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時空トラベラー THE TIME TRAVELER'S PHOTO ESSAY

歴史の現場を巡る旅 旅のお供はいつも電脳写真機

マイナー観光施設の超メジャーな存在感 〜熱川バナナワニ園をご存知ですか?〜

2016年10月15日 | 伊豆散策

 

バナナと...

 

 

 伊豆にある熱川バナナワニ園をご存知でしょうか?。子どもの頃行ったことがある。伊豆観光のポスターで見たことがある。伊豆急で熱川駅を通った時に看板見たとか、知ってるけどそれほどの話題性のある観光施設というわけではなさそうだ。昭和33年開業。伊豆では結構老舗の観光施設だ。伊豆熱川駅を降りるとすぐ目の前にある。今では熱川といえば、バナナワニ園というくらいのメジャーな存在なのだが、逆に一大観光地、伊豆半島的視点で見るとある意味マイナーな存在なのだ。しかも、「なんでバナナとワニなんだ?」とか、「バナナにもワニにも惹かれ無い」とか、ネーミングが「なんでやねん」感渦巻く動植物園なのだ。

 

 私も伊豆には隠れ家を持つというご縁ができて久しいが、伊豆に来て真っ先に行ってみたい、というイメージはなかった。伊豆は海と山という両方の自然に溢れ、なにより豊かな温泉があちこちにある。下田や修善寺、松崎のような歴史の香り豊かな街もある。大型のレジャー施設もある。ということで有名どころに行きつくしていよいよ他に行くとこ無いか、雨が降っても傘なしで濡れずに時間つぶせるところとしての最後の選択肢的なであった。駅前というアクセス至便の観光施設であるのだが。

 

 しかし、このマイナーなどと自分勝手に考えていた熱川バナナワニ園が、実は知る人ぞ知るすごい実力を持った動植物園であったことをつい最近知った。そもそも観光施設であることは間違い無いのだが、レジャーランド的視点だけでメジャーとかマイナーとかカテゴライズしては、その存在感と実力を見落としてしまう。「ホントは凄い熱川バナナワニ園!」。改めて探訪してみた。なんでも無知、無関心と偏見というものは恐ろしいものだと痛感させられた。

 

 私も全く不勉強であったが、ここは実はワニの人工繁殖や飼育では世界的に有名な施設なのである。世界中には約30種類のワニがいるそうだが、そのうち15種類140頭がここでは飼育されている。その質量で世界でもトップクラスなのだそう。しかもワニの人工孵化を成功させた先駆的な動物園なのだ。またフィリピンワニなどの絶滅危惧種の保護に力を入れており、しっかり種をつないでいるなどの成果を上げている。野生のワニの保護区はアメリカのフロリダなどにもあるが、温帯モンスーン地帯である日本の伊豆の熱川でで人工的に飼育しているケースは珍しいのである。

 

 またこの施設の名前には一切出てこ無いが、レッサーパンダの繁殖、飼育施設としても有名なのだそうだ!ネパールレッサーパンダ(ニシレッサーパンダ)が飼育されている日本で唯一の動物園。しかも17頭も飼育、繁殖されている動物園は世界的に見てもないそうだ。アメリカのワシントン動物園から交配繁殖用に貸し出されたのが始まりで、今ではオーストラリアや香港など世界中の動物園と交配プロジェクトを実施しており、稀少種の保存、繁殖では世界的に権威のある施設なのだ。そのほかにも、世界に4頭しか飼われていないというマナティーもいる。

 

 植物園の方も、本命の(?)バナナもさることながら、数々の美しい珍しい熱帯性植物、マジックフルーツなどの果樹(もちろんバナナも!)、洋ラン、食虫植物、オオオニバスなどのコレクションがまた素晴らしすぎる。私が「バナナワニ園で」最も惹かれるのはこの大きな温室に覆われた秘密の花園だ。特に素晴らしいのが熱帯性スイレン。カラフルで珍しいスイレンのコレクションは圧巻!本園に8棟の温室、分園に6棟の大型温室が展開されており、ここに約9000種の植物が生育されている。これだけでも貴重な植物園だ。イギリスでは大英帝国時代に世界中から珍しい植物を集めるプラントハンターがいて、郊外の貴族の館に行くとイングリッシュガーデンと共に大きな温室が設けられているのを見かける。もちろん王室のキューガーデンがその究極のコレクションを誇ってるわけだが、いまやここ熱川バナナワニ園は、熱帯系が中心とはいえ日本のプラントハンターコレクションの宝庫だと言っても過言ではないだろう。よくここまで収集、生育したものだ。

 

