ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

会席料理

2018年12月17日 | なごやか

 喫茶店アルファヴィルのアルバイトのIさんは夫の前任地で食育の資格を取得するなど、食に関して好奇心旺盛の女性だ。

そんな彼女は最近会席料理に興味があるとかで、どこかで美味しいそれが食べられないかと尋ねられた私は、二人してなごやか理事長に相談してみることにした。

理事長からは県都S市に値段は手頃で内装が面白いお店があるので行ってみたら、と早速教えてもらったのだが、なにせ私たちはフツーの主婦なので気後れして、結局理事長の出張に合わせて公休を取り、厚かましくも無理やりエスコートしてもらうことになった。

 買い物客で賑わうアーケード街から小路を入ってすぐの大きなビルの一階に、そのお店があった。重厚な木製の自動扉が開くと、私たちは驚きの声を上げた。

ビルのワンフロアの中に、数寄屋造りの建物がすっぽりと入っている。池も、庭も、植木もある。

理事長が予約を入れていたので、スムーズに席に通されたのだが、ここは大小の個室になっていて、さらに洋室のテーブル席や座敷、和室の掘りごたつなど、さまざまな種類があるのだそう。あとで探検してくるといい、まるでセットのようだから。理事長が笑いながら言った。

 会席料理は分量も配膳のタイミングもちょうどよく、おいしかった。仲居さんが障子を開けて料理を持ってくるたび、場慣れしていない私はどぎまぎした。

Iさんは和紙に印刷されたおしながきをしげしげと見ながら、出てくる一品一品すべてしっかり写真に収め、胡椒の粒ひとつまで器用に箸でつまみ上げて食べた。食べ終えるとそのつど器も撮影した。

理事長はというと、もう僕は年だからあまり食べられないんだ、とコースを頼まず、野菜のてんぷらや豆腐などをつまみにノンアルコールビールを飲んでいる。

狭くも広くもない空間の中でゆったりと食事がとれて、またIさんは好奇心が満たされて、私たちは大満足だった。

 会計も席で済ませるシステムだったのだが、理事長はお釣りを受け取ると、コースを通して給仕してくれた年配の仲居さんにすばやく心付けを渡した。

私たちはまた目を丸くした。

 

コメント
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