坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

フランス現代美術の最前線 フレンチ・ウィンドウ展

2011年02月05日 | 展覧会
17世紀から20世紀初頭にかけてのフランス美術の流れを辿るプーシキン美術館展が4月初めから横浜美術館で始まりますが、現代のフランス美術はどのような動向を見せているのでしょうか。近代美術史を彩ってきたフランス、戦後美術を牽引してきたアメリカというふうにモダニズムの歴史の流れは築かれてきましたが、現代のグローバリズムの時代にあって、それぞれの国固有の美術のスタイルは見えにくくなっています。
本展は、フランス最大のコレクターの団体ADIAFが、2000年に設立したデュシャン賞のグランプリ受賞作品を主体に展覧されます。このデュシャン賞は、国籍や年齢に関係なくフランス在住作家が対象で、20世紀はじめに起こった、それまでの芸術の規範を打ち破るダダイズムの主要作家であるマルセル・デュシャンを顕彰するものでもあります。彼は「レディメイド」として男性の便器を逆さまに展示するなど、既成品と芸術品との違いは何なのかという概念を提言し、アートをリセットすることを投げかけました。
同時代のアートは刻々と変化する社会の鏡であり、個々がどのように社会に向き合っているか、写真や立体、インスタレーションなどさまざまな表現媒体によって展開されます。そこにはきっと私たちの感性と響き合うものが見えてくるはずです。

◆フレンチ・ウィンドウ展/3月18日~7月3日/森美術館(六本木)