海神奈川吹奏楽部愛好会ブログ

海神奈川吹奏楽部愛好会=スユ野見山の
吹奏楽部定期演奏会鑑賞に関するブログ。
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海神奈川吹奏楽部愛好会のブログです。
このブログでは吹奏楽部定期演奏会鑑賞速報などを書いています。

【連載】吹奏楽部定期演奏会プログラムの写真がおかしい件
吹奏楽部定期演奏会プログラムの写真をきれいに撮るテクニックについて論説
【連載】吹奏楽部定期演奏会でストロボたくんじゃない!
吹奏楽部定期演奏会をクリップオンストロボたいて撮影するバカヤローがいたよ
【連載】吹奏楽部定期演奏会で見かけた困ったちゃん
吹奏楽部定期演奏会で見かけたマナーの悪い客につき考察
[追究]地元で起こった児童殺傷事件(犯人は現場で自決)について考察。

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2007年春の定期演奏会鑑賞レポート

2007年05月31日 10時52分35秒 | 吹奏楽部
2007年春の定期演奏会鑑賞レポートをぞくぞく書いているのでぜひ読んでね。

海神奈川吹奏楽部愛好会 タリカス
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古墳少女佑奈5 古墳vs弥生 その5

2007年05月31日 10時35分22秒 | 上月佑奈

第5章 古墳vs弥生



 佑奈と茜、舞子の3人は山奥中学校を出て神社の境内を横切って昼食をとるためペンション<パンプキン>に戻ろうとしていた。境内に紺のブレザーとジャンパースカートに白い丸襟ブラウスの制服の少女がいるのが見えた。その子は全身泥まみれだ。舞子がそれに気付き
「あら、弥生ちゃんじゃないの。どこ行ってたのよ。みんな心配して探していたのよ。どうしたの、全身泥まみれじゃないの」
昨日から行方不明だった関口弥生がひょっこり戻ってきたのだ。しかし舞子の問いに弥生は答えない。
「弥生ちゃん、どうしたの?」
「舞子ちゃん、この子知り合い?」
佑奈は弥生から妖気を感じ取っていたので舞子に尋ねる。
「はい、同じクラスの関口弥生ちゃんです」
「そう、でもこの子何か危険よ」
「そんなことないですよ、ねぇ弥生ちゃん」
舞子の問いに弥生は佑奈を指差し
「お前か、相模の国から来た妖術使いは」
「失礼ねぇ、誰が妖術使いよ」
この子はただの女子中学生ではないと確信したから佑奈の目は真剣だ。
「佑奈お姉様『妖術使い』ってなんですか? 前から弥生ちゃんを知っていたのですか?」
舞子は状況が飲み込めず質問してくる。舞子が知るふだんの弥生のしゃべり方ではなかった。茜も
「佑奈お姉様、どうしましたの?」
「茜」
「はい、なんですの?」
「お姉様の言う事を疑問を持たずに聞いてくれる」
「はい」
「舞子ちゃんを連れて先帰って」
「佑奈お姉様はどうされますの?」
「この子といろいろとやり取りすることがあるの」
「???」
「いいから早く帰って!」
佑奈が真剣な表情で声を荒げるので茜はびっくりして舞子に
「舞子ちゃん、佑奈お姉様の言う通りにしましょう」
「でも弥生ちゃんが…」
「いいからとにかくゆきましょう」
いぶかる舞子の手を引いてなんだかわからないまま茜は小走りにその場を去り鳥居をくぐろうとすると二人は透明な壁に突き当たった。
「痛ったぁーい、なんですのこれは。見えない壁があるですの」
「うそっ、いったいこれは…。神社から出られないの?」
二人は見えない壁を手でたたいてみた。鳥居の下だけでなく見えない壁はずっと続いているようだ。茜は
「佑奈お姉様、見えない壁がありますのぉ」
と佑奈に言う。舞子もこれで弥生の異変にようやく気付いたようだ。泡を食っているから佑奈たちは気が付いていないが弥生が結界を張ってから外部の物音が遮断され境内はしーんと静まり返っている。佑奈は弥生に
「あんた結界を張ったわね」
「周りからいらぬ邪魔が入らないようにしたまでよ」
「あの子たちは関係ないでしょ。出してあげて」
「我が倒すべき相手はお前のみ。だから手出しはせぬ」
「ひとつ聞いていい?」
「なんだ」
「昨日お婆さんを殺したのはあなたね」
「あぁ、あの巫女のような老婆のことか」
「やっぱりあなたが…」
「術者としては格が低いのに我を封印しようなどとするからだ」
「ひどい、そのせいであたしが疑われたのよ」
「そのようなことどうでもよいわ」
「どうでもよくない!」
「どうせお前も倒すべき相手だ。黄泉の国で老婆と再会するがよい」
そう言うと弥生はいつの間にか手にしていた銅鐸を振り優雅に舞い踊り始めた。弥生は太古の昔に滅びた旋律を抑揚を付けてカランカランと銅鐸を振り鳴らす。最初「この子一体何を始めたの?」と佑奈はぽかんとそれを見ていたが魔力の高まりを感じ
「二人とも物陰に隠れて!」
と叫ぶ。二人ははじかれように境内のお稲荷さんの社の裏に隠れこわごわ様子を窺う。術者ではない茜と舞子にも感じられる位に強い殺気が弥生の小さな体からほとばしっていた。佑奈が反射的に飛びのくとそれまで佑奈が立っていたところに電撃が飛びガガガッと音を立て地面が大きくえぐれた。佑奈は勾玉の腕輪という魔神具を用い呪文を詠唱し複雑に指を組み結印する事で術を発動させるが、弥生は銅鐸を振り舞い踊ることが結印に銅鐸の振り方で音に抑揚を付けるのが呪文を詠唱するのに相当し術を発動させる。古墳時代と弥生時代では術を発動させる儀式や原理が異なるようだ。相手も術者なら術を使って対抗しないとこの限定空間ではやられてしまうし術を使うとうるさく言う泉崎礼香もこの場にはいないから佑奈は術を使って反撃することに決めた。
「妖術使いはあんたのほうじゃないのよ。こっちも本気出すわよ」
佑奈が呪文を詠唱し複雑に指を組み結印する。弥生も次の術を発動させるべく舞い踊っている。弥生が再び電撃を放つ。佑奈は金棒を出現させ地面に突き立てる。電撃は金棒に引かれねじ曲り地面に流れた。佑奈は避雷針を立てて弥生の電撃をアースしたわけだ。古墳時代の術と現代の科学的知識をミックスして弥生の攻撃を無力化する。
「おのれ妖術使いめ、こしゃくなまねを」
自分の事を棚に上げて弥生は再び舞い踊り火炎を佑奈に放つ。佑奈は氷の壁を出現させそれを受ける。氷の壁は一瞬にして蒸発するが佑奈は無尽蔵に氷を繰り出すことで弥生の攻撃を無力化していた。ついで佑奈は土の壁を出現させ弥生との間に築きこれを防壁とした。弥生は後ろにはえているイチョウの木の小枝を佑奈目掛けて雨あられと放った。しかし防壁に突き刺さるだけで佑奈には当たらない。
「これならどうだ!」
