珍しく、二日続けて音楽記事です。
昨日予告したとおり、今回は、古賀政男が主催した「広島平和音楽祭」ゆかりの歌を紹介します。
まあ、この前振りで、わかる人にはぴんときたことと思いますが……それは、かの美空ひばりが歌う「一本の鉛筆」です。
この歌は、1974年、広島平和音楽祭で美空ひばりが披露する曲として作られました。
本来は、主催者である古賀政男がみずから作曲するつもりだったようですが、体調面から断念。代わりに、佐藤勝が曲を書きました。
佐藤勝――この人は、これまでに何度かこのブログで名前が出てきました。
映画音楽でよく知られていて、昭和ゴジラシリーズ作品のいくつかでも音楽を手がけています。とりわけ『ゴジラ対メカゴジラ』におけるメカゴジラのテーマ音楽が印象的です。
その佐藤勝が、古賀政男の代役として作曲にあたりました。
平和音楽祭の総合演出をつとめていたのが映画監督の松山善三だったということで、映画人脈のつながりで打診したということでしょうか。作詞はその松山善三が担当し、「一本の鉛筆」は完成しました。
一本の鉛筆があれば
戦争はいやだと私は書く
と歌うこの曲は、まさに平和音楽祭にふさわしい歌といえるでしょう。
感覚としては、ピート・シーガーが作った「天使のハンマー」のような、ああいう感じです。あの歌の原題は
If I Had a Hammer
で、「もしも私に~があったら」という仮定法で歌われています。仮定法であることによって、その願いの切なることが実感される……「一本の鉛筆」も、そういうことでしょう。
一枚のザラ紙があれば
私は子供が欲しいと書く
一枚のザラ紙があれば
あなたをかえしてと私は書く
一本の鉛筆があれば
八月六日の朝と書く
一本の鉛筆があれば
人間のいのちと私は書く
美空ひばりは死去する一年前にもこの平和音楽祭に出演していて、本番前まで楽屋で点滴を打ってこの歌を歌い上げたというエピソードがあります。それだけ、彼女にとっても思い入れのある歌だったということでしょう。
その背景もふくめて、「一本の鉛筆」は昭和歌謡史に残る名曲なのです。
嬉しいです。
この曲は、4年前に祖母が亡くなる少し前に、
一緒にミカンを食べながら見ていたテレビで、不図流れた曲で、その時、久しぶりにテレビにくぎ付けになって聴きました。
祖母は「良い曲だね、良い曲だね」と言ってて
私もその気高さに圧倒されました。
今でもその時のことは祖母との貴重な思いでとして記憶に残っています。
何時聞いても本当に素晴らしい曲だと思います。
そんなエピソードがあったんですね……
おっしゃるとおり、時代、世代を超えて伝えられていく名曲だと、あらためて思いました。