 さて、最初の疑問、「なぜバナナとワニなのか?」

そもそもは創設者が「バナナ園」を開業したのが始まりだった。昭和33年当時まだバナナは高級な果物で、病気のお見舞いなどの頂き物くらいでしか口に入らなかった時代だ。しかし、なぜか「バナナ園コンセプト」はあまりパッとせず、「もう少しなにか客寄せできるものは無いか」と悩んでいた。ある時知り合いから南方から持ち帰ったワニを預かってくれ無いかと持ちかけられ、それがきっかけでひっそりと敷地の一部にワニ園を併設したところ、これが珍しがられて次々に飼育頭数が増え、とうとう世界でも稀有なワニ園に成長したのだそうだ。何が運を呼び寄せてくるかわから無い話だ。やっぱりバナナとワニの組み合わせには必然性はなかったんだ。

 

 レッサーパンダの方は、商業的な目的で飼育し始めたわけではなく、世界的なパンダ保護団体から声がかかり、ワシントン動物園から種の保護と繁殖を引き受けたのが始まり。ワニの人工繁殖と飼育で世界的な名声を勝ち得たために、それじゃレッサーパンダも!ということであったようだ。これもレッサーパンダとワニとバナナの組み合わせには必然性はないのだが、いまやレンサーパンダはここの人気スターにのし上がっている。瓢箪から駒。しかし地道にやっていると、誰かが何処かで見ていて評価してくれるという、なかなか含蓄のある話では無いか。

 

 前述のような「バナナにもワニにも惹かれ無い」という反応については、正直言って、私は今もそれほどワニには惹かれてはいない。しかし、この美しい熱帯性植物のパラダイスは大好きだし、何よりもその背後にあるこうしたアナザーストーリーに大いに惹かれてしまった。ここで飼育と繁殖に当たっている飼育員の方々は本当のプロなのだと知ることができた。そして希少動物の保護と繁殖に貢献する専門家集団であることを遅まきながら知った。いままでのレスペクトに欠ける観光客的な無関心/無知をお許しいただきたい。

 

 嗚呼「熱川バナナワニ園」恐るべし!気づけばローカルにワールドクラスの施設があった。別にPRを頼まれた訳ではないが一見の価値ありだ。子どもの頃連れて行かれてワニが怖かった人も、バナナアイスクリーム食べたことしか覚えて無い人も、それ以来、大人になってから一回も足を運んだことが無い人も、是非新たな視点で再訪してみるのも良いかもしれない。熱川バナナワニ園。この「なんでやねん」ネーミングは、今や希少種の保護と繁殖に貢献するZoological Gardenを象徴する名前として世界に知られるまでになった。ある意味、日本が誇るもう一つのブランドになっているのかもしれない。

 

ワニ...

 

そしてレッサーパンダ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


伊豆下田 ~ペリーロードはアジサイの季節~

2016年05月25日 | 伊豆散策

保育園の子供達が歩くペリーロードはアジサイの季節を迎える

 

 

 伊豆下田では恒例の黒船祭が開催された。今年は第77回、例年より少し遅い20~22日の開催となった。国際色豊かなパレード、コンサート、踊りや、祭で町中が賑わっている。公式パレードはペリー提督上陸ポイントを出発するが、この静かで情緒あふれるペリーロードを迂回して、賑わう商店街の方向へと進んで行く。したがって祭りの最中もこの辺りは比較的落ち着いた雰囲気を保っている。ペリーロードの背後にある下田公園の山はアジサイが満開になると見事だが、これはもう少し先の6月に入ってから。しかし、色付き始めたまだ若い楚々としたアジサイはこの古い街並みに似合う。もっとも下田が下田らしい季節だと思う。

 

 このペリーロード、もちろん昔からそう呼ばれていたわけではない。1854年ペリー提督率いる米国海軍東インド艦隊が下田條約を締結するために寄港。上陸地点の下田湾頭(現在はペリーポイントとして記念碑が建つ)から、調印式の行われた了仙寺まで隊列を組んで行進した800メートルほどの道で、ペリー提督にちなんでそのように呼ばれている訳だ。当時のIllustrated London Newsや、ペリーの「日本遠征記」に挿入されているハイネの画を見ると、いまの了仙寺やペリーロード界隈の町の佇まいがほとんど違っていないのに驚く。時空の扉に閉じ込められた地区だ。明治になってこの川沿いの街は花街として栄えた。今でも残る江戸末期から大正期に建てられた伊豆石や海鼠塀の遊郭、置屋、商家、蔵などの建物が、今はカフェやギャラリー、レストランなどになっている。川にかかる石橋、川沿いのガス灯、柳、アジサイと共に独特の情緒ある町並みを形成している。下田の観光スポットではあるが、小さな通りなのであまり観光地ズレせずに済んでいるのが不思議なくらいだ。多層な歴史を積み重ねたこうした地区を残してゆかねばと思う。

 

ペリー提督に同行した画家ハイネの描いた了仙寺界隈

今のペリーロードあたりの風景

 

以前のブログ:

最初の開港場 伊豆下田 ~ペリー提督が歩いた街

  

 

大正期に建てられた古民家はカフェになっている。

風通しのためちょうど窓を開け放った時、花瓶の花が輝いた

 

 

 

 

 

 

下田公園から市街地を下田富士を望む。

本格的アジサイの季節はこれから