坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

彫刻家エル・アナツイのアフリカ展

2011年02月01日 | 展覧会
現代アフリカを代表するエル・アナツイ(1944年~、ナイジェリア在住)の大規模な回顧展が神奈川県立近代美術館葉山で開催されます。現代の国際展では、ヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタ。また国内では横浜トリエンナーレにおいても、先進主要国以外のアジアや中近東、アフリカ出身のアーティストの展覧が増えてきました。これまでマイノリティとして土俗的なアート、民族的な特質が強調されやすい傾向にありましたが、現在ではアートの最前線として未知の世界を開示しています。
アフリカの風土は、歴史的に近代美術の確立にピカソやマティスをはじめとするヨーロッパの多くの画家たちに影響を与えてきましたが、同時代的な問題意識を内在したエル・アナツイの作品は、国際展でも高く評価をされています。
・掲載作品「重力と恩寵」2010年 横幅11メートル以上にも及ぶ巨大なタペストリーのインスタレーション作品です。このような巨大なスケールの存在感もアナツイの魅力です。
2000年頃より、ワインやアルコール類のボトルの廃材キャップを銅線でつないで編み上げた「メタル・タペストリー」が代表的な作品です。見る角度や光の具合によって変容していく様子が見どころです。廃材ということで高度文明社会へのメッセージとも受け取れますが、スケール感と繊細なイリュージョンが混在しています。

◆彫刻家エル・アナツイのアフリカ展/2月5日~3月27日/神奈川県立近代美術館葉山