猫のキキとヒゲおじさんのあんじゃあない毎日

『あんじゃあない』って、心配ない、大丈夫っていう群馬の言葉、いい歳こいたキキとおヒゲのどうってことない前橋の暮らしです

岩村暢子さんの『残念和食にもワケがある』を読みながら、時代の変容に取り残され『和食』を作ってました

2018-02-06 07:06:12 | あんじゃあない毎日

一汁三菜の食事です。2月4日のわが家の夕食なんです。
汁は大根、人参、ウド、ネギ、椎茸、豚ばら肉の細切りで作った塩味の沢煮椀です。
菜は、左から焼椎茸と大和芋のおろし、豚肉とウドと舞茸の煮物、そして金時草とトマトのポン酢和えです。
私の家では、昨秋に逝った伯母さんを迎えて一緒に暮らした8年前からはこんなんが標準的な夕食の形なんです。

でも、こういう食事をしている家庭が今の日本では極めて少なくなってしまっているという衝撃的な事実を知らされました。

   昨日の朝食後は前日にJAファーマーズで手に入れた聖護院大根で豚バラ大根を煮ていました。

  それから、凍りついた広瀬川の溜り水を見ながら橋を渡って、ユキ子さんの両親の家へご用をしに行きました。空には、寒気に伴う雲が北西から流れ込んできていました。
ご用をすませて戻ってから本を読んでいました。

土曜日に紀伊国屋書店で手に入れた本なんです。2日かけて読み切ったんです。すごい本です。
著者の岩村さんが20年かけて調べた413世帯の食卓、1万5611枚の食卓写真を収集・分析しして、日本の家庭の食卓の変容とその背景を明らかにしているとんでもない労作なんです。
食べ物だけでなく、使われる食器や家族の食事の様子まで、その変容を描いています。それは、私にとって、迂闊にも未知の世界でした。

 流水の止められた馬場川の中では作業員が岸に生えたイタドリの枯れ枝を刈り取っていました。

「食事は私たちと必ず一緒にしてください。同じものを召し上がっていただきます」
8年前、一緒に暮らすことになった伯母さんに私がお願いしたことです。一緒に同じものを食べることによって、直接的なつながりのない伯母さんとも家族になれると思ったんです。

 水の流れていない馬場川は寒々しいです。

「朝食は8時です。お部屋にお届けしませんから8時までにこちらへ来てください」
伯母さん最初のうちは戸惑っていました。長い独り暮らし、時間が来たら食事をするなんてことはなかったんです。独りですから、気ままだったんです。
でも、2〜3ヶ月で慣れてくれました。声をかけなくても、8時前に食堂に来てお茶を召し上がってくれるようになったんです。

 朝食は、みそ汁と白いご飯、それと煮物を中心とした常備菜の盛り合わせと納豆です。常備菜は週替わりで工夫しますけど、それでも一週間ほどは同じおかずが続くんです。
心疾患のために減塩食でしたから、味噌は長野県のタケヤ味噌製の塩分58%カットの減塩味噌、醤油は長崎県のチョーコー製の塩分50%カットの減塩醤油を取り寄せて使いました。とても優れた減塩調味料です。
野菜をたくさん入れた具だくさんのみそ汁を食べてもらいたい、朝ごはんだからってんで、こども用のお椀を用意してまで食べていただきました。

 隆興寺の梅です。きれいに咲いています。

岩村さんの調査結果と、自分がしてきたことの隔たりが、あまりにあまりに大きいので愕然となりました。
食事を一緒にしない、みそ汁ない、煮ものもない、和えものなんかもっとないというのです。それに、お椀がない、箸もない、一寸法師が御姫様のところへたどり着けなくなってしまっているんです。

 変容の主なワケは、『個食』にあるといいます。好きなものを好きな時間に好きなだけ食べる、『個』の好みや満足が家族という単位での食事を成立させなくなっているというのです。

 銀座通りで暮らしているこの黒猫はとても良く鳴く猫です。出会う時、いつでも声を出し続けています。『個』の主張を続ける『個猫』かもしれません。

この著作に掲載されている調査対象の食卓写真やインタビューの転載は禁じられていますのでお目にかけられません。まえがきの一部だけ、写真で引用させていただきます。
ものすごく共感しています。大事なのは食事を通してつくられてきた日本の文化なのだと思います。失うことも、失わないことも、その両方をきちんと考えることだと思うんです。文化変容を取り戻すことには、大きな困難を伴います。

 

 時代の変容から取り残された男が作った昨夜の夕食です。
椀は、豆腐に椎茸とホウレンソウの餡かけです。椎茸をたくさんいただいたので、前日からぜいたくに使わせていただいています。

  左は、豚バラ大根とブロッコリーとトマトの胡麻酢添えです。聖護院だいこん口の中でほどけてしまいました。おいしいです。
右は、ウドと金時草のポン酢和え、それと椎茸のチーズ焼きです。おいしい椎茸、ごちそうさまでした。

私は時代遅れなんですね。お椀と箸は、好みの津軽塗を使っています。手にした時の心地よさを失いたくありません。
岩村暢子さんの『残念和食にもワケがある 写真で見るニッポンの食卓の今』(中央公論新社刊)、ぜひ読んで欲しいです。

 

 直派若柳流の若柳糸駒ことユキ子でございます。
祖母の初代若柳吉駒、そして伯母の二代目吉駒の下で修業して参りました。
初代吉駒が始めた美登利会は、来春で75回目の節目を迎えます。予定通り、4月8日に開催いたします。
亡くなりました二代目吉駒の遺志と教えをしっかり守って、一生懸命つとめてまいりますので、これからも引き続きよろしくお引き立ていただきますようお願い申し上げます。

今春の第74回美登利会の舞台の様子はコチラでご覧になれますす
お稽古場は前橋市城東町四丁目です。詳しくはコチラをご覧ください

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2 コメント

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本を予約しました (もんもん)
2018-02-06 15:58:53
ご紹介の本が前橋市立図書館にあったので予約をしました。
ブログでヒゲおじさんが作られたお料理を拝見するたびに、いつも何てすばらしい食事なのでしょうと思っていました。
わたしも30年前に買った塗りのお椀を愛用しています。もうボロボロで漆を塗り直してもらえばいいのでしょうけど、持った時のぬくもりと口当たりの良さに、修理に出している間、毎日使えなくなるのはいやだなあと思ってしまい、ついそのままで使っています。
早く本を読みたいです。
食事 (ヒゲクマ)
2018-02-07 08:30:40
もんもんさん
家族の食事って難しいものだと思います。
私の家族は私と別なサブカルチャーに属してくらしています。だから、別々であるしかなく、無理な統合はできません。折り合いのつく範囲で「家族」するしかないのです。
私は、それを「食事」というものに求めたんです。だから大事にしています。
「家族」が「ごっこ」でなく、「文か」であってほしいと思っています。

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