坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

MOTアニュアル2011 原初の感覚

2011年02月10日 | 展覧会
マルセル・デュシャンを始めとするダダイズムは、既成の芸術の枠組みを打破し、表現媒体を拡大していきました。そして夢と交錯する幻想世界のシュルレアリスム、ポロックら抽象表現主義へと受け継がれていくのです。
現在のバーチャルな世界観において、ネオポップなどアニメやオタクアートが一つの路線をつくりあげていますが、東京都現代美術館で毎年この時期に開催される本展では、日本の若手アーティストに焦点をあて、現代という切り口を多様な表現でわれわれの知覚に問いかけます。
今年で11回目となる本展では、30代を中心に6作家が選定され個展形式のゆったりとした空間で見せてくれます。
池内晶子さんは、掲載画像では赤い線の集積のように見えますが、絹糸を空間に張り巡らしたインスタレーション(固定的ではない空間の設置方法)で、人の気配で絹糸は揺れたりその形は水の流れのように繊細です。ボールペン画による抽象的な独特の光沢感をつくりだす椛田ちひろさん。ガラス、水、紙などを使って光と闇を映し出すインスタレーション作品の木藤純子さん。スーパーボールや鉛筆など日常目にする物質を使って、その整然とした集積と新たな組み換えにより私たちの感覚を刺激します。関根直子さんは、鉛筆、水彩により原初的な描くことの根本を問いかけます。サウンドパフォーマンスを繰り広げる八木良太さんなど、参加型のアートも楽しめそうです。よりシンプルな素材と表現形式で原初的ともいえる私たちの感覚に訴えかけます。

◆MOTアニュアル2011/2月26日~5月8日/東京都現代美術館