坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ジュリー・ヘファナン 古代的構想に現代のビジョン

2011年02月12日 | 展覧会
一見、古代神話画と見間違う壮大なシチュエーション。イリノイ州生まれのジュリー・ヘファナン(1956年~)は、アメリカで複数の美術館に収蔵されるアーティストの一人ですが、今回プレスリリースを頂き、驚きの作品に出合ったという感じです。古代的舞台空間と言える森林と水辺の前にいろんなポーズをとる群衆のかたまりが。中央に立つ人物は家族でしょうか。彼女の作品はすべてセルフポートレイトと名付けられているようですが、自身の記憶の断片が重なっているのかもしれません。
そして私たちの眼をひきつけるのは、その古典的手法の完成度の高さの技術と緻密な細部表現の現代性です。
ボッシュを思わせるような構成で、ジェットコースターと天空の巣のファンタジー豊かな作品など、新作7,8点が会場に並びます。日本では初めての大きな展覧会になるのではないでしょうか。現代の生と死を象徴するワンダーランドに迷い込んだような世界観が魅力です。

◆ジュリー・ヘファナン展/2月22日~3月19日/MEGUMI OGITA GALLERY(銀座2丁目)
 Tel 03-3428-3405