崖っぷちロー

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『中世の商業革命―ヨーロッパ950‐1350 』読了

2009-12-19 08:29:27 | 小説・本
ロバート・S. ロペス (著), 宮松 浩憲 (訳) 『中世の商業革命―ヨーロッパ950‐1350』 (りぶらりあ選書)を買ってみた。
内容を確認せずにタイトルだけで買ったので、リスクを分散する意味でネットの古本屋での購入。
なので、定価は2900円であるが、実際にはそれよりも安い価格で購入した。

本書は、裏表紙の説明を借りるならば、
>十世紀中葉から十四世紀中葉にかけての時期を「商業革命期」と位置づける独自の見解を提唱し、
>中世ヨーロッパ経済の重要な転換点として商業の主導的役割を鋭利に分析した古典。

である。
この訳本自体は2007年の出版であるが、原著は1976年にでているから「古典」ということになる。

さて、本書の主題は「中世の商業革命論」であるが、その論理の格子は目次を見るだけでも分かる。
私なりに単純化すると以下のような感じ。実際は、さまざまな要素が相互に影響を与える「うねり」として書かれている。

まず、商業革命に至るまでの前段階についての状況認識が示される。
古代ローマから説き起こし、それがそれなりに発展しつつも、安定を目指した「黄金の中庸」にとどまったこと、帝国制度の歪み、寒冷化・伝染病による人口減少によってローマ帝国が崩壊したこと、その後ローマ帝国を切り刻んだ蛮族達の時代の低調ぶりなど。

しかし、疫病等のおちつきと温暖化による人口の増加(人口動態の反転)が起きたことで状況が上向き、更に農耕技術の(ささやかな)発展と耕地面積の拡大が生産力を増大させ、食料の余剰を生む。

この社会的な余力を、イタリア商人をはじめとする商人エリートが商業に使い始め、商業が廻りだす。


このような格子に加え、要所要所でコンパクトではあるが興味深いさまざまな肉付けがなされる。翻訳がかたく、読みやすい文章表現であるとはいえないが、論理の展開自体はクリアなので、それなりに分かりやすいのではないかと思う。

***
同じ著者の方が、『海軍司令官兼商人、ベネデット・ザッカリア-1200年代のジェノヴァの船乗り』という本を書いておられる。どうも日本語訳は出ていないようだが、どうにかして出版してほしいものだ。
新品を買いますので。