坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

グランヴィルの可愛い、不思議世界

2011年02月02日 | 展覧会
私的なコレクションから生まれた史実的にも価値のある展覧会。フランス文学者であり、ジャンルを問わない執筆活動でエッセイ賞なども受賞されている鹿島茂さんは、膨大な古書コレクションでも知られています。
練馬区立美術館では、そのコレクションの連続開催を実現。その第一回目は、19世紀前半にパリで活躍した版画家、J.J.グランヴィル(1803~47)を取り上げます。鳥獣戯画などは日本の絵巻などでもよく知られていますが、『動物たちの公私にわたる生活の情景』などの人獣戯画作品では、猫がパリの当時の貴婦人のファッションを着ていたりと、不思議の国のアリスを連想させるような可愛い作品が並びます。印象派のモネも初期には政治風刺画(カリカチュア)を描いて腕を磨きましたが、グランヴィルもユーモアのある戯画の才能を発揮しました。ナンシー派のエミール・ガレやシュルレアリズムにも影響を与えたということで、美術史的にも興味深い内容となっています。

◆鹿島茂コレクション1 グランヴィル19世紀フランス幻想版画/2月23日~4月3日/練馬区立美術館
 Tel 03-3577-1821