術の応酬では勝負がつかないと見た弥生は銅鐸を銅矛に変形させ防壁を乗り越えて佑奈目掛け突進する。佑奈も呪文を唱え鉄剣を出現させてこれを受ける。ガキーン。二人が斬り結ぶ音が境内に響き渡る。弥生の突進の勢いを込めた突きは女子中学生の佑奈には受け切れない。だから佑奈は突きのベクトルを反らすべく弥生の矛を払った。弥生は第一撃が失敗するや身を翻して間合いを取る。矛は柄が長いぶん間合いを広く取らなくてはならない。だから佑奈と接近して戦うのは不利なのだ。第二撃で佑奈は弥生の攻撃をかいくぐり間合いを詰めようとする。剣は矛に比べると間合いが狭く接近しなくてはならないので不利だが、相手の懐に飛び込めば圧倒的に優位に立てる。ガキーン、ガキーンと斬り合う音が無音の境内に響く。甲乙付けられぬまま二人の激しい斬り合いは続く。双方深手は負っていないが激しい斬り合いで全身に無数の擦り傷切り傷を負っていた。激しい斬り合いで佑奈のパーカー、弥生のブレザーとスカートはずたずたに破れている。とりわけデニムミニスカートをはいてきた佑奈の足の傷が目に付いて茜は
「佑奈お姉様痛そうですの」
と心配している。弥生に一気にとどめを刺せれば簡単なのだが、佑奈はできるだけ弥生の体を傷つけないように攻撃しているからなかなか勝負をつけられない。
 果てしなく続くかのような斬り合いにも終りがきた。佑奈の勾玉の腕輪と弥生の銅鐸の魔力は拮抗していたが、術者にした関口弥生という女子中学生は体力的に虚弱な子であった。それにくらべ佑奈は米軍で軍事訓練を受けているので術を用いず純粋に斬り合いをやっても弥生に勝てる体力がある。また銅鐸は弥生の体を乗っ取ってからずっと休息をとらせずに弥生の体を酷使していた。だから銅鐸の意思は戦闘続行を望んでも乗っ取った体がついてこなかった。体力の疲弊が激しく弥生の膝が笑ってきて腕が重くなりだんだんと突き出す矛が甘くなったのを佑奈は見逃さなかった。佑奈が鉄剣で銅矛を全力で横になぎ払うと弥生の握力が弱っていたので銅矛ははじき飛ばされる。銅矛を手放した弥生は魂が抜けたように白目をむいて地面にくずれ落ちる。地面に落ちた銅矛は本来の銅鐸に姿を変えてカランカランと音を立てて境内を転がり茜と舞子が隠れているお稲荷さんの社の前まで転がった。その白銀に輝く姿を見て茜は魅入られたようにそれが無性に欲しくなってきて
「あれ欲しいですのぉ」
と言いながらふらふらとお稲荷さんの社の裏から出てくると茜は銅鐸を手にしようとする。
「茜だめぇーっ」
佑奈が絶叫する。そばにいた舞子も
「茜ちゃん、それは危険よ。いっちゃだめ」
と茜をはがいじめにして止めようとするが銅鐸に魅入られた茜はものすごい力で舞子を振り払う。茜に突き飛ばされた舞子は「ぎゃっ」と言って地面に転がる。銅鐸に近寄ると嬉しそうな笑みを浮かべて銅鐸を手にする。銅鐸は体力の限界がきた弥生の体を捨てて今度は茜に乗り換えようとしているのだ。銅鐸にとって術者の体は術を発動させる儀式を行わせるための使い捨ての憑代(よりしろ)にすぎないのだ。佑奈は銅鐸に魅入られた茜に対して術を発動させるのをためらった。ここで攻撃呪文を発動させれば茜のみならずそばにいる舞子まで巻き添えをくう。その間に銅鐸を手にした茜は「ぐわっ!」と普段上品な茜が発したとは思えない声を上げて苦しそうにのたうつ。手にした銅鐸から邪悪なものが茜の中に入ってくる。茜は銅鐸を投げ捨てようとしたけれど手に吸い付いたかように離れない。邪悪なものは茜の体のすみずみまでなめ回すように見て回りとても不快だ。だんだんと茜の意識の中に邪悪なものが押し入ってきて茜は自分を見失いそうになる。そして茜は放心したかのようにがっくりと両膝をついてうなだれた。
「茜ーっ」
佑奈が叫んだがもう茜の耳には届かないようだ。
 それから少しして銅鐸を手にした茜がすっくと立ち上がり佑奈に向き合う。佑奈は警戒した面持ちで対峙する。
「あんた茜なの?」
と問うと茜は
「そうですの。佑奈お姉様」
といつもの調子で答える。
「銅鐸に心を奪われているのではないでしょうね」
「佑奈お姉様、銅鐸さんははじめ私の心と体を奪おうとされたんですけれど、わたくしが『そーゆーことしちゃだめですの!』って叱ったらわたくしにその力のすべてを託して眠りにつくことになりましたの」
「それどーゆーこと?」
佑奈と舞子にはまるで理解できなかった。銅鐸は弥生の持つ容姿や学力といったものへのコンプレックス、すなわち心の闇を増幅することでエネルギーとしていたのだが中学1年生にしてはまだまだ子供で純真無垢な茜には付け入る心の闇というものがなく、逆にその清らかな存在に触れ銅鐸は屈服させられてしまったのだ。
「茜ちゃんすごーい」
と舞子はよくわからないけれど感心しているが佑奈は
「そうなの?」
と理解できない様子。
「とにかく銅鐸に体を乗っ取られているんじゃないのね?」
「そうですの」
と答える茜の様子から佑奈は茜は本当に銅鐸を屈服させたのかしらん?と半信半疑であった。そして弥生にかけ寄り
「弥生ちゃん、大丈夫?! しっかりして」
と介抱している舞子の姿を見て佑奈は
「いったいどうやってこの結界から脱出したらいいのかしら」
と頭を悩ませていた。
「今わたくしが解きますわ」
と茜は弥生のように銅鐸に抑揚を付けて振り舞い踊ると結界が解けた。外界はすでに日が暮れて夜になっていたから急にあたりが暗くなって一瞬佑奈たちは何も見えなくなった。そしてそれまで外界と遮断され全く音がしない世界にいたのにまわりの音がわっと耳に入ってきて3人は思わず耳をふさいだ。弥生もそれで気が付いたようで
「あれっ? なんであたしこんなところで寝てんだろ。やだっ泥だらけじゃないの。制服もぼろぼろになってるしぃ…」
「弥生ちゃん大丈夫?」
「舞子ちゃん、なんであたしこんなとこにいるの? 昨日からまるで記憶がないんだけど?」
「あのね、弥生ちゃんはね…」
弥生にこれまでのいきさつを説明してやろうとする舞子を佑奈は止めた。魔物にとりつかれていたなんて聞いても弥生には信じられないだろうし知らないほうがいいと思ったのだ。舞子もそれをくみ取り
「さぁ? 狐にでも化かされたんじゃないの?」
と舞子もごまかした。
「なんかすごく体がだるいんだけど」
「舞子ちゃん立てる? おうちまで送るね」
そう言うと舞子は弥生の肩を抱いて神社を後にした。
 二人の後ろを歩きながら弥生に代わって二代目弥生少女になった茜はニッコリ笑って佑奈に銅鐸を見せながら
「これでわたしくも佑奈お姉様と同じ術者になれましたのぉ」
とうれしそうに言った。なんてったって茜には手芸店で買ってきたプラスチックの勾玉で作ったニセモノの腕輪しかなかったのだから。

