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ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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オミクロンの逆説

2022-02-09 16:18:54 | 時事



新型コロナ第六波が、深刻さを増しつつあります。

新規感染者数はいくらか鈍化の兆しも見えますが、まだまだ予断を許さない状況でしょう。

ところで、先月コロナ関連記事を書いた際に、ワクチンには逆効果となる部分もあるのではないかということを書きましたが……この点に関して、元F1ドライバーの中林香さんが興味深いツイートをしておられたので、今回はそれを紹介しようと思います。

中林香さんは、ツイッターでしばしば政治・社会に関する意見を述べておられる方です。
現在はドイツ在住で、ドイツにおける新型コロナの状況についても発信されているんですが……
その中林さんによると、ドイツの新型コロナ対策はワクチンに偏重していて、ワクチン登場以降、マスク着用や社会的距離といった基本的な感染症対策が軽視されるようになっているといいます。
そのことが、毎日20万人以上の新規感染と150人近くの死者を出す要因になっていると中林さんはみています。

これが、まさに私が以前の記事で書いたことです。

ここに表れているのは、つまり「致死率が低いからこそ多くの死者を出す」という逆説です。

致死率の高い感染症ならば、それが発生している場所にいる人々は徹底した予防策を講じるし、感染・発症した人はあまり感染を広げない(死んでしまう率が高い、あるいは重症で動き回れなくなる、など)……といったことがあるわけですが、致死率が低いとそうはならず、感染がどんどん拡大していく。結果として、率が低くとも母数が大きいために、最終的な死者数ははるかに多くなってしまう。

そして、ワクチンはむしろそのパラドックスをより深刻なものにする作用をもってしまうかもしれない……ということが問題になってきます。

なまじワクチンというものがあるがために、無症状の感染者が増える、あるいは、「ワクチンを打ったから大丈夫」と活発に行動する人が増える、これまでとられていた種々の感染予防策が軽視されるようになる。その効果が、ワクチンがウィルスに対して持つ作用を相殺、あるいは凌駕してしまうとしたら……

実際、日本においても、第六波は過去最悪の被害をもたらしつつあります。

新規感染者数が異次元のレベルというだけでなく、死者数も、とうとう事実上過去最多を更新しました(数字の上で過去最高となっている昨年5月18日の数字は、神戸市が一か月半分の死者数をまとめて計上したぶんが含まれている)。

ワクチンだけではパンデミックを克服することはできない……当初からいわれていたことですが、少なくとも「だけでは」という部分はもう事実によって証明されているといっていいでしょう。ワクチンは、希望の光であるとしても、救世主ではないのです。

いま一度、中林さんのツイートを紹介しましょう。


隔離と初期治療は感染症対策の基本です。どんなものごとも、まず基本に忠実であること、目的が明確であることが大事だと思います。個人では防ぎきれませんので。


ワクチン頼みでは、感染拡大を抑えることができません。
やはり、基本が大事ということじゃないでしょうか。



ヘイトスピーチ私論

2022-02-06 22:32:13 | 時事



最近、ヘイトスピーチということについて考えさせられるニュースが立て続けにありました。

一つは、橋下徹氏が、立憲民主党の菅直人元総理のツイートにかみついた件。
菅元総理が橋下氏について「弁舌の巧みさでは政権を取った当時のヒトラーを思い起こす」とつぶやいたのに対し、ヒトラーになぞらえるのはヘイトスピーチだという批判が起こりました。

もう一つは、石原慎太郎氏の死去に際し、生前の彼の言動に対する批判が「ヘイトスピーチ」だというものです。

どちらも、これが“ヘイトスピーチ”なのかといわれると首をかしげずにいられません。
石原慎太郎氏に関しては、どう考えてもヘイトスピーチとは言えないでしょう。橋下氏の件に関しては、菅元総理の当該ツイートには「主張は別として」という前置きがあり、そもそもヒトラーの思想的な部分を引き合いに出して批判しているという話ではなく……また、過去に多くの人が似たようなことをいっていたという指摘も出ていて(そのなかには石原慎太郎氏もふくまれる)、なぜ今回の件だけがこんなに騒がれるのかという話にもなっています。

