坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

静物との長い対話 ジョルジョ・モランディ

2011年02月06日 | 展覧会
いつも見慣れたアトリエの一隅。卓上の器物を静謐な空間に描いたジョルジョ・モランディ(1890~1964)は、日本でもファンの多い画家の一人です。もうだいぶ前になりますが、東京都庭園美術館(白金)で開かれた回顧展でも、アールヌーボーの建築空間と白やオーカーの濃淡を主体としたモランディの作調はしっとりとしたハーモニーを奏でていました。
イタリア、ボローニャ生まれの画家は、デ・キリコなどの形而上的絵画から絵画の深淵を学ぶ一方で、現実に、そして自己の身近なものに目を注いでいきます。花瓶やカップやボトルなどが単体でもしくは、幾つか組み合わされたバリエーションで描かれていますが、そこに一貫するものは、簡潔なフォルムと色彩の和音とも言うべき低音の響き合いです。
緻密に描かれたリアリズムの手法ではなく、磁器の肌理を下塗りから重ねて築かれるマチエール(絵の具の肌合い)で再現していきます。
モチーフは花瓶に活けられた花から造花へと移行していきます。そこには対象との長い対話により深まっていく空間にしみ入る光の実在を追い求める画家の姿勢が表れているようです。この展覧会では、モランディ作品が80点、関連作家作品20点が展覧されます。

◆ジョルジョ・モランディ/4月9日~5月29日/豊田市美術館(愛知県)他