エピローグ


 保護された弥生はひどく衰弱していて村の医院にかつぎこまれた。佑奈との激しい斬り合いで全身擦り傷切り傷だらけになっていた。着ている制服もぼろぼろで暴行された疑いもありその点も調べられたが弥生の貞操は無事と判明した。弥生は点滴を打たれ入院したが若さゆえ回復も早く3日目の夕方には退院した。
 佑奈は村中が弥生に気をとられている隙にペンションに戻りシャワーを浴び全身の泥を落としぼろぼろになったパーカーやデニムミニスカートを着替えた。佑奈はこのパーカーがお気に入りだったのにもう着られないことが残念で仕方がなかった。佑奈も全身擦り傷切り傷だらけでシャワーが傷に染みた。佑奈は長袖のシャツと長ズボンに着替えて腕や足の傷を隠したのでさほど傷が目立つことはなかった。
 佑奈と茜、舞子は弥生発見のいきさつを警察に聞かれたが弥生が銅鐸に体を乗っ取られて妖術を使い結界を張りそこで佑奈と激しい斬り合いをしたなんて信じてもらえないだろうし、佑奈が傷害罪に問われかねないから茜・舞子と3人で口裏を合わせ中学校の帰りに3人で遊んでいて偶然神社の境内でぼろくずのようになった弥生が倒れているのを発見したことにした。回復後弥生は警察の事情聴取を受けたが銅鐸を手にして以降の記憶がまったくといってなかった。ナオ殺しについてもまるで覚えていなかったのは弥生にとって幸いであった。体を乗っ取られていたとはいえ自分の手が人を殺したことを覚えていたら弥生には耐えられなかったであろう。
 ナオ殺しについては佑奈犯行説が色濃かったが証拠はなくみだりに未成年の佑奈を勾留して取り調べるわにもゆかずついに捜査は迷宮入りした。
 風の噂によればその後舞子は吹奏楽部に入ったらしい。
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古墳少女佑奈5 古墳vs弥生 その4

2007年05月31日 10時33分46秒 | 上月佑奈

第4章 山奥中学校吹奏楽部



 翌日4人の娘たちは約束通り山奥村立山奥中学校吹奏楽部を訪ねる。舞子は同じクラスの佐野仁美と約束していたのだ。舞子は学校に行くときは制服着用という決まりにならい紺のブレザーとジャンパースカートに白い丸襟ブラウスの制服を着ていた。佑奈たちは制服なんて持ってきていないから佑奈は灰色のパーカー、ピンクのロンT、デニムミニスカート。茜は灰色のカーディガン、水色のブラウス、緑のタータンチェックスカートという私立女子中学校の制服風の格好をしている。若葉は吹奏楽部に興味がないから別行動をとった。そして隠れる気もないようなあからさまな様子で刑事が二人佑奈を尾行してきた。もっともこんな人気の少ない山奥では人込みにまぎれるなんてできないからどんなにうまく尾行してもすぐに気付かれる。佑奈は
「何あの刑事、わざとらしくさりげないふりしちゃって」
「ほんとですの。佑奈お姉様が悪いことするはずなんてないのに」
と茜も怒っている。若葉が
「あんなに尾行がへたな刑事しかいないんじゃこの事件は迷宮入りね」
「そんな! 弥生ちゃんが行方不明なんですよ」
と舞子が非難するような目で若葉を見た。
「それにしても通学路にコンビニ1軒ないのねぇ」
と佑奈が妙なところに感心している。道端にさびたバス停が立っていて佑奈が時刻表を見る。
「茜すごいよぉ。バスが1日に6本しか走ってないよ。休日になると4本になっちゃう」
と本数の少なさに感心している。これだけ本数が少ないうえに整理券方式で運賃も海老名市に比べて高いゆえに舞子は浜松のような都会に出ることはめったになく、県都 静岡市に行ったのも小学校の遠足で行っただけだ。それでも舞子はそれが当たり前の生活をずっとしてきたから不便に感じたことはなかった。山奥村には高校がないので高校生たちは朝のバスで登校してゆき、夕方のバスで帰ってくるという規則正しい生活をしている。乗り遅れるようなことがあると遅刻が確定し親に車で送ってもらう事態になるから必然的にバス停に10分前から並んで待つ習慣が身に付いているのだ。

