時空トラベラー THE TIME TRAVELER'S PHOTO ESSAY

歴史の現場を巡る旅 旅のお供はいつも電脳写真機

Fujifilm X-E1デビュー ーコモディティー商材よさらばー

2012年12月02日 | 時空トラベラーの「写真機」談義
 待望のFujifilm X-E1が発売となり、予約一番でゲットすることが出来た。これは、前評判通りなかなかいいカメラだ。X-Pro1が画期的な製品であるだけに、その弟分で、より入手しやすい中級カメラ、という位置付けなのだが、むしろX-Pro1をブラッシュアップした優秀なハイエンド機種だと思う。最近のカメラはソフトウエアーで新たな機能の追加、高度化が出来る。X-Pro1で改良した部分は全てこのX-E1に反映されているし、ハードウェア部分も良く手が入れられていてより使いやすい道具に進化している。

 X-Pro1との大きな違いは、富士フィルム独自の光学/電子ハイブリッドファインダー(OVF+EVF)を省略し、代わりに、EVFに特化した点くらいだ。しかし、この有機EL電子ファインダーのクリアーな見えはX-Pro1のそれよりも格段に進化している。とうとう電子式ファインダーも実用的な品質に到達したなあ,と感じさせる。また視度補正が可能となった事も嬉しい。あとは、1/2、1秒の低速シャッタースピードが省略されているが、AFの合焦スピードがアップした。そういえば,内蔵ストロボがついている。基本、アベイラブルライト撮影の私には不要なものだが。この辺が中級機らしい。

 しかし、ハイブリッドファインダーを廃した分だけボディーサイズが一回り小さくなり、X100と同じくらいのサイズになった。これは私的には大歓迎だ。X-Pro1を見た時の第一印象は「デカイ!」であったから、X-E1でちょうど手になじむ最適サイズになったわけだ。マウントアダプターでライカのズミクロンやズミルクスを装着すると、ちょうど良いバランスとなる。これにハンドグリップを装着すれば、軽快だが精悍でホールドのよいマシンになる。道具は見た目のバランスも大事だ。ボディーカラーはシルバーメタリックが追加された、これはこれでライカぽくっていいが、今回はX-Pro1との組み合わせで使う事を考え、黒にした。少しマット気味の黒で気に入っている。

 同時に発売された、Xシリーズ初のズームレンズは16-55mm(28-80mm相当)f.2.8-4のフジノンスーパーEBCコーティングASPHレンズだ。画角はかなり保守的な範囲に留めているが、けっして安価なセットレンズ仕様ではない。性能的にはかなり信頼に足るレンズだ。富士フィルムはXシリーズのレンズラインアップを高品位な単焦点レンズから始めただけに、どんなズームを出してくるのか楽しみだったが、これはその期待を裏切らない出来だ。特に歪曲収差がほとんど感じられなくて、解像度も抜群。単焦点レンズに匹敵すると思う。このレンズには手振れ補正機能が搭載されている。富士フィルムのレンズは昔からプロ仕様で妥協が無いが、このXシリーズにかける意欲が感じられる仕上がりだ。ズームリングの回転はまた適度なトルクがあって、嬉しくなってしまう。最近のミラーレスのプラスチッキーで、スカスカ、ゴリゴリの回転鏡胴にはガクッと来るが、こういう所の造りの良さは、道具にこだわる人間の撮影気分に大きな影響を与える。

 しかも,感動的なのは、X-Pro1のOVF光学ファインダーモードでも、ちゃんとブライトフレームがズームにより変わる事だ。しかも、AF 時のフォーカスポイントのパララックス補正が出来る。さらに合焦部分は色が変わり示してくれるので、光学ファインダーでAFを使用してもピンぼけが発生しない(これはX-Pro1ボディー側のファームウエアーをバージョンアップする必要があるが、簡単にできる。)。これはスゴイ!いやあ日本人って凄いな!ハイブリッドファインダーがお金のかかった技術者のギミックでない事を証明している。これじゃあ,さしものライカの光学レンジファインダーも、さすがに時代遅れと言わざるを得ないだろう。歴史的に見れば、ついにライカのレンジファインダーを追いこしたのだ。

 レンズは、なるほどフィルムメーカーのレンズで、解像度、よく補正された収差はもちろん、色再現、色乗りが素晴らしい。少なくとも私はホホズリしたくなるほど好きだ。特にお得意のフィルムシミュレーションモードでは、いつもVelviaを選ぶ。フィルム時代からの私のお気に入りのVelviaがデジタルカメラでも選択出来るだけで嬉しい。風景写真ではこれだ。今年の秋の紅葉写真も,鮮やかさが良く再現され、気分よく京都,奈良を駆け巡ることが出来た。

 富士フィルムのXシリーズは、コモディティー化しがちなデジタルカメラの領域に,ハイエンドのニコン一眼レフ等とはひと味違う付加価値の高い商品群を提示した,という点でも画期的だ。ライカMが年明けに市場にリリースされるが、既にこれを遥かに上回る機能と道具としての出来ばえを備えたハイエンドカメラシステムが世界市場にデビューした訳だ。これは日本のモノ作りのあるべき姿を示す象徴的な出来事であり、素晴らしい事だと思う。日本もドイツもこれからはクオリティー重視の高付加価値製品で競争し、世界を二分する国になって行くだろう。安いだけなら,製造コストの安い新興国が強いに決まっている。

 これからは汎用化された技術の商品で、価格勝負するゲームからは抜け出さねばならない。デジカメがスマホに押されて、特にコンデジの売れ行きが頭打ちになっている。これは、アセンブルさえできれば誰でも創れる、安価でローエンドの商品で勝負するのではなくて、高品質で、イノベーティブな技術、高いブランドイメージで勝負する、ハイエンド商材で戦うべきだ,という事を示している。Xシリーズのカメラについている「Made in Japan」の刻印がそれを物語っている。

Fujifilmxe1
 
 X-E1+Zoom Lens 16-55mm。正面から見るとファインダー窓が無いので,ライカMメディカルや、バルナックライカIGを彷彿とさせるルックスだ。シルバーメタリックもよいが、やはりマット調のブラックペイントを選択。

Img21

 ライカマウントアダプターを使うと、新旧のライカレンズ資産が使える。純正アダプターを使えば、周辺光量、歪曲の補正設定が出来るほか、マニュアルフォーカスエイドも効果的に機能し、ある面でライカ本体よりも使い勝手がよい。銀鏡胴の沈銅ズミクロンにはシルバーボディーが似合うなあ。

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 (X-E1にライカマウントダプター経由でAPO SUMMICRON 75mmで撮影。ズミクロンを使って、EVFで露出補正結果を確認しながら撮影出来る喜び!)

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 (X-E1にライカマウントアダプター経由でAPO SUMMICRON 75mmで撮影。AFだと合焦しにくいこのような場面でも、MFで迷い無くピントを追うことが出来る。35ミリ換算で110mmとなる。)

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 (X-Pro1に新しいZoom 16-55mm装着で撮影。逆光でもフレアーが少なく、きれいなのはフジノンレンズとEBCコーティングのおかげ。フレーミングもEVFはもちろん、OVFでもブライトフレームが画角に応じて動く優れもの。)








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