What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

市民後見人とは?

2005-12-23 15:17:08 | ノーマリゼーション
『市民後見人』という言葉が、少しずつ聞かれるようになってきた。東京都でも来年3月をめどに50人を養成するとしている。(asahi.com)
また、高齢者NGO連携協議会が主催で、同じ時期に全国規模で市民後見人を養成する講座が始まるという。
判断能力がなく、自ら法律的な契約行為がでない人をサポートする成年後見制度において、今後市民後見人はどのような位置づけになっていくのだろうか。

(1) 市民後見人を必要とする背景
平成12年4月、介護保険制度の開始に伴い、介護サービスの利用が措置から契約へと移行した。認知症高齢者が介護保険制度を利用しようとする場合、契約時には後見人を立てなければならず、そのため成年後見制度と介護保険制度は補完関係として同時に施行されている。
丸5年を経過した現在、介護保険制度の利用者は400万人に迫ろうとしているが、それに比較して成年後見制度の利用は約7万人と低迷している。
現在の認知症高齢者数は約170万人で、この全ての人々は成年後見制度を利用する可能性を十分に持っている。この人数と約40万人の知的障害者を合わせると、この制度の利用者数は210万人になる。さらに10年後には、認知症高齢者数は270万人になるともいわれている。これらを考えると、成年後見制度の利用者数は驚くほどの数字になることが予想される。
一方、この制度を利用しようと思った場合、相談相手は弁護士、司法書士、社会福祉士等の内、この制度を勉強した人ということになるが、受け入れ体制が最もしっかりしているリーガルサポート(司法書士)でもその体制は3,500人である。一人がサポートできる人数は、多くて20人と言われている。ぱあとなあ(社会福祉士)では、1,345人が登録をしているが、自分の仕事と兼務している状態もあり、一人がサポートできる人数は多くないと思われる。それらを合わせても、何百万人といった利用予定者をサポートすることはできない状態である。
平成18年4月から地域包括支援センターが立ち上がり、成年後見制度の窓口としても機能することになる。その際、相談を受けてもそれを受任する後見人がいない状況は避けなければならない。また、金銭的な理由から専門職の後見人に依頼することができないケースも多くなることが予想される。

(2) 市民後見人養成の目的
以上の観点から、成年後見制度についての知識を持った人を養成し、この制度の利用をサポートできる体制を整える必要がある。すなわち、急増する利用予定者を考えれば、この制度の利用をアドバイスしたり、場合によっては後見人を引き受けることができる「市民後見人」の養成が急務ということになる。また、5年経過した現時点での成年後見開始の申立件数の内訳は、後見と保佐が全体の94%であった。介護保険制度がスタートすることを鑑み新たに設けられた補助と任意後見は、わずか6%となっている。この数字からも、成年後見制度に関するマンパワーを多く養成する必要性があると思われる。
市民後見人養成を目的とした養成講座を実施することによって、市民後見人を多数輩出すれば、制度の広報、制度利用の促進が大いに推進されることが期待される。

(3) 市民後見人の定義
市民後見人とは、市民後見人養成講座を修了し、その後所定の後見実務コースを修了し、後見事務能力を備えたことを高齢社会NGO連携協議会が認めた者をいう。
また、市民後見人は、高齢社会NGO連携協議会が認める成年後見制度の利用推進を目的とした団体に所属し、常に研鑚を積み後見活動を行わなければならない。
市民後見人は、今後の需要を鑑みこれから創設される新たな枠組みであるため、現状において法的な位置付けはされていない。

(4) 市民後見人の位置付け
市民後見人は、弁護士や司法書士のように成年後見制度に職業として関わるのではなく、ボランティアで後見活動に関わる人たちであり、親族後見人と専門職後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士等)の間の存在として位置付けられる。
しかし、市民後見人が持つ知識や経験は、専門職と比較すれば明らかに低いため、専門職との緊密な連携、専門職からの手厚いバックアップが必要となる。また、活動内容としては専門性、倫理性を問われる財産管理よりも、身上監護を主体として活動することが考えられており、法律が関わることなどは専門職のサポートを受けることになる。そういった状況を創り出すために、両者が関わる協議会の創設と、各地域に市民後見人が所属する団体の創設が必要と考えられている。市民後見人はその団体に属して後見活動をすることによって、責任体制を明確にしていくことになる。

以上が市民後見人とは何かを、分かりやすくまとめたものである。まとめるにあたって、高齢者NGO連携協議会の資料を参照させていただいた。

なぜ、市民後見人という、まだ認知もされていない仕組みを積極的に作ろうとしているかというと、外国(特にドイツ)ではそれが常識になっているからだ。国民全体における成年後見制度利用者は、スウェーデンでは1.6人。ドイツでは1.3人。日本はというと、なんと0.05人。
ドイツを参考にした介護保険。今度は成年後見の仕組みを参考にしていく必要がある。

老人クラブとシニアSOHO

2005-12-18 17:07:46 | まちづくり
SOHOという言葉がある。SOHOとは、『Small Office Home Office』の略で「小さいオフィス、家庭事務所」といった意味がある。
シニアSOHOというのは、退職した高齢者になろうかという人たちが、自分の得意分野で仕事をするというもの。
東京都の三鷹市では、元気な高齢者(高齢者というには失礼なくらい)がシニアSOHO・三鷹という枠のなかで第二の職場として働いている。