 山奥村立山奥中学校は過疎で各学年1クラスしかなく吹奏楽部は受験で3年生が抜けて1,2年生13人しかいなかった。街までゆくのに時間もお金も掛かるから吹奏楽コンクールに出たことはなく、主に学校行事と村祭りで演奏する程度の活動である。
 舞子が音楽室をノックして入ると吹奏楽部の面々は丁度<エルクンバンチェロ>を練習しているところであった。3人を歓迎するため山奥中学校吹奏楽部は<アルヴァマー序曲>を演奏してくれた。トランペットの元気な出だしにクラリネットの旋律、のびやかな金管の和音が印象に残る演奏であった。ついで<宝島>アゴーゴベルの音で始まり、金管のイントロ、木管のメロディ、アルトサックス女子が立ちソロを吹く。金管パートが間奏でスタンドプレイをした。力強い演奏に佑奈たちは手拍子でこたえる。演奏後に舞子が佑奈と茜の二人を海老名市立大塚中学校吹奏楽部でクラリネットを吹いていると紹介すると部員たちから「おぉーっ!」と声が上がる。二人を交えて海老名市立大塚中学校吹奏楽部のレパートリーでもある<エルクンバンチェロ>を演奏しようということになった。佑奈は予備のクラリネットを借り受けて音出しを始めた。茜はまだ入部したばかりでクラリネットを上手く吹けないからパーカッションの小物に回り、吹奏楽部とは縁もゆかりもないけれど舞子もマラカスで参加する。顧問の指揮で<エルクンバンチェロ>が演奏される。金管のイントロに続き1年生一人だけのフルートパートの繊細なる演奏、木管による主旋律が続く。佑奈も使い慣れないクラリネットではあったが楽しそうに演奏に参加する。最後は金管の音で力強く終わった。
「わぁーっ、楽しいーっ」
そう言うとクラリネットパートの末席に座っていた佑奈はクラリネットパートの二人とがっちり握手し、ひいては吹奏楽部13人全員と握手した。舞子も吹奏楽部で演奏したのはこれが始めてだけれどその楽しさに触れ
「あたし吹奏楽部に入ろうかしら」
と言っていた。それから3人は練習半分、部員とのおしゃべり半分で楽しい時を過ごし正午すぎに山奥中学校を後にした。

その5につづく
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古墳少女佑奈5 古墳vs弥生 その3

2007年05月31日 10時31分11秒 | 上月佑奈

第3章 山奥村の惨劇



 夕食が済み食堂で娘たちがお茶を飲みながらおしゃべりに興じている頃ペンション<パンプキン>に静岡県警のパトカーがやってきた。中から本署の中村・三沢・花田3人の刑事が出てきて長谷川母娘と上月佑奈に任意で尋問したいと告げた。長谷川英子は
「いったい娘たちが何をしたというの?!」
と刑事に食ってかかるが中村は
「ちょっとお話しを伺うだけですから」
とひょうひょうとしている。
 この晩、山奥村に殺人事件が発生した。殺されたのは種村ナオ(85)で、代々この村の神社の神主を務めている家系の老婆だ。ナオは林の中で鋭利な刃物で袈裟掛けに斬られているのが村人により発見されていた。一手で惨殺する手際よさはかなりの手だれを連想させた。凶器は犯人が持ち去ったようで現場から発見されなかった。犯行の目撃者はいなかったが、昼間ペンション<パンプキン>に来た客の車を止めナオが口論していたのが別の村人により目撃されており、とりわけ名指しで非難されていた少女に刑事たちは強い関心を寄せていた。ちなみに犯行時ペンション<パンプキン>は夕食時で中尾家・長谷川家・上月佑奈はその頃全員が食堂で夕食を共にしていて相互にアリバイを確認できる状態であり、ペンション<パンプキン>から犯行現場へは車で20分はかかるので普通ならば中学生の娘たちは車を運転できないから容疑者から外されるところであるが上月佑奈にはナオに対して遺恨があるだろうから佑奈が無免許で車を運転したり共犯者に運転させて犯行現場を往復することも視野に入れて捜査している。
 中村と三沢はペンション<パンプキン>の一室を借りて上月佑奈を前にして事情聴取を始めた。
「今日君は被害者から疫病神みたいに言われてかなり腹を立てていたそうだね」
「たしかにあのお婆さんムカつくこと言ったから…」
「それで殺したんだね」
「えっ!」
「君がお婆さんを殺したんだよね」
「違います!」
「そうかなぁ、それが一番説得力あると思うんだけど…」
そこへ花田が入ってきて中村にメモを手渡す。中村は佑奈の尻尾をつかんだとばかりににやりとして目の色変え
「海老名署に君達の身元を照会したらおもしろいことを言ってきたよ」
「えっ?!」
「君は『古墳少女』なんだってねぇ。火を吹いたりできるそうじゃないか。妖術を使ったら離れた場所で殺人だってできるんだろうね」
「そんなことできるわけないじゃないですか!」
「それに君だけ家族でない」
「えっ!」
「なんで長谷川家の家族旅行にクラブの先輩とはいえ君が来ているのかい? 普通他人の家の家族旅行にはついてゆかないだろう」
「それは茜が無理に誘ったから…」
「妖術を使って誘うよう仕向けたのじゃないのか?!」
「そんなことするわけないでしょ! あたし本当は来たくなかったんだから」
「じゃあどうやって殺したんだ!」
「あたし何もやってない!」
「他にこんなことする奴はこの村にはいないんだ。お前しか考えられない」
「ひどい!」
佑奈は涙ぐんだ。
 中村は話題を変え一枚の写真を佑奈に見せた。昨日から行方不明の関口弥生の写真である。
「この子を知っているかね」
「誰、この子?」
「本当に知らないのかね」
「知りません」
刑事たちには本当に佑奈は知らないように見えた。しかし相手は古墳少女なので油断はしない。
「お前が殺してどこかに埋めたんだろ」
「はぁっ?! なんで会ったこともない子を殺して埋めるのよ」
「古墳少女ならそのくらい朝飯前だろ」
「信じらんない。それでも警察?!」
「いまここで二人を殺したことを認めたら自首してきたことにしてやるよ」
「だから殺してません」
「強情な子だな」
佑奈はこの刑事を殴ったろかと思ったけれどそんなことしたら警察署に連行する口実を相手に与えることになるからぐっとこらえた。刑事たちは佑奈を怒らせてボロを出させようとしたけれど佑奈はやってないから全くボロを出さなかった。警察は当初弥生がナオを殺して逃走したというシナリオで捜査していたが車の運転ができない弥生が村を出るにはバスに乗るか誰かの車に便乗するしかない。しかしバスにも乗っていないし誰も弥生を乗せたというものはいなかった。こんな山奥によそ者の車は滅多にこない。だからまだ弥生は村にいると考えるのが妥当だ。生死はともかくとして。
 しかしナオを殺害したのは弥生である。より正しく言えば弥生にとりついている物が弥生の体を使ってナオを殺したのだ。ナオは弥生の異変に気付いてその正体を見抜きそれを封印しようとしたけれど弥生に斬られたのだ。林の中で偶然弥生に出会ったナオは弥生の様子がおかしいことに一目で気付いていた。
「あんた弥生ちゃんじゃないぞよ?」
「フフフ、よく見破ったとほめてやろう。しかしそれがお前の命を縮めることになったな」
「弥生ちゃんにとりつきし妖かしの物よ。今すぐ退散せねば封印するぞよ」
「笑止」
ナオは御幣を構え祝詞を上げる。弥生は手にしていた銅鐸を銅矛に変形させると「やぁーっ!」と間合いを詰めてナオを袈裟掛けに斬る。ナオはよけることもできず一撃で斬り倒されてしまった。
 刑事は未成年ということもあり佑奈を警察署に連行はしなかったが、ペンション<パンプキン>の前にパトカーを止めて佑奈が逃亡を図らないよう刑事を張り込ませた。またこの場での保護者である英子には
「村を出るときは必ず警察に連絡するように」
と言い残した。
 「なんなの、あの刑事。すごくムカつくぅ」
上月佑奈はぶりぶり怒っている。話を聞いた長谷川茜も同様に怒って
「佑奈お姉様を疑うなんてどうかしてますわ。わたくしたちとずっと一緒にいましたのに」
「でも、種村のおばぁさんが殺されて関口弥生ちゃんも行方不明なんですって」
舞子がこわごわ言う。関口弥生は舞子にとってクラスメイトだから心配である。若葉がぽつりと言う。
「でもあの人が言った通りね」
「えっ?」
「若葉お姉様なんですの?」
「確かに殺されたあの人が言っていた通り人死にが出たわ」
「確かにそうですけど…」
佑奈は複雑な表情を見せた。若葉は
「でも自分が死ぬとはさすがにわからなかったみたいね」
と言って佑奈たちをギョッとさせた。さらに
「この村にまだ犯人が潜伏しているみたいだから一人では出歩かないようにしまょうね」
と言った。

