今年10月31日(月)からいよいよ羽田発着のANAのニューヨークJFK便が就航した。これまで片道2時間以上かけて成田まで行かなければならなかったが、羽田だと我が家からタクシーで30分ほどで行けるようになった。これは便利!早速3日の朝10時20分羽田発便でJFKに向けて飛び立った。羽田便は離陸直後に東京の街を見渡すことができる。ちょうど天気も快晴。日本を代表する霊峰富士山を背景に広がる首都東京。なんとも贅沢な景色だ。成田便だと離陸後すぐに鹿島灘から太平洋に出るので東京の街を見下ろすことはない。
ところで、離陸直後の機内からのまさにこの景観、実は江戸時代の浮世絵師も描いているのだ。もちろん当時飛行機などないし、東京スカイツリーもない、ドローンによる空中撮影もない時代。どうやってこの鳥瞰図を描いたのか不思議だ。おそらく江戸の地図と、何箇所かの高台から展望した街の風景を、想像たくましく、頭の中で合成して描いたのだろう。江戸城、寛永寺、隅田川、永代橋、浅草、高輪、品川など、デフォルメして描かれているものの、仔細に再現している。それにしてもこうして現代の東京上空からの写真と両方を並べてみると、驚くほど正確に描かれていることに驚かされる。200年の時間を超えたデジャヴを覚える。
羽田離陸直後の東京・富士山展望 |
「大江戸鳥瞰図」作:鍬形蕙林(くわがたけいりん) 東京都立図書館蔵 |
東京都立図書館東京誌料より引用:
この鳥瞰図の作者・蕙林は鍬形蕙斎(くわがたけいさい)の孫にあたる人物です。蕙斎は浮世絵師から津山藩(岡山県)のお抱え絵師になったというめずらしい経歴を持ち、鳥瞰図を得意としていました。蕙斎は「大江戸鳥瞰図」や「江戸一目図屏風」といった江戸の鳥瞰図を多く残していますが、蕙林が描いたこの図も、祖父の影響を色濃く受けたものと言えるでしょう。
鳥瞰図とは、鳥が空から地表を見たように描いた図のことです。このような描き方が流行したのは、遠近法が取り入れられるようになった江戸時代後期以降のことです。
注:鍬形蕙斎(くわがたけいさい)は江戸中期(1764−1824)の浮世絵師。