院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

EBM(証拠に基づく医療)

2011-11-07 00:49:48 | Weblog
 鉄道員がよく「指差し点呼」のようなことをしている。指を差して「○○よしっ!」というアレだ。

 この動作の名称は、鉄道会社によって違っており、JRでは「指差し喚呼」と呼ぶ。「指差し確認呼唱」と呼ぶ鉄道会社もある。

 鉄道会社としては、むろん安全のためにやっている。しかしながら、本当に安全に役に立っているのかは、科学的には立証されていない。

 つまり、やらないよりも、やったほうが安全だろうという推測でもって、長年やられてきているのである。そう、あくまでも「推測」なのだ。

 同様の「推測」は医療でも行われている。傷口はばい菌が付くから赤チンで消毒してから乾かしたほうが安全だろうと、昔は「推測」されており、一般人のみならず医者もそうした。

 ところが最近の研究では、「赤チン消毒は意味なし」、「傷口は乾かしてはいけない」と「推測」されるようになった。傷口は洗うだけでよく、漿液で濡れたままのほうが自然の理にかなっていて治りも早いという。

 医療は経験だけでは駄目で、科学的に(効くか効かないか)立証しなくてはいけない、という厳密な一派が台頭してきた。彼らが掲げる立場をEBM(Evidence Based Medicine ・証拠に基づく医療)という。

 彼らがもっとも信頼するのはRCT(Randamized Controled Trial ・無作為抽出試験)である。

 上の「指差し喚呼」が本当に科学的に安全かを語るためには、RCTを行わなくてはならない。つまり、「指差し喚呼」する群としない群に分けて、どちらの群が統計的に有意に安全かを確かめなくてはならない。

 そんなこと実際にはできっこない。医療の分野でも「実際にはRCTができない」医療手技も実は多いのである。