その4につづく
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古墳少女佑奈5 古墳vs弥生 その2

2007年05月31日 10時29分51秒 | 上月佑奈

第2章 楽しいドライブ



 11月23日の早朝、神奈川県海老名市大塚町の上月家の前に白いミニバンが止まる。長谷川茜の母 英子の車だ。後ろのドアが開き玄関前に出ていた上月佑奈に
「佑奈お姉様ぁーっ、おはようございますぅ!」
と長谷川茜が抱き付く。茜はよほど佑奈と旅行できるのが嬉しいらしい。英子と茜の実の姉 中学3年生の若葉も車から降りてくる。今日の茜はピンクのタートルネックのニットワンピースを着ているが、若葉もおそろいのミントグリーンのタートルネックのニットワンピースを着ている。佑奈はそれを見て中学生にもなって姉妹でおそろいなんて…と軽く引いた。茜の母 英子も白いジャケットに茶色のブラウス、花柄のロングスカートとばっちりおしゃれにファッション決まっていてこれからバカンスにゆきますという感じだ。それに引き換え佑奈は灰色のパーカー、黄色いちびT、デニムのハーフパンツといたって普段着で「うわーっ、失敗したぁーっ」と思ったが今更着替えに戻るわけにもゆかず困惑した。思えば毎朝上月家に茜が佑奈を起こしに来るけれど、茜の「一度お家に遊びにきて下さいの」という誘いを佑奈はずっと断っていて一度も行ったことがないから長谷川家の生活様式というものを全く知らなかったのだ。だから茜の実の姉 若葉とも一回しか話したことがない。その時の印象から佑奈は若葉には苦手意識を持っている。佑奈の母 順子と茜の母 英子は母親同士
「うちの佑奈がお世話を掛けます」
「いえいえうちの茜が佑奈ちゃんを無理言って誘ったそうで」
「とんでもない。いつも茜ちゃんが佑奈を起こしにきてくれるから佑奈が早く学校にゆくようになって本当に助かっているんですよ」
とよくありがちなやりとりの後順子は佑奈に向かい
「いい佑奈、長谷川さん家に迷惑掛けるようなことしないのよ。特に変な術は使わないようにね」
と釘を刺した。佑奈だってすき好んで術を使っているわけではないのだ。そう言われるとカチンとくる。佑奈は
「わかってます」
とふてくされたような返事をする。若葉が佑奈にそっと近付いてきて
「佑奈ちゃん、妹が無理を言ってごめんね。本当はいやいや付き合っているんだよね」
と耳元でささやいた。佑奈は核心をつかれて顔を引きつらせて黙り込むしかなかった。そしてそこまでわかっていたのなら茜に因果を含め言い聞かせ佑奈の参加を取り止めにしてほしかったと思った。若葉は佑奈に「無理して来なくてもいいよ」とは言ってくれず、佑奈は茜にせかされるようにして車に乗せられた。

 長谷川家のミニバンは厚木インターチェンジから東名高速に乗り西へ向かった。途中足柄サービスエリアで休憩し、車窓に富士山が見えてくると3人の娘たちは
「うわー、富士山だぁ」
と盛り上がる。後ろの席に並んですわった茜は車内で佑奈にお茶お菓子を次々出してかいがいしくもてなす。佑奈はいい加減お腹一杯になってきて閉口気味だ。若葉は助手席にすわり何かの本を一心不乱に読んでいて妹が佑奈にしつこくしているのに気付かぬ様子。佑奈は助けを求めるべく
「若葉先輩」
と声を掛ける。振り向いた若葉はにっこりほほ笑んで
「『若葉お姉様』と呼んでいいわよ」
と答えると佑奈は青くなって首を左右にぶんぶん振った。その様子を見て若葉はくすくすと笑った。やっぱりこの姉妹と旅行にゆくこと自体が間違いだったと佑奈は激しく後悔して黙り込んだ。
 富士川サービスエリアでレストランに入りに早めの昼食。佑奈がハンバーグセットにすると茜もそれに倣う。若葉はビーフシチューセット、英子はローストチキンセットを注文した。
「それにして富士山が見えてよかったわねぇ」
と若葉がいうと茜は
「きっと佑奈お姉様の御利益ですの」
と意味不明なことを言う。名前を出された佑奈はギョッとする。
「お母様、佑奈お姉様にもこのワンピースを買って差し上げればよかったですの。そうすれば『3姉妹』でおそろいになったのですの」
「そうね、うっかりしていわた」
と言う茜と英子を見て佑奈は『3姉妹』という言葉に嫌そうな顔をした。佑奈まで色違いのニットワンピースを着ているのを大塚中学校の生徒に見られた日にはどんな風に言われるかわからない。親友には歩く口コミとでもいうべきおしゃべりの高田瑞穂もいるのだ。瑞穂はきっと、佑奈が『長谷川家の養女になった』くらいのことを言いふらすに違いない。それだけは願い下げだ。若葉はそんな佑奈の反応を見てナプキンで口元を押さえながらくすくすと忍び笑いをしている。
 食後3人の娘たちはおみやげコーナーをのぞき
「これかわいーっ」
などと言いながら見て回っているが、これから出かける途中ゆえ何も買わない。ふたたび走り出した車は吉田インターチェンジで東名高速を降りて県道を山のほうに向かう。お腹がいっぱいになり3人の娘たちはぐーすか寝入っている。