私の結論としては、どちらのケースもヘイトスピーチとはいえません。

このような態度は、ヘイトスピーチという概念を自分に都合のいいように換骨奪胎しているというばかりでなく、日頃それにさらされている人達が受ける苦痛を矮小化しかねないという二重の意味で悪質です。


国連の定義によれば、ヘイトスピーチとは「宗教、民族、国籍、人種、肌の色、家系、性、その他のアイデンティティの要素に基づき、個人や団体を軽蔑または差別的な表現で攻撃する言動、記述、ふるまい」です。

その定義で本当にいいのかという点に関しては議論の余地があるとしても、ではヘイトスピーチの定義をどんどん拡大していけばそれだけ社会がやさしく寛容になるかといえば、そうでもないでしょう。むしろそれは、本来あってしかるべき批判を封じる手段ともなりかねない。最近の事例は、その危険を示しているように私には思われます。


ここで、私なりに、ヘイトスピーチがそうでないかという一つの判断基準を提示するならば――
それは、「お前は○○だ」とか「○○のくせに」といわれたときに「○○で何が悪い」と言い返せるかどうかということです。ヘイトスピーチならば、そう言い返せるはずです。

たとえば、日本人がヨーロッパのどこかの国にでも行って「日本人のくせに」といわれたとする。「日本人で何が悪い」と堂々と言い返せばいいわけです。それは、ヘイトスピーチだからです。
「黒人のくせに」「在日コリアンのくせに」「ムスリムのくせに」「女のくせに」……あらゆるヘイトスピーチに、これはあてはまるでしょう。なぜなら、ヘイトスピーチとは本来咎められるいわれのないことを咎めだてようとしているからです。
しかし、「お前はまるでヒトラーのようだ」といわれたときに「ヒトラーで何が悪い」とは言いにくいでしょう。それは、この言説がヘイトスピーチではないからです。

ここで論理をさらに発展させると……「ヒトラーを想起させる」といわれてそれをヘイトスピーチだというのは、「ヒトラーで何が悪い」といっているのに等しいということになります。先の国連の定義に従えば、「ヒトラーを想起させる」ことを自分のアイデンティティとして認めたことになるわけで……

まあ、それはともかくとして……先述したように、今回の件はヘイトスピーチという概念を悪用して批判的な言説を封じようという意図が感じられ、みていてあまり気分のいいものではありませんでした。
批判とヘイトは別物であり、社会をまともに維持していくためには批判は必要です。このことは、何度でも強調しておかなければならないと思います。




ビートルズの日 カバー特集

2022-02-04 16:09:25 | 日記

本日2月4日は、「ビートルズの日」です。

ビートルズの異名 Fab 4 と Feb 4 をかけて……誰が決めたかは知りませんが、とにかくそうなんです。

ということで、今日はビートルズ特集。
ビートルズの曲をカバーしたものを集めてみました。意外な大物も登場……



まず一曲目は、ジョー・コッカーによる With a Little Help from My Friends。
名盤として名高い『サージェント・ペパーズ』に収録されているこの曲は、ジョー・コッカーにとっての出世作ともなりました。

Joe Cocker - With A Little Help From My Friends (Live)


エルヴィス・プレスリーによる Something。
エルヴィスにとりあげられて、ジョージ・ハリスンも本望でしょう。

Elvis Presley - Something (Aloha From Hawaii, Live in Honolulu, 1973)


カエターノ・ヴェローゾによる Eleanor Rigby。
ブラジルの軍事独裁政権と戦ったこの人物のことは、これまで何度か書いてきました。この曲の解釈も、すばらしい。

Eleanor Rigby


ピーター・フランプトンによる「ノルウェイの森」。
村上春樹さんの小説『ノルウェイの森』のタイトルは、いうまでもなくここからとられています。

Peter Frampton Covers the Beatles’ “Norwegian Wood” on the Stern Show (2016)



ここから、女性ボーカルのものを二曲。

まず、ノラ・ジョーンズによる Let It Be。
ノラ・ジョーンズ自身が鍵盤を弾き、シックでおしゃれなアレンジになっています。

Norah Jones - Let It Be (Live At The Empire State Building)