以前から、地域の活動として高齢者が加入するものに“老人クラブ”がある。各地域に会長さんがいて、地域の活動を積極的にしており、時にはゲートボールなどもしている姿をよく見かけるかもしれない。市町村から活動費をもらっていはいるものの、その活動のほとんどはボランティアである。
しかし、現状は加入者が少なく老人クラブの数も減ってきている。他人との関わりが希薄になってきたことや、“老人”という言葉が与える印象など理由はさまざまであろうが、一言で言ってしまえば魅力がなくなってきているのかもしれない。
仕事を退職し、ようやく地域のために何かやろうとしたときに、60歳の人が老人クラブに入ろうとするだろうか。これから団塊の世代の人たちが一斉に退職する時代がすぐに来るが、老人クラブに加入するとは思えない。しかし、ボランティアをしたいという気持ちを持っている人は少なくないはずである。そのときに、どんな受け皿を用意できるのか、地域に大きく問われてくるのである。

先に述べた、シニアSOHOは行政や一般市民より仕事を請け負い、有料で活動をしている。ボランティアで行うことは無い、という。それは、実際に代価に見合うものを提供する責任にもなるからだという。とはいっても、行政などから請け負う仕事は制度の隙間を埋めるようなものが多く、多くの収入は望めない。それでも退職後、自由にやりがいを持って働くことができるとあって、会員は700人を超えるという。
連絡の手段はIT。メーリングリストを使い、瞬時に多くの人が情報を共有していく。活動の幅は広く、毎日7~8のミーティングがどこかで開催されている状況だという。
こうして、三鷹市では多くのシニアが地域の中で活躍しているのである。

三鷹市では、シニアSOHOを地域づくりの一環として応援している。都心のベッドタウンである三鷹は面積の9割が住宅で、今後急速に高齢化が進むことが予測される。そのときに、ただ自宅で過ごす高齢者が増えると税金収入が減り、老人医療費が急速に伸び、市の財政を圧迫してしまう。
シニアSOHOとして、元気な高齢者が地域で活発に活動し収入も得ることで、上記の不安も解消できるというわけだ。

すべてが有償でできるわけではなく、ボランティアの持つ意味はとても大きい。だからこそ、ボランティアをしたいと思ったときにすぐに出来る環境や、さまざまなメニューを用意することが大切である。そこにもう少し力を入れていく必要があるだろう。
しかし、継続性や専門性を求めるとき、ボランティアで対応していけるのか懸念は残ってしまう。そんなとき、退職男性の知的能力をくすぐるシニアSOHOという考え方は、これからの地域づくりに一役も二役も買う存在になるのではないだろうか。

認知症予防には?

2005-12-03 19:08:28 | 認知症
認知症の予防は可能なのか?

現在、65歳以上の高齢者の15人に1人は認知症といわれており、それが85歳以上にもなると4人に1人くらいの割合になるともいわれている。
その程度の確立なら、自分は関係ないと思うかもしれないが、例えば夫婦の両親が全員85歳以上になると、そのうちの1人は認知症になるかもしれない。乱暴かもしれないが、自分が認知症にならなくても、関係する誰かは認知症になる可能性が高いのである。

そうなってくると、認知症予防よりも治療する方法が望まれるが、残念ながら認知症の根本的な治療方法はまだ開発されていない。一部の認知症は手術や治療により治るものもあるが、多くの認知症(特にアルツハイマー型や脳血管型、前頭側頭型)は治ることなく、徐々に進行していってしまう。
遠くないうちに、アルツハイマー型認知症(以後、アルツハイマー)の治療薬(ワクチン)が開発されるのではないかといわれているが、それもあと何十年後というレベルの話である。
アルツハイマーの場合、早期に発見することにより『アリセプト』という薬を服用することで、進行をかなり食い止めることも分かっている。早期発見、早期診断は大切であるが、多くの人は、まずは認知症にはなりたくないと思っているだろう。

認知症に予防方法はあるのだろうか?
最初の問いに戻るが、答えは「まだない」ということになっている。
さまざまな研究がなされ、認知症の予防によいのではないかといわれるものはいくつかあるが、まだ確実な方法としては立証されていない。

しかし、最近出された米国の論文のによると、おもしろい結果が導き出されている。その研究は、体を動かすことが認知症の予防によいのではないかと、5千人くらいを対象に数年間にわたって、どんな運動(家事や車の運転なども含む)を週に何回、何時間、集中してやったかなどの項目で調査したものである。認知症になった人とならなかった人で何か違いが出れば、その運動をすれば認知症の予防になるということになる。

結果は、週に何回という回数では違いがみられなかった。
また、何時間おこなったかという長さにおいても違いはなかった。
集中しておこなったのか、ダラダラとおこなったかについても違いはない。
何が違うのかというと、認知症にならなかった人はさまざまなことをおこなっていたのである。つまりいくつもの家事や運動、運転などをおこなっていた、というのである。
これによって何が言えるのかというと、脳のさまざまな部分を上手に使うことが重要だということである。一見、運動というと脳をあまり使っていないように感じるかもしれないが、実は人間は動作ひとつをとってみても脳を常に使っているのである。一生懸命やろうが、長時間やろうが、脳の働きはあまり変わらないのかもしれない。

最近、大人の計算ドリルや漢字の書き取りなどが認知症予防として流行っている。しかし、それだけおこなってもあまり意味がないといえる。脳の計算する部分のみを鍛えても、他の部分の萎縮は止められないかもしれない。そして、そのドリルが好きではなかったら、ストレスを感じてしまい、他の弊害も心配される。

アルツハイマーは異常なたんぱく質が、脳に何十年もかけて溜まってなる病気である。病気になる人とならない人の違いは、そのたんぱく質が溜まるか溜まらないかによるので、すでになる人は決まっているともいえる。そんな中、少しでも認知症予防をするためには、『さまざまなことを、楽しくおこなう』のがコツのようである。