 不意に車がキキーっと急ブレーキを掛けて止まる。3人の娘たちは飛び起きて
「お母様、一体何ですの?」
と茜が言う。そこは山奥村の入口で佑奈が前を見ると白髪の老婆が前に立ちふさがっていた。この老婆は種村ナオといい、村の神社の神主のようなことをしている家の老婆だ。そしてナオは佑奈が乗っている右後方の席にくると佑奈を指差し
「この娘は呪われているぞよ。村に入れば厄災を振りまくことになる。とっととこの場を去るぞよ」
「何を言うのですの! 佑奈お姉様は疫病神じゃありませんの!」
茜がムキになって反論する。佑奈はまだ何の術も使っていないうちからこの様な扱いを受け腹が立ったが長谷川家の手前ぐっとこらえていた。
「この娘が村に入れば人死にが出るぞよ。どうしてもゆくというのならそれを覚悟するぞよ」
と言うとぷいと姿を消した。
「いったいあのお婆さんは何ですの。佑奈お姉様に言いがかりをつけるなんて許せませんの!」
茜がぶりぶり怒っているのに母の英子が
「きっと頭がボケちゃっているのよ。かわいそうに」
となだめる。
「でもボケてるようには見えなかったけどなぁ」
と若葉が言うと佑奈は
「あの若葉先輩」
「なーに? 我が妹よ」
佑奈は若葉のボケにかまわず
「まさかこんな遠くにまで古墳少女の名がとどろいていたりしませんよね?」
「神奈川県でも全県にわたって顔が知れ渡っているわけじゃないんだから佑奈ちゃんが古墳少女だとわかる人はこの辺にいないと思うんだけど」
「そーですよね」
「ただ…」
「『ただ』なんですか?」
「ううん、何でもない
「言いかけてやめるなんて気になるじゃないですか。先輩教えて下さいよ」
「なら言うけど、あの人巫女さんみたいな格好していたじゃない」
「はい」
「だから佑奈ちゃんの腕輪が放つ力を感じとったのではないかと思ったの」
「まさかぁ」
「若葉がお姉様すご~い。やっぱり佑奈お姉様は偉大なんですのぉ」
と茜が感心している。若葉は続ける。
「しかし、あのお婆さんはまだ佑奈ちゃんが村に入っていないうちから存在を感知して佑奈ちゃんが術使いの古墳少女だとおそらく見抜いていたのでしょうからただものではないと思うけど」
そう言われると鋭い若葉の推理に佑奈は反論できない。
「ともかくこの村で術を使わない方がいいわ」
「はい、そうします」
佑奈の母みたいなことを若葉にまで言われて佑奈はしゅんとなった。また、えらいところへ連れてこられたとため息をついた。

 車はその後何の妨害にも会わず英子の高校時代の友人夫婦が経営するペンション<パンプキン>に到着した。名前にちなんでカボチャのイラストが看板に描いてある。英子は友人の中尾恵子に再開でき
「恵子、久しぶりぃ~」
と再会を喜んでいた。ペンション<パンプキン>は中尾恵子と夫の貴史が脱サラして始めたものである。夏は大学のテニスサークルなどの合宿で忙しいが秋から冬にかけては比較的暇なのだ。一人娘の舞子(中学1年生)も出てきて
「若葉お姉ちゃん、茜ちゃんお久し振りです。その方は?」
と佑奈を見て言う。茜が
「わたくしの佑奈お姉様ですのぉ~」
と言うので舞子は「???」となった。若葉が舞子にかいつまんで佑奈と茜の関係を説明したので納得したようだ。
「そうゆうことでしたらあたしも佑奈お姉様と呼ばせていただきますわぁ」
と舞子ににっこりとほほ笑まれ佑奈は二人目の妹ができたようでギョッとした。

 部屋割りは英子と若葉が202号室、佑奈と茜が201号室とした。佑奈としては茜と同室は勘弁願いたかったが英子か若葉とよりはましという消去法で従った。ビジネスホテルではないからペンションにシングルルームはない。舞子に案内されて佑奈は201号室を開ける。木のぬくもりあふれるおしゃれな室内に佑奈は
「わー、かわいいーっ」
とはしゃいだ。茜はそれを満足げに見ながら
「佑奈お姉様、気に入っていただけましたか?」
「うん」
「わたくしたちは毎年2~3回はこちらに来ておりますの」
「へぇー」
「これからは佑奈お姉様も毎回ご一緒くださいの」
「えーっ、それはちょっと…」
佑奈は引き気味だ。
「そうですの、来年の吹奏楽部の合宿はこちらでしましょう。それがいいですの」
茜は勝手にそう決めたがこのペンションには海老名市立大塚中学校吹奏楽部が全員泊まれるだけの部屋がないし、第一練習場がない。
「それはちょっと無理でしょう。お部屋の数が少ないし、練習場がないわよ」
昨夏佑奈も参加した(今年の夏はアメリカに行っていたので佑奈は合宿に不参加)海老名市立大塚中学校吹奏楽部の合宿は宿泊棟のほかに体育館兼用の練習場がありそこに大型打楽器を設営して朝から晩まで練習に励んだのだ。
「それは残念ですの」
茜は自説をとりさげた。
「でも佑奈お姉様とお二人でクラリネットパート有志の合宿ということなら…」
佑奈は頭が痛くなってきた。

 それから舞子も含めた4人の娘たちは部屋で七ならべやババ抜きといったトランプをして楽しんだ。普段は舞子もペンション<パンプキン>の手伝いをしている。しかし、なんとも商売っ気がないことだが今日からの三連休は長谷川家の貸し切りということで茜たちと遊んでもよいのだ。
「佑奈お姉様と茜ちゃんは吹奏楽部なんですかぁ。あたしのクラスにも吹奏楽部の子がいるんです。会ってやってくれませんか?」
「それは素晴らしいですの」
と茜は乗り気だが佑奈は知らない子と交流するのは面倒な感じがしてあまりそそられなかった。しかし舞子は
「じゃあ、ちょっと電話で約束してきます」
と部屋を出ていった。それからしばらくして舞子は明日の午前中に吹奏楽部の練習を見学することで話をつけてきたのでなりゆきで佑奈も行く事になった。

