坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

本格的なシュルレアリスム展開催

2011年02月08日 | 展覧会
精神の最大の自由、夢の全能を掲げたシュルレアリスム(超現実主義)は、20世紀初頭、パリで詩人のアンドレ・ブルトンが提唱し、20世紀の新たな潮流を生み出しました。明日から開催される本展では、当時のブルトン関連の書物なども展示され、文学や映画などにも広く影響を与えた美術運動であったことを示します。
逆に、フロイトの精神分析学を絵画にビジュアルに応用し、現実から倒錯したさまざまなビジョンは、現実と夢の交錯、二重にも三重にもイメージの窓が交差します。現代においてもちょっとシュールな歪曲化された具象表現は、一つの絵画表現の分野として人気がありますが、理性では測れない無意識の領域への興味は尽きないものがあります。
内覧会の様子の一部で(ちょっとショットが悪くてすみません)、最初のダダイズムのアーティスト、マン・レイやマルセル・デュシャンなどの作品が展覧されている部屋です。中央に見えるのが、デュシャンの「瓶掛け」(1914年)。日常の既成品に少し手を加えて作品化した手法です。ポンピドゥセンター・パリ国立近代美術館副館長のディディエ・オッタンジェ氏が来日し、シュルレアリスムに先駆けるダダイズムを含む40年間の最大の美術運動と話すように、本展は、ダリ、マグリット、エルンスト、デ・キリコ、ミロなどを含め幅広い活動を展覧。絵画、彫刻、オブジェ、素描、写真、映画などの作品約170点により資料的にも一石を投じる内容と展覧でした。

◆シュルレアリスム展/2月9日~5月9日/国立新美術館(六本木)