詩集「2N世代」

詩作品、短編、評論、エッセイ他: Blogタイトルと内容がこの数年異なってきた。タイトルを変えたほうがいいかもしれない。

L'oiseau Invisible (見えない鳥の存在)

2008年10月02日 06時31分19秒 | その他の詩作品

とんがり帽子被った赤い鳥
私の部屋で飛んでいる
羽根は はてしなく長くて
部屋中 パタパタと
私はいつも その羽根のどこかで
眠っている
見えない鳥 見えない鳥の存在

三角マスクしたピンクの鳥
私の心で飛んでいる
羽根は はてしなく汚れて
心の中 パタパタと
私はいつも その羽根のどこかで
傷をかくしている
見えない鳥 見えない鳥の存在

サングラスかけた青い鳥
私の海を飛んでいる
羽根は はてしなく濡れて
海面 パタパタと
私はいつも その羽根のどこかで
叫んでいる
見えない鳥 見えない鳥の存在

・・・・・・・・・・・・

参照: 童話「希望の鳥


おじいさんの帰省日

2008年09月30日 15時01分03秒 | その他の詩作品

そこにいるのは誰?
おや 死んだ おじいさん
こんなに深い闇 夜の海で
一体地球のどの深さまで
こうして一緒に沈んでいくの
船底を打つ手は何を語る?
おじいさんの帰省日は 一体いつなの

そこにいるのは誰?
おや 死んだ おばあさん
こんなに熱い釜 火攻めの中で
一体恥骨のどの成分まで
灰になって風化しちゃうの
熱いと叫ぶ黒い煙よ
おばあさんの帰省日は一体いつなの

そこにいるのは誰
おや 死んだ おとうさん
こんなに焼けた草 夏の真昼に
一体太陽はどんな気持ちで
こうして死者に微笑みかけるの
ブンブン飛び交うハエの無心さ
お父さんの帰省日は一体いつなの

そこにいるのは誰
おや 死んだ お母さん
こんなに長い読経 きたない空気
一体この世の何が見たくて
こうして首を引き伸ばしたの
開いた目は何かを知ってる
お母さんの帰省日は一体いつなの

そこにいるのは誰
おや 死んだ お兄さん
こんなに青い空 輝く雲よ
一体大気のどの遠さから
こうして赤い血がしたたるの
両手で被った耳はじゅくじゅく
お兄さんの帰省日は一体いつなの

そこにいるのは誰
おや 死んだ お姉さん
こんなにぶあつい日記 独り善がりの
一体車のどの部分を
こうして両手で愛撫してたの
ガラスが食い込み避けた内臓
お姉さんの帰省日は一体いつなの

そこにいるのは誰
おや 死んだ 弟
こんなにふやけた胃 意識も無く
一体誤解の何本の矢に
こうして射られた背中をさらすの
血を流す植物食べた
弟の帰省日は一体いつなの

そこにいるのは誰
おや 死んだ 妹
こんなに匂う身体 夜の冷気に
一体宇宙のどんな果てで
こうし凍えて割れて散ったの
白骨が星に照らされ
妹の帰省日は一体いつなの


よろこびの難破船

2008年09月28日 17時51分54秒 | その他の詩作品

夜 吸いすぎの煙草
 彼女 あるいは彼
夜 舌に染みる薬
 空っぽの胃袋
夜 さよなら 痛む心
 暗闇 そして 荒野
夜 見果てぬ夢
 内気に笑う嵐

夜 かたすみの手紙
 彼女 あるいは彼
夜 耳元の叫び
 空っぽの記憶
夜 争そい 寂びた部屋
 海鳴り そして 妄想
 夜 脈打つ酒
 血迷ったパイプオルガン

夜 動かない顔
 彼女 あるいは彼
夜 静寂の灯
 空っぽのおんな
夜 旅立ち 閉じた窓
 脱帽 そして 葬列
夜 わらべうた
 崖走る無人自動車

(1973年7月20日発行 詩誌「ふらん」第8号 収録)


嫌われようの歌

2008年09月28日 13時36分31秒 | その他の詩作品

1.親戚の人から嫌われよう
  しらばっくれて嫌われよう
  もう付き合いはごめんだって
  追われるように去っていこう
  石投げられて去っていこう
  人っ子一人の仮姿
  心も口もかたく閉ざして

2.学友達から嫌われよう
  目障りだって嫌われよう
  言いくるめられないニクラシサ
  イビラレながら去っていこう
  砂かけられて去っていこう
  人っ子一人の仮姿
  サラバサラバと手を振りながら

3.近所の人から嫌われよう
  仏頂面で嫌われよう
  破廉恥だって陰口言われ
  白い眼向けられ去っていこう
  嘲笑浴びて去っていこう
  人っ子一人の仮姿
  ビールのみのみ生地を捨てる

4.親兄弟から嫌われよう
  不幸の種と嫌われよう
  すべての平和をかく乱させて
  居場所を失し去っていこう
  綱渡りして去っていこう
  人っ子一人の仮姿
  捨て犬のような明日に向かって

5.仰げば尊しに嫌われよう
  期待はずれと嫌われよう
  人生の悲しみあたりに散らし
  ニガミ味わい去っていこう
  ドラマ演じて去っていこう
  人っ子一人の仮姿
  考えながら笑っていこう

6.恋人達に嫌われよう
  オニチクショウと嫌われよう
  楽しい日々もさらさら忘れ
  さよなら言わずに去っていこう
  真心捨てて去っていこう
人っ子一人の仮姿

  冷たい風に胸膨らませ

7.古い友に嫌われよう
  見損なったと嫌われよう
  ああそうですかとウインクなどして
  怒り浴び浴び去っていこう
  不吉な予感で去っていこう
  人っ子一人の仮姿 
  あきれ返って嬉しがろう


今、帰ってきたんだ

2008年09月26日 12時53分11秒 | その他の詩作品

ちょっと違うんだ 光って見えるんだ
俺の家
何て言ってドアを開けよう
埃を払って 足を洗って
このリュックをどこに置こうか
あー俺は
長い旅から 今 帰ってきたんだ

ちょっと違うんだ ここは何処だろう
俺の街
あの角は魚屋だったよ
追い剥ぎにあい 砂漠で伸びたよ
集めた星は胸の中だよ
あー俺は
遠い国から 今 帰ってきたんだ

ちょっと違うんだ 若いじゃないか
俺の友
忘れてないよ みんな元気か
ヒッチもしたし 仕事もしたさ
けれどいつも貧しかったさ
あー俺は
広い海から 今 帰ってきたんだ

ちょっと違うんだここはここだよ
俺の国
微笑がこぼれてくるんだ
これじゃ暑いが あれじゃ寒いよ
このパスポート風に飛ばせて
あー俺は
高い空から 今 帰ってきたんだ

ちょっと違うんだ 緊張するんだ
俺の部屋
どんな感じで 椅子に座ろうか
古いポスター ああこの匂い
昔の俺があそこに居るよ
あー俺は
深い夢から 今 帰ってきたんだ