その3につづく
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古墳少女佑奈5 古墳vs弥生 その1

2007年05月31日 10時27分06秒 | 上月佑奈

プロローグ



 静岡県山奥村。そこは40年ほど前までは林業が盛んで遠州鉄道の支線も木材輸送のために乗り入れていた程であったのだが今はすたれ、とうの昔に鉄道も廃線になり日に数本遠州鉄道のバスが走るさびれた村だ。そんな山奥村唯一の村立山奥中学校2年生の関口弥生は中学校の帰りに林の中にキラッと光るものを見つけた。普段ならそんなものはまるで気にしないのだがどうゆうわけかものすごく弥生は気になってそれを見たくなった。弥生は茂みをかき分けてそれに近付いていった。茂みの奥には白銀に輝く銅鐸が半分土に埋まった状態であった。
「これって歴史の時間に習った銅鐸よね。なんでこんなところにあるのかしら?」
弥生はそう思った。弥生には考古学の趣味はなかったが、無性にそれを手にしたくなった。制服が汚れるのもかまわずに地面に両膝をつき犬のように手で周りの土を掘る。夢中で土を掘ったため紺のブレザー・ジャンパースカートに白い丸襟ブラウスの制服はもう泥だらけだ。そして弥生は高さおよそ20cmの銅鐸を手にした。その瞬間
「ギャーッ」
と弥生は絶叫する。手にした銅鐸から邪悪なものが腕を伝って弥生の中に入り込んでくる。弥生は銅鐸を投げ捨てようと思ったが手に吸い付いたみたいに放すことができない。邪悪なものは弥生の全身をなめ回すようにかけめぐると徐々に肉体と精神を乗っ取っていった。もう弥生は全身の自由を失い膝立ちになっていることもできず意識を失いバッタリと地面に倒れた。
 それから少ししてむくりと起き上がり顔が泥だらけなのにもかまわず
「ついに復活の時が来たり」
と別人の口調で言う弥生の顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。

 そもそも銅鐸なるものは魏誌倭人伝の記すところの邪馬台国の女王 卑弥呼が行っていたとされる鬼道の系譜を引く魔神具であり、古代においては雨を降らせ豊穣をもたらせたり、敵を滅ぼすための武器となったものだ。
 弥生時代が終り古墳時代に入り遠江の地を平定した大和朝廷が派遣した役人によりこの銅鐸は村外れに厳重に埋葬し封印された。古事記や日本書記に銅鐸の記事が一切出てこないのも蛮族と見ていた弥生人の魔神具であり、被征服民の抵抗と制御し難いそれを使うことを恐れ封印したからだ。それゆえ全国的に見ても銅鐸の出土数はたかがしれており、多くは集落から離れた寂しい山中などで発見されている。その後この銅鐸のことはこの地の住人たちにすっかり忘れ去られていたのだが、先日の大雨で土砂が流出し封印施設も破壊されたため銅鐸はおよそ2000年ぶりに日の目を見て銅鐸に宿る邪悪なる意思も目覚めたのだ。銅鐸それ自体は力を行使することができない。憑代(よりしろ)となる肉体を必要としそれらの人がシャーマンとしてムラやクニを治め銅鐸の魔力を行使する媒体として活動していたのだ。本来なら神主や巫女の血筋の者が最適なのだが、とりあえずの憑代として銅鐸は通りすがりの女子中学生を選んだ。

【注】銅鐸が弥生人の魔神具で大和朝廷が厳重に埋葬・封印したというのは筆者の学説である。

第1章 茜のお誘い



 11月中旬の海老名市立大塚中学校2年2組の教室に1年3組の長谷川茜は姉の佑奈を訪ねてきていた。
「佑奈お姉様、今度の連休は何かご予定ありますの?」
「えっ、何もないけど」
姉の上月佑奈は物憂げに答えた。女子中学生の姉妹で名字が違うのは本当の姉妹ではなく茜が佑奈の押しかけ妹になっているからだ。男でいえば兄弟分というところだろうか。二人は大塚中学校吹奏楽部でクラリネットを吹いており、茜には若葉という本当の姉もいるのだが佑奈を姉と慕っている。茜はそれを聞いて満足そうに笑みを浮かべた。この年は勤労感謝の日が金曜日に当たり三連休になっていた。吹奏楽部の顧問は家族サービスのため九州に旅行へ行くとかで三連休には吹奏楽部の練習が一切なく部員一同大喜びしていた。
「それはよかったですの」
「何が『よかった』のよ?」
「わたくしこの連休に家族で旅行に参りますの」
「そう、それはよかったわねぇ」
佑奈は素っ気なく答える。
「佑奈お姉様も来て下さいの」
「えーっ。なんであたしまであんたん家の家族旅行にゆくのわけぇ?」
「いいじゃありませんの。わたくしたち姉妹なんですから何の不思議もないですわ」
「いやよ、あたし行かないから」
「そんなぁ、ご一緒できると楽しみにしておりましたのにぃ…」
みるみる茜の目に涙がたまってゆきひっくひっくとしゃくり上げている。これ以上佑奈が何か言い返したら茜はびーびー大泣きするに違いない。こんな子妹にするんじゃなかったと佑奈は激しく後悔した。
「茜ちゃんかわいそうに」
「予定がないんなら付き合ってあげればいいのに」
「『佑奈お姉様』って薄情よねぇ」
「上月さんってあんな後輩に冷たい子だとは思わなかったわぁ」
「ほんと見損なったわね」
「予定がないんならあたしだったら行くなぁ」
2年2組の女子たちがヒソヒソ話しているのが佑奈の耳にも入ってくる。男子たちも
「上月ってやな女だな」
「あぁ、いつも朝あの子に起こしにきてもらっているってのに旅行を断るなんて」
「ひでーなー」
「普通かわいい妹に頼まれたら多少無理してもつきあうよなぁ」
「あぁ、俺だったら迷わず行くな」
「茜ちゃんかわいいもんなぁ」
「なんだお前そうゆうことだったのか」
「『佑奈お姉様』に代わって俺が旅行に行こうかなぁ」
「うわーっ、茜ちゃん最大のピンチじゃん」
「『先輩がいいことしてあげるよぉーっ』って」
「そんなことしたら上月に殺されるぞ」
「ひぇーっ、こぇーっ」
と下世話な話をしている。困り果てた佑奈が親友の泉崎礼香に目をやると礼香はくすくすと忍び笑いをしている。そして目で佑奈に「行ってあげなさいよ」と語っている。礼香ならこの窮地を脱するいい知恵があるはずと信じたのに礼香まで茜の味方をするなんて…と佑奈は思った。佑奈は旅行の誘いを断っているだけなのになんだかものすごく茜に対して極悪非道な真似をしているような気になってきた。
「わかったから、旅行にゆくから、泣かないの」
と佑奈がヤケになって叫ぶと茜はパッと顔を輝かせ
「佑奈お姉様、本当ですの?」
「うん」
「わーい、わーい、嬉しいですのぉ~」
と普段おしとやかな茜がピョンピョン跳びはねて喜んでいるから相当嬉しいのだろう。それを見て佑奈はハメられたと思った。

