系統までは絞り切れないため、古備前。焼刃は、刃文の様子が判らないほどに乱れた小乱に沸筋、砂流し、金線などが交じった出来。ねっとりと詰んだ地鉄が古作の特徴。一見して板目肌が地景で肌立っているように感じられるが、その肌間は微塵に詰んでおり、それらに映りが感応して躍動的景色が窺える。極上質の古作であることは間違いない。







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