むらぎものロココ

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ピアノなしだったってことは

2005-03-05 20:50:43 | jazz
トマス・ピンチョンの小説「エントロピー」では「デューク・ディ・アンジェリス・カルテット」の楽器なしのセッションが試みられるのだが、デュークがその新しい着想を得たのが、ジェリー・マリガンのピアノレス・カルテットからだった。

「……けど、ふっと思いついたのよ、頭のぐんと冴えたときにな、マリガンの最初のカルテットがピアノなしだったってことは一つのこと以外に意味するはずがないって。」
「和音なしってこと」とベビー・フェイスのコントラバス、パコが言った。
「彼が言おうとしているのは」とデューク――「基本和音がないってことさ。音を横に引っぱって吹いてるときに、頼りにするものが何もないってこと。そんな場合にやることは、基本和音を心の中で考えるってことだ。」
ぞっとする思いがミートボールの心の中に浮かんできた。「そうしてこれを論理的に延長していくと次は」と彼は言う。
「あらゆることを心の中でやってしまうこと」とデュークは飾りけのない威厳をもって告げた――「基本和音も、横に引っぱるのも、何もかも」

867GERRY MULLIGAN QUARTET
 
 
Chet Baker(tp) Gerry Mulligan(bs)
Bob Whitlock(b) Chico Hamilton(ds)

このカルテットのアルバムはチェット・ベイカーとジェリー・マリガンのホーン・アンサンブルが素晴らしい。1曲が短く、コンパクトになっていて、一切の無駄がない。

収録曲
1.BERNIE'S TUNE
2.WALKIN' SHOES
3.NIGHTS AT THE TURNTABLE
4.LULLABY OF THE LEAVES
5.FRENESI
6.FREEWAY
7.SOFT SHOE
8.AREN'T YOU GLAD YOU'RE YOU
9.I MAY BE WRONG
10.I'M BEGINNING TO SEE THE LIGHT
11.THE NEARNESS OF YOU
12.TEA FOR TWO
13.UTTER CAOS#1
14.LOVE ME OR LEAVE ME
15.JERU
16.DARN THAT DREAM
17.SWING HOUSE
18.UTTER CAOS#2