類似した話として、『ジョニーは戦場へ行った』はどうか、という内容でした。
当該コメントへの返信でも書いた通り、私は恥ずかしながらこの作品を読んでおりません。
そのため、なにもいうことができないのでした……
しかしここで……無理やりロック的な方向に引きつけてみましょう。なにしろこのブログはロック探偵を看板にしてますからね。
登場するのは、このブログではたびたび名前が出てくるクラッシュです。
彼らの歌に English Civil War というのがあります。
邦題は、英語タイトルをそのままカタカナ表記したあとに、カッコ書きで(英国内乱)となっています。セカンドアルバム GIVE 'EM ENOUGH ROPE(邦題は『動乱(獣を野に放て)』) に収録されている曲です。
なぜこれがつながってくるかというと……実はこの歌、アメリカ南北戦争期の軍歌「ジョニーは戦場へ行った」をもとにしているんです。
南北戦争期に歌われていた歌というのは、その後ずっと歌い継がれているものが結構あります。たとえば以前このブログで紹介した共和国賛歌もその一つですね。
「ジョニーは戦場へ行った」も、そうした曲の一つ。共和国賛歌と同様に、メロディは非常に有名で、映画『博士の異常な愛情』など、多くの映画で使われていることでも知られます。ダダダダッダ、ダッダダッダ、ダーッダダー……というあれです。クラッシュの English Civil War は、これをパンク風にアレンジしたものなのです。
ただし、パッと聴いただけでは非常にわかりにくい。私の場合、初めて聞いたときから十年ぐらいかかってようやく気付きました。(さすがに鈍すぎか?)
元の曲は、共和国賛歌に比べると、いかにも“軍歌”という感じがしますね。
そのメロディーにジョー・ストラマーがつけた歌詞は、こんなふうにはじまります。
ジョニーがまた家に帰ってくる
バスか地下鉄でやってくる
ジョー・ストラマーは、イギリスで極右団体が伸長している状況に警鐘を鳴らす意味でこの歌を作ったそうです。
本当の脅威は、外国のことよりもむしろ国内で極右団体が台頭してくることなんじゃないか……そういう問題意識が、内乱を題材にした歌をもとにした背景にあるのでしょう。
問題は、国内にある。ジョニーは、そう遠く(国外)へは行っていない。だから、バスか地下鉄で帰ってくる、ということです。
小耳にはさんだところでは、ジョー・ストラマーの兄も、右翼団体の一つであるナショナルフロントに参加していたそうですが、そういう事情であればこそ、危機感もひとしおだったのだと思われます。
先日の記事では“反戦”というメッセージについて書きましたが、いま日本国内を見てみた時に、やっぱり本当の問題はそこじゃないのかもしれません。
あからさまな自民族優先主義や、排他的思想を鼓吹するような団体が闊歩している。そういう主張が公共の場で堂々と語られる。自分の身近にも、そういう人がいる……この状況が本当に問題なんじゃないのか。
「ジョニーは戦場へ行った」というタイトルから、私はそんなことを考えました。
《追記》
ただし、件の歌と小説は、邦題が一緒というだけで原題は違います。
歌の「ジョニーは戦場へ行った」は、When Johnny Comes Marching Home で、小説のほうは Johnny Got His Gun。私も今回調べてはじめて知りましたが、日本でも邦訳が出た当初は『ジョニーは銃をとった』という原題に忠実な邦題になっていたものの、映画のほうで『ジョニーは戦場へ行った』の邦題がつけられ、そっちがメジャーになったということのようです。