今年1月、山口県下関市でJR下関駅の駅舎が焼けた放火事件、放火の罪に問われている被告が事件前日に北九州市の福祉事務所の相談窓口を訪れていたことがわかった。
被告は「(出身地の)京都に帰りたい。お金はなくなった」と保護課で相談。話を聞いた職員は市の「行旅困窮者旅費」の取り決めに従い、隣接する自治体の役所までの交通費として、JR西小倉駅から下関駅までの回数券1枚と、下関駅から下関市役所までのバス賃190円を手渡した。
被告は同夜下関駅に降り立ち、「刑務所に戻る」ために放火したとされる。被告はその1週間前に刑務所を出ており、出所時は所内の労働で得た20万円を持っていたが、ほぼ1週間で使い果たしている。
上記の福祉事務所職員の対応に、福祉関係者からは「下関市に追い払ったようなもの」との指摘も出ているというが、問題はそんなに簡単ではない。
ここ最近、北九州市の生活保護に対する姿勢や対応が新聞などで批判を受けることが多かったことが、今回の事件を見えにくくしているように思われる。
今回の事件は、放火という犯罪で幕を閉じたことで、福祉事務所職員の対応がクローズアップされる結果となったが、本人の意思と市の制度の中で対応した結果であるため、それを批判することはできない。
問題は他の部分に多いように思われる。例えば、本人の性格の問題。刑務所を出た後の就労の問題。刑務所内での更正教育の問題。さまざまな問題が絡み合っていることを忘れてはならないだろう。
ホームレス対策でも同じことが言えるが、本人の意思・希望というのは何にも増して重みがある。相談を受けた職員が良かれと思っても、本人の意思が伴わなければどうしようもなく、板ばさみに悩むことも多い。
本人の意思を無視して対応すれば一定の問題は解決される反面、本人の心理に影を落とす危険性もある。一部からは「公務員の公権力の行使」「民事介入」という批判の声が上がる可能性もある。
公務員は制度・法律に則って対応している。むしろ制度・法律に則ってしか動くことができないとも言える。それゆえに、私たちの生活を守るためにさまざまな制度や法律が整備されてきているのである。堅実な(石橋を叩いて渡るような)対応が公務員の信頼につながっている側面もある。
しかし最近は、問題が複雑化していることもあり、制度・法律の枠内だけでは対応できないことが増えており、融通が利かない対応を非難されることも多くなっている。
『人に求めるか 制度に求めるか』
私たちの目の前にある課題である。制度や法律で対応しきれない問題の解決を、相談に対応した『人』に求めるのか、『制度』に求めるのか。人に求めれば、対応する人の裁量に大きく左右されることになり、安定さを欠くことになる。制度に求めれば、制度化されるまでに時間を要することになる。
結局は、人と制度のバランスの問題ではあるが、このような状況を認識しておく必要はあるだろう。
状況を踏まえずに、単に『人』を批判することだけは避けたい。
被告は「(出身地の)京都に帰りたい。お金はなくなった」と保護課で相談。話を聞いた職員は市の「行旅困窮者旅費」の取り決めに従い、隣接する自治体の役所までの交通費として、JR西小倉駅から下関駅までの回数券1枚と、下関駅から下関市役所までのバス賃190円を手渡した。
被告は同夜下関駅に降り立ち、「刑務所に戻る」ために放火したとされる。被告はその1週間前に刑務所を出ており、出所時は所内の労働で得た20万円を持っていたが、ほぼ1週間で使い果たしている。
上記の福祉事務所職員の対応に、福祉関係者からは「下関市に追い払ったようなもの」との指摘も出ているというが、問題はそんなに簡単ではない。
ここ最近、北九州市の生活保護に対する姿勢や対応が新聞などで批判を受けることが多かったことが、今回の事件を見えにくくしているように思われる。
今回の事件は、放火という犯罪で幕を閉じたことで、福祉事務所職員の対応がクローズアップされる結果となったが、本人の意思と市の制度の中で対応した結果であるため、それを批判することはできない。
問題は他の部分に多いように思われる。例えば、本人の性格の問題。刑務所を出た後の就労の問題。刑務所内での更正教育の問題。さまざまな問題が絡み合っていることを忘れてはならないだろう。
ホームレス対策でも同じことが言えるが、本人の意思・希望というのは何にも増して重みがある。相談を受けた職員が良かれと思っても、本人の意思が伴わなければどうしようもなく、板ばさみに悩むことも多い。
本人の意思を無視して対応すれば一定の問題は解決される反面、本人の心理に影を落とす危険性もある。一部からは「公務員の公権力の行使」「民事介入」という批判の声が上がる可能性もある。
公務員は制度・法律に則って対応している。むしろ制度・法律に則ってしか動くことができないとも言える。それゆえに、私たちの生活を守るためにさまざまな制度や法律が整備されてきているのである。堅実な(石橋を叩いて渡るような)対応が公務員の信頼につながっている側面もある。
しかし最近は、問題が複雑化していることもあり、制度・法律の枠内だけでは対応できないことが増えており、融通が利かない対応を非難されることも多くなっている。
『人に求めるか 制度に求めるか』
私たちの目の前にある課題である。制度や法律で対応しきれない問題の解決を、相談に対応した『人』に求めるのか、『制度』に求めるのか。人に求めれば、対応する人の裁量に大きく左右されることになり、安定さを欠くことになる。制度に求めれば、制度化されるまでに時間を要することになる。
結局は、人と制度のバランスの問題ではあるが、このような状況を認識しておく必要はあるだろう。
状況を踏まえずに、単に『人』を批判することだけは避けたい。