 その翌日、佑奈は吹奏楽部の練習のあと茜に
「あのさ、旅行のことだけど…」
「早くその日が来ないかとわたくしカレンダーに印を付けて楽しみにしておりますのぉ」
と茜はにこにこしながら答える。そんな茜の様子を前にして「やっぱ不参加」とは佑奈は言えなくなってしまった。佑奈は内心焦った。早く茜に断りを入れないと本当に長谷川家の家族旅行にゆくことになってしまう。佑奈としてはそれだけはなんとしても避けたい。今日こそは断るぞ!と佑奈はそれから毎日思っているのだけれど茜の楽しみな様子を前にすると何も言えなくなってしまう。そうして佑奈がぐずぐずしている間に旅行当日を迎えた。

その2につづく
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子犬のショコラ

2007年05月27日 18時28分22秒 | 社会
今日は夕方にいとこが飼っている子犬のショコラを散歩させました。ショコラは柴犬です。
ショコラはまだ幼く周りを見ないで走るのでしっかり手綱をしめてお散歩しました。
犬は犬好きな人がわかるのでショコラは大喜びでじゃれついてきました。
町内をぐるりと回って帰りました。今夜はビールがおいしく飲めそうです。
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平和の風に吹かれて

2007年05月24日 18時48分02秒 | 写真カメラ
 川崎市立幸図書館のとなりにある幸区役所前に中辻 伸の『平和の風』という半裸の女性立像があります。なかなか写実的な作品だなと写真を撮っていて思いました。白黒で撮るのが似合うと感じます。

 川崎市立幸図書館では岡本太郎さんの『自分の中に毒を持て』と『壁を破る言葉』を借りてきました。『自分の中に毒を持て』から読んでいますが、太郎さんの生きざまをひしひしと感じます。岡本太郎記念館にまた行きたいなと思いました。都バスに乗って太郎さんに会いに行くかな。太郎さんが私の絵を見たら
「なんだこれは!」
と言ってくれるような気がします。
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修学旅行で事故

2007年05月24日 13時33分39秒 | 鉄道バス
 首都高速で観光バスが事故にあった。大和市立大和東小学校の6年生の修学旅行の団体で日光に向かう途中とのこと。神奈川県の小学校はJR日光線の日光集約臨でゆくものと思っていたのに観光バスとは意外に思った。

 NHKニュースでKanachuのロゴが写っていたけれど神奈川中ハイヤーのバスなのだろうか?

首都高で観光バスなど多重事故、修学旅行の小学生らけが(朝日新聞) - goo ニュース
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森ヶ崎公園にハイキング?

2007年05月22日 16時32分56秒 | 鉄道バス
今日は東京都大田区南六郷から大森南まで郵便局で貯金しながら踏破しました。
旅行貯金して歩くにはいい陽気です。

東京都大田区大森南という地区はまだ私が足を踏み入れたことのない地区です。
川崎駅からバスが出ている森ヶ崎というと川崎市民や大田区民にはわかりやすいかもしれない。
しかしその森ヶ崎ゆきバスは減便されてしまいすっかり影の薄い系統となってしまいました。森ヶ崎バス停は東京労災病院の前にあります。本数の多寡を問わなければ森ヶ崎から大森駅、蒲田駅、川崎駅までバスで直行できるのだからすごい便利なところです。

森ヶ崎公園(写真)に来ると羽田空港がすぐそばです。空港が沖合に移転する前は相当うるさかったのでしょう。
森ヶ崎公園の隣にある大田区立大森第一中学校は廊下側にあまり窓がない校舎の作りになっています。
森ヶ崎公園の芝生の緑が目に鮮やかです。

森ヶ崎から川崎駅まで羽田京急バスに乗り帰ります。こうゆう影の薄い系統は乗っておかないとひっそりと知らぬ間に廃止されたりするので意図して乗っておかないと後で悔やむことになります。
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トラックバック受付再開します

2007年05月21日 16時30分21秒 | 鉄掲示板
ただし、また迷惑トラックバックが多数来るようなら予告なしに停止します。
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長谷川茜を描く

2007年05月20日 16時35分53秒 | 上月佑奈
今日は拙著 古墳少女シリーズに登場する長谷川茜ちゃんが銅矛を構える姿の絵を描きました。
本人が見たらきっと
「うれしいですのぉ~」
と言って喜ぶであろう出来映えです。

銅矛というのはまだ未発表の古墳少女 佑奈5に登場する弥生時代の魔神具です。
その銅矛が長谷川茜ちゃんにどうかかわるのかはまだ内緒です。
古墳少女 佑奈5は近日公開の予定です。
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市民ミュージアムに川崎市バスで

2007年05月16日 21時17分03秒 | 写真カメラ
今日はリニューアル後初めて川崎市民ミュージアムにゆきました。
昭和ブギウギ展は古いテレビや地下街アゼリアができる前の川崎駅前の様子に古きよき昭和の時代をしのぶことができて懐かしかったです。

常設展では埴輪や古墳時代の土器をスケッチしてきました。多少はリニューアルしたようです。

その後下作延で横穴墓を見付け写真に撮り、
天平時代の創建の 影向寺(ようごうじ)に参拝。法隆寺 夢殿のような形の聖徳太子堂を拝観しました。影向寺バス停近くの道端に石膏の裸婦立像が腰のあたりでばっきり折れ捨ててあるのを見付け裸婦の彫刻の死体遺棄事件だと思いました。
川崎市バスで川崎区に戻り西水江を往復して打ち止めとしました。

いやぁ今日は川崎市バスを一日乗車券で16回も乗りました。一乗車200円で一日乗車券は400円だから実に発売額の8倍も乗ったわけです。川崎市バスはsuicaに一日乗車券を記憶させるから料金箱にタッチするだけで乗ることができます。
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東京駅で転落

2007年05月15日 10時36分10秒 | 鉄道バス
まったくおバカな人が一人いるせいで電車が止まって大勢の人が迷惑する。
何を死に急いでいたのかは知らないが、朝の混雑時に電車を止めないでほしい。
駅の間で缶詰になった客が非常用ドアコックを空けて線路に降りようものならさらなる遅延の拡大となる。
また、これがすべてのホームにドアをつけろなどという筋違いな論議にならなければよいが。

東京駅ホームを走って転落死亡、京浜東北線16万人に影響(読売新聞) - goo ニュース
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pasmoの誤算

2007年05月14日 12時25分54秒 | 鉄道バス
pasmo発売停止から1ヶ月がたったけれどこれは手痛い誤算だったね。
SFカードとしてはsuicaがあるから不便はないけれど、非鉄な人はsuicaかpasmoどちらか1枚しかもたないだろうから、一度suicaに逃げた客は戻ってこないぞ。

パスモ販売制限1カ月 予想外の人気、波紋(産経新聞) - goo ニュース
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