ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

ビートルズの日 2024

2024-02-04 20:17:12 | 日記


今日2月4日は、「ビートルズの日」。

ということで、例年どおりビートルズ記事です。

昨年は、ビートルズのファースト、セカンドアルバムが60周年だという話をしました。
その流れで行くと、今年は3、4枚目のアルバムがリリースされて60周年ということに。そこで、サードアルバム A Hard Day's Night を取り上げようと思います。

 

このアルバムは、ビートルズにとって一つの転換点といえるでしょう。
これまでのアルバムになかった大きな要素の一つは、自分たちが主演する映画をモチーフにしたアルバムであるということ……それだけビッグな存在になったということです。
発表当時の邦題は、映画とセットで『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』。タイトル曲の邦題もそれにあわせられました。古き良き時代の珍邦題といえるでしょう。そのセンスの良しあしはともかくとして、原題からはあまりに離れすぎています。それもあってか、今では『ハード・デイズ・ナイト』というあたりさわりのない邦題となっています。

もう一つ重要な点として、本作は、オリジナル曲のみで構成された最初のビートルズ作品でもあります。
それでいて、リンゴやジョージの作った曲はなく、すべての曲がレノン=マッカートニー作。これは、ビートルズのアルバムの中で本作のみです。このことは、4人の関係性がまだ安定したバランスになっていた時期を反映してもいるんじゃないでしょうか。

(※一応、注釈。ビートルズの曲でジョン・レノンとポール・マッカートニーしか制作に関与していない曲は、どちらか一人が単独で作った曲であっても「レノン=マッカートニー作」となっています。それらの曲は、後の研究で実際にはレノンあるいはマッカートニーが単独で作ったと明らかにされているものもあります)

以下、収録曲のいくつかの動画を載せます。
せっかくなので、ほかのアーティストによるカバーもまじえて。


タイトル曲。

The Beatles - A Hard Day's Night

この曲の冒頭に鳴らされるあのコードが何なのかというのは、長年議論の的となってきました。
こういうところに、のちのロックンロールを方向づけた実験性の片鱗が垣間見えていると解せるかもしれません。


「恋する二人」。
ビーチボーイズによるカバーで。

I Should Have Known Better (Party! Sessions Mix)


「エニイ・タイム・アット・オール」。
ブライアン・アダムスによるカバーで。

Bryan Adams - Anytime At All (live at Bush Hall)

個人的には、ビートルズ作品の中で隠れた名曲だと思ってます。
Any を使った肯定文の力強さで、「いつでも、どんなときでも、君は僕を呼べばいい、すぐに駆け付けるよ」という直球のラブソング。
直球ロックンローラーであるブライアン・アダムスが、実にしっくりくるように思えます。


シングルとしても発表された「キャント・バイ・ミー・ラブ」。
エラ・フィッツジェラルドによるカバーで。

Ella Fitzgerald "Can't Buy Me Love" (The Beatles Cover) on The Ed Sullivan Show

この曲はジャズ方面の人によくカバーされるといいますが、これもその一つでしょう。ポール曲であり、ポールの音楽的素養のゆえかもしれません。


最後に「家に帰れば」。
アルバム音源のバージョンで。

When I Get Home (Remastered 2009)

これが、アルバム制作において最後に録音された曲といいます。
これはジョン曲ですが、「家に帰れば」という歌の内容は、多忙な生活で妻を放置してしまっていることが反映されているという解釈もあります。
結局その妻シンシアとは後に離婚し、ヨーコさんと再婚。シンシアとの間に生まれた息子ジュリアンは名曲「ヘイ・ジュード」誕生のきっかけに……そこにいたる伏線といえるかもしれません。



概観してみると、アルバム全体としては、まだ実験性とか内省的な側面というのは、その片鱗を見せていたとしても、まだ前面に出てきてはいない感じでしょう。
そこは、私のいう第一世代ロックンロールの世界です。「恋する二人」をカバーするビーチボーイズも、同じ世界線に立っているようです。そこで使われる仮定法表現は、現実への違和感を表明するようなものではありません。
同じ64年に発表されたもう一枚のアルバム「ビートルズ・フォー・セール」も、そのあたりはあまり変わらないでしょう。
ロックンロール第二世代へむけてビートルズの音楽が変化を見せ始めるのは、ボブ・ディランとの出会いを経て翌年発表された「ヘルプ!」あたりからということになるのです。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。