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そして今日も選挙戦~チャド・コモロ・ジプチ

2016-04-11 07:30:29 | アフリカ情勢
毎週のようにお知らせしているアフリカの選挙事情。選挙イヤーのアフリカから目が離せない。

今週お伝えすべき選挙事情はチャド、コモロ、そしてジプチだろう。


まずはチャド。9日、投票所を守る治安当局や、砂漠の遊牧民を対象に期日前投票が開始された。
(RFIウェブサイトより)

(遊牧民の場合、不在者投票というのだろうか、という疑問はさておき。笑)


周囲をリビア、ニジェール、ナイジェリア、中央アフリカ、スーダンなどに囲まれ、独立以来戦争と政争。そして独裁。不幸の歴史を刻んだ。

現代ではサヘル情勢、アフリカ治安情勢の影響を直撃する。サヘルの対テロでは3,000人規模のチャド兵が動員され、中央アフリカミッションにも派兵。北にはリビアのフェザーンと対峙、南にはナイジェリアのボコラハラムが迫る。治安対策。対テロ。思い通りに進まない石油生産。改善を見ない国民生活、格差。


そんな中、4月10日に行われた投票。13人が立候補しているが、事実上は26年目の現職イドリス・デビ大統領が再選に挑む、いや、現職再選がすでに既定路線とされている。デビ大統領はテロに対する断固とした戦い、畜産セクター振興のための鉄道敷設。そして南部の新空港建設といった、派手な大型インフラプロジェクトを公約に掲げる。


対する主要野党候補は揃って変革を訴える。「イドリス・デビの26年間に何が変わっただろうか?」「デビがいなければ国が持たないというのだろうか?彼のあとは、1,200万人の国民がその責務を引き継ごうではないか。」ガバナンスや行政機構の改革を訴える。

ジャメナを中心に病院や行政機関、裁判所などなどでストライキ、デモが相次ぎ、ウネリとなりつつある。「国の社会サービス政策はほとんど機能していない。国民の医療費控除も、病院への補助金も、機材も、人員の補充も、全くない。生活も苦しい。こんなことでは患者の命を守れない。」


国連は選挙に関係するすべての関係者に冷静な行動を呼びかけた。国連事務総長中央アフリカ特別代表のアブドゥライ・バチリー(※ンボテ注: セネガルでは著名な歴史家、政治家でもある)は、「選挙が平穏に実施され、チャドの民主主義が強化されるステップになることを期待している。そして歴史が過去に戻るのではなく、前に進むことを。」


下馬評を覆し、チャドに新しい歴史が訪れるシナリオは1ミリでも残っているのだろうか。今その結果を知っているのは投票箱だけである。



もう一つの選挙はコモロ連合(Union des Comores)。インド洋に浮かぶ小さな群島。グランコモロ、アンジュアン、モヘリの主な三つの島に暮らす人口は78万人。残念ながらこの国、独立以来、政変が繰り返されてきた。

同じ群島をなすマイヨットは仏領、つまりフランスの海外県・領土に位置付けられる。1975年の独立の際、住民投票で運命が分かれた。コモロは今でもマイヨットの領有を主張している。

このコモロでも4月10日(日)に、イキリル・ドイニン大統領の後継を選出する決選投票が行われる。

コモロの選挙は少しユニークだ。 2001年の新憲法採択以降はグランコモロ、アンジュアン、モヘリの各島から順番に大統領を選出する。選挙ははじめ大統領を選出することになっている島で行われ、のちに決選投票が全国規模で実施される。

今回はグランコモロ島から選出される番。すでに2月21日に予備選挙が行われた。決選投票にコマを進めたのは三人。現職副大統領のモハメド・アリ・スワリヒ候補、元大統領のアザリ・アスマニ候補、グランコモロ島知事、ムイニ・バラカ候補だ。予備選挙は「だんご」、つまり僅差で決選投票になだれ込む形。

争点は国民生活。特にあまりにひどい生活道路、医療サービスへのアクセス、教育。そしてなりより電気だ。アフリカの選挙では投票日の前日は通常選挙活動が禁止される、「熟慮の日」(journée de réfléchir)とされる。有権者の中からは「投票すべき候補は見定めた。しかし本当に民意が反映される選挙なのか、疑わしい。」といった声も聞かれる(RFIラジオニュースインタビュー聞き取り)。予備選挙では開票にもたつきがあった。候補者と独立選挙管理委員会は、滞りない投票に協力することで紳士協定を結んだ。

ベイ・サラーム(Beït-Salam、大統領宮)の椅子には誰がつくのか。未来の大統領には国民の生活がかかっている。


最後にちょっと振り返っておくべきは、ジプチ大統領選挙。アデン湾を望む小さな島。南にソマリア、北にエリトリア、西にエチオピア、そして沖にはイエメンと海賊。仏軍のパーマネントな基地が存在するほか、米軍、日本の自衛隊も作戦基地を置く。2016年2月には中国人民解放軍も展開を発表した。人口90万人の小さな島は国は、あまりに地政学的に濃密なコンテクストを有している。

そんな中で4月8日に行われた大統領選挙。2010年の憲法改正で任期制限を撤廃、かわりに75歳定年制が導入された。これにより、17年目を迎えていた現職イスマイール・オマール・ゲレ大統領が再選出馬可能となったのだ。

そして規定通りの選挙戦、結果は「サプライズなし」。
ゲレ大統領が86,68% の得票。一回目の投票で第四期目の当選を果たした。

フランス国際ラジオ放送(RFI)の記事では、ゲレ大統領の得票率があまりに高く、投票所によっては現職への投票が100%と「ソ連的スコアを記録した」と表現している。ジプチの人権団体は、投票所ベースで散見された不審な動きを告発する。


ゲレ大統領再選がデフォルトであった選挙戦。明日も何にごともなかったように日常が継続するのだろう。

(おわり)

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