Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

出発

2008年06月20日 | 
 関空の航空会社のラウンジで、パソコンをLANケーブルに接続して、飛行機に乗り込む直前まで仕事のメールの返事を書くのは、もう日常のことである。しばらくメールが読めないというのは嬉しい反面、たまに開いたときには恐怖感すらある。次に開けるのは明日の午後か明後日だろうが、いったいどれだけ返事を書かなくてはならないメールがはいっているだろうと思うとすでに胸が苦しくなる。なんだかメールに食い殺されそうだ。
 ラウンジの私のすぐ隣ではバリに向かう4人連れの壮年の方々が、行ったことのない、想像力で膨らんだバリの話に花が咲く。
「南国やで。花が咲き乱れておるよ。バリの南国の音楽はガムランやで。楽しもうな。」
 ぼくもこのグループと同じところに向かうのだが、たった今旅立ってきた那覇は梅雨も明けて「南国やで。花も咲き乱れておるよ。」といった具合にガムランが伝統音楽として存在していないことを除けば変わらないのである。とはいえ、大学では週2回もガムランを教えている私には、沖縄でもガムランに浸かっているわけだし、バリと変わらない生活である。そんなことを考えながら、ラウンジの外を見る。土砂降りの中、大きなB747が目の前に見える。梅雨の真っ只中の大阪。こんな気候の土地から出発すればやはり南国バリはやっぱり憧れの土地だろうな・・・。

私の好きな場所(神保町編)

2008年06月20日 | 
 神保町といえば、言わずと知れた「古書店街」である。世界にも類を見ない古書店の密集する街だそうだ。私の好きな場所も当然「古書」がたんまりある場所であるが、期間限定で一般客が入場できる「東京古書会館」である。正確には神田小川町にあるこの建物は普段は古書のセリが行われている場所で、古書籍商の登録をしていない我々は入館できないが、週末など二、三日にわたって行われる古書展には入場制限はない。入口で手荷物やカバンを預ければ、あとは出入り自由である。
 先週の日曜日はちょうど「第91回新宿古書展」の初日で、会館を覗く。昔は古くて壊れそうな建物だったが、数年前に新しいビルに建て直され、それまで2階で行われていた古書展は地下階に様変わりした。なんだかあまりにもきれいな場所なのでデパートの古書展のような雰囲気を感じるが、いやいやどうして、ここに来る人たちはかなりの古書マニアに限られる。デパートの古書展だと家族連れや女性も多いが、まず古書会館の古書展はほとんどが男性で、しかも「おじさん」「おじいさん」に限られる。しかも眼光鋭く、まるで人食いシャークのような眼差しで並べられた本の中の獲物を睨み付けるように探していくのである。客の冷静な観察をしているようだが、会場に入ったとたん私もそうしたシャークの一匹と化しているのだ。
 先週の日曜日の古書展もいつもと変わらぬ雰囲気だったが、本当に珍しく高校生くらいの男の子が一生懸命本を探している。探し方はベテランのおじさん達に比べればまだまだ様になってはいないが、それでも本が相当に好きなのは見てとれる。そんな男性を見ているうち、自分もあんな年から古書展に通っているのかと思うとおかしくなった。あれから30年近く、ぼくはこうして同じように神保町の古書展の本棚の前に立っている。これだけ長い間、通い続けられる場所というのは、やはり私が好きな場所だからなのだろう。