Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

学会の魔力

2008年06月01日 | 
 大学院生だった頃、ある著名な学者がわれわれ学生にこういったことを今でも覚えている。
「学会の全国大会にはぜひ行った方がいい。そしてできるならばぜひ発表しなさい。ただ、せいぜい15分程度の発表なのですから、自分のどんな研究をしているかを他の先生たちに知ってもらう場所だと思ってください。学会は勉強したり、研究したりする場というよりも、人脈を作る場です。」
学会発表なんていうと、きわめてアカデミックな響きがしたものだが、「人脈作り」なんて生臭い話になって、私は少々がっかりした記憶がある。
 今、学者になってみて、そういう考え方が学会参加にあることは否定しない。若い研究者たちはパーティーで自分の名刺や抜刷りをもって、大先輩の先生方に挨拶をする光景なんて珍しくはない。また発表するのも確かに自分の「宣伝」になることは疑いない。当然、その発表が優れた内容であればの話であるが・・・。(とんでもない発表であれば、それはそれで「宣伝」になるだろう。)
 しかし私は自分の学生には、以前私が聞かされた理由とは別の理由から学会にいくことを勧めるだろう。学会は「刺激の場」である。さまざまな見方、さまざまな理論がその発表の中に溢れている。研究フィールドが同じである必要などはまったくない。自分の学ぶ大学では刺激にも限界がある。だからこそ学会に行かなくてはならないのだ。私はこの二日間で、大盛りの刺激を受けて、今はもう一分でも早く、研究室の椅子に座って文献に向かい合いたい願望に溢れている。私にとって学会は、人脈よりは、学問的知識の源泉である。そして学者である間は、この先もずっとそうでありたいと思っている。