次に、スージー&ザ・バンシーズによる Helter Skelter。

Helter Skelter

スジバンは、いろんなところでピストルズにもつながるパンクバンド。先のノラ・ジョーンズとはまったく対照的でなかなか大胆なアレンジですが、こんな雰囲気もよいと思います。ノラ・ジョーンズからスージー・スーまでカバーするというのが、ビートルズという森の広大さ、奥深さなんじゃないでしょうか。


ディープ・パープルによる Help。
意外な取り合わせですが、これはハードロック路線に転向する前の姿。そこはかとなくサイケデリック臭も漂わせます。この時代には、まだハードロックとかプログレッシブといったジャンルが未分化だったのです。

Deep Purple - Help (Live for TV, 1968)



アリス・クーパーによる「ヘイ・ブルドッグ」。
ビートルズの曲の中では、知る人ぞ知る名曲といえるでしょう。
ビートルズという森があるとしたら、かなり奥の方まで分け入っていかないとこの曲にはたどりつきません。
ただ、苦労してたどりついた甲斐あって、めちゃくちゃかっこいい曲です。
この曲を選んでカバーしたアリス・クーパーの慧眼もさることながら、バックにスティーヴ・ヴァイやダフ・マッケイガン、ミッキー・ディーといった人たちが集まってくるのもすごい。

Hey, Bulldog

ちなみに、これはビートルズの曲をおもにハード系の人達がカバーしたコンピレーション・アルバム。
ビートルズのいわゆる「ブッチャー・カバー」をイメージしたものでしょう。この「ヘイ・ブルドッグ」がそうであるように、なかなか豪華な面子が集まっているアルバムです。せっかくなので、このアルバムからもう二曲ほど紹介しましょう。

まず、リフがかっこいい Daytripper。
ここでは、元KISSで現グランド・ファンクのブルース・キューリックが参加。
ドラムは、エインズレー・ダンバー。この人のことは去年のドラマー列伝で紹介しました。ものすごい経歴の持ち主で硬軟どちらにも対応できますが、ここではハードに叩いてくれます。

Daytripper

そして、今が旬の「ドライブ・マイ・カー」。
この曲では、なんとイングヴェイが参加。

Drive My Car  


最後に、日本代表として斉藤和義さんによる Golden Slumbers。
伊坂幸太郎原作の同名映画で使われました。

Golden Slumbers




ジュンスカ、サブスク解禁

2022-02-01 21:21:03 | 日記


本日2月1日、JUN SKY WALKER(S)の全作品がサブスク解禁となりました。

ジュンスカについては、このブログで何度か書いてきました。
バンドブームの旗手も、サブスク解禁……隔世の感があります。

それにあわせてということなのか、Youtubeでもこれまで公開されていなかった作品がいくつか聴けるようになっていました。再結成後のものが対象となっているようですが、その中から「ロックンロール☆ミュージック」という曲を。

ロックンロール☆ミュージック

このサウンド、いかにも王道ロックンロールというアレンジ、そして歌詞……すべてが突き刺さってきます。


ついでにもう一曲、これは前から公開されていたものですが……
「虹」。
アニメ「トリコ」のエンディングだったそうです。

人気アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「虹」のPV(ショートver.)


いっぽう、ボーカル宮田和弥さんのチャンネルでは、ジュンスカの曲を弾き語りしている動画がいくつかアップされています。
そのなかから「さらば愛しき危険たちよ」を。
場所は、いま何かと話題の佐渡島です。

宮田和弥『さらば愛しき危険たちよ』佐渡島 大野亀

これは、私がジュンスカを知った曲でもあります。
まあ、そこから過去に発表した作品をたどっていって「START」とか有名な歌は聞いたことがあるなとなったんですが、JUN SKY WALKER(S) というバンドの曲ということを意識したうえで最初に聴いたのはこれでした。


最後にもう一曲、BOXER という歌を。

BOXER

タイトルを見て、サイモン&ガーファンクルの「ボクサー」とか、アリスの「チャンピオン」とかそういう感じかなと思ったんですが、まさにそのとおりの歌でした。
時が流れ、全盛期をすぎても、リングに立ち続ける……それはまさに、ジュンスカの姿そのものではないでしょうか。
ロックなんてもうはやらないのかもしれない。それでもロックし続ける。その姿勢が尊いのです。