What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

介護予防は“まるめ”に ~介護報酬改定~

2006-01-29 21:46:40 | 介護保険
26日の社会保障審議会において、来年度の介護報酬改定の骨子が示された。【WAM NET】
以前から言われていた通り、介護予防における介護報酬は定額制(まるめ)となった。これにより、介護保険は新たなステージに入る。

今回の介護保険の改正は、新介護保険法といってもよいほどの変わりようで、現場においても変わることが多く、各事業所はその対応に苦慮することになるだろう。
現在の要介護認定者(要支援含む)の約半数が要支援1、2になり、新予防給付の対象となる。当然、介護サービス事業所(特に通所サービスや訪問サービス)においても、利用者の半数が新予防給付となる。介護予防に対応しないということは、半数の利用者が離れてしまうことになるため、今までのサービスに介護予防の要素を取り入れたサービスに変わらざるを得ない。

ほとんどの事業所が介護予防サービスを実施することを想定して、申請・指定作業は簡略化される。現状のサービスの利用者数や時間の枠などを変更しなければ、簡単な申請をすれば、「介護予防・・・・・」という指定を得ることができる。
しかし、そのためには現状の日常生活支援の他に、運動器機能向上、栄養改善、口腔機能向上などの選択サービスをつけなければならず、利用者はそこからサービスを選ぶことになる。介護報酬はサービスを整えると、一人あたりの定額を得ることになる。つまり、サービスを全員に提供しなくても報酬は入ってくるということになる。
他にも小規模多機能介護も定額制になるため、事業所には登録人数かける定額の介護報酬が入る。

介護報酬が定額になることで考えられるのは、介護報酬だけをもらって、サービスをまったく提供しない事業所が出てくるのではないか、ということだろう。もしかしたら、あまりサービスを利用しない人ばかりを受けつけるような事業所も出てくるかもしれない。今までの流れをみていると、どうしてもデメリットばかりに目がいってしまう。
そこでケアマネージャーの存在が重要になってくる。ケアマネは、利用者に合わせてたてたケアプランにそって、サービスが提供されているかどうか、本人の望み通りにサービスが提供されているかを、これまで以上にモニタリングする必要があるだろう。

介護報酬が定額制になることのメリットは、本当に必要な人たちが必要な分だけサービスを使えることにある。新予防給付の対象者は、自分の意見を言える人たちが多い。まして、これから権利意識を強く持った高齢者が増えるなかで、自分の望み通りのサービスが提供されなければ、利用者の立場として強く訴えてくることになるだろう。サービス事業所としては、運営に直接響く意見だけに無視はできなくなってくる。
必要のある人にサービスが行き渡るということは、必要のない人には無理にサービスを使うことはなくなるということだ。所属事業所とケアマネのいびつな関係による影響も考慮に入れているのかもしれない。

ただ、事業所にとっては厳しい局面である。新たなサービスの追加のために、人の雇用を考えなければならず、かといってそれを補えるだけの報酬があるわけでもない。これだけの大きい変化を乗り越えるには、それなりの体力(資力)が必要になる。
今回の改正は、サービス事業所の格差を生むような結果になってしまうような、本末転倒な改正になりかねない危険をはらんでいる。

食いものになる福祉 ~介護報酬の不正受給~

2006-01-25 21:11:06 | 介護保険
福岡にあったNPO法人「ふれあいの家青葉園」(04年に解散)の元代表理事の女性が介護報酬を不正受給したとして北九州などに告発されていた事件で、県警は24日、ホームヘルパーとして契約していた飲食店経営の女性を詐欺の疑いで逮捕した。
調べでは、その女性は青葉園が運営していた訪問介護事業所に所属していた02年の6~9月、要介護認定者数人の家に行って介護したように装い、青葉園を通じて介護給付費を請求。国保連に計約二百数十万円を不正に受給した疑いがある。女性は園から6割程度を報酬として受け取っており、また同僚数人から名義を借りて架空請求を繰り返していたという。【朝日新聞】

その他にも、静岡県沼津市の介護施設「介護ステーションさくら」(杉山一夫社長)が介護報酬を不正に請求していた疑いがあり、県が介護保険法違反の疑いで調査を進められている。県によると、同施設は03~05年、架空の訪問介護や、生活援助を身体介護として申請するなどして、約9千万円の介護報酬を不正に受け取った疑いがあるという。また、居宅介護支援事業でも実施していない居宅サービス計画を作るなどして、約1千万円を不正に受け取った疑いがあるという。【asahi.com】

明日26日には、来年度から改定される介護報酬が策定されることになっている。
今回の目玉は、新予防給付における一連の報酬がいくらに設定されるか、だろう。関係者の間では、現状より高くなることはないだろうと予想されている。その分“成功報酬”というこれまでにない仕組みが新たに作られることになる。そのことによって「頑張っている事業所もそうでない事業所も横並び」という不満は少しは解消されるかもしれない。
“成功”をどのように評価するのかも、26日以降に示されることになるだろう。介護サービス事業者は、これから4月までの間、新たなサービス導入に向け本格的に忙しくなる。

そのような中でも、介護報酬の不正受給である。来年度さらに高くなる介護保険料のことを考えると、腹立たしい限りである。何のために保険料を払っているのか。一部の人間の私腹を肥やすためではない。
介護報酬の不正受給が分かったところで、多くのお金が変換されずにいる。事業所は指定取り消しになり、実質的には返済することができないからだ。2年前までの不正受給総額は25億円。この2年で大幅に増加しているはずである。

最後に北海道でも・・・

北海道函館市内にある「慈愛会病院」による詐欺・贈賄事件でも、介護療養型病床や介護通所リハビリテーションで医師数を水増しするなどして介護報酬を不正受給したほか、発覚を恐れた幹部が02年11月ごろ、野呂善市・元道議
(収賄罪で有罪判決)に道への口利きを依頼し、02年度の実地指導などが見送られた疑いがあるとして、当時の理事長らが詐欺と贈賄の容疑で逮捕、起訴されている。道の関係者は最終的な不正総額は、19億円近くの可能性もあるとみている。【asahi.com】

グループホーム新たな課題 ~長崎グループホームの火災より~

2006-01-09 17:04:49 | 認知症
長崎県大村市のグループホームで8日未明に起きた火災での犠牲者が7人になってしまった。亡くなった方々にはご冥福をお祈りしたい。

8日午前2時25分ごろ、鉄筋一部木造平屋建て約280平方メートルが全焼し、約2時間半後に鎮火した。焼け跡から5人の遺体が見つかり、1人が運ばれた市内の病院で死亡を確認され、また重体だった1人も病院で亡くなった。
出火当時、施設内には入居者9人と当直者1名がおり、休憩室で寝ていた当直者が「パチパチ」という音で目が覚めた時には、居間のソファあたりから火の手が上がっていたという。グループホーム内の台所はすべて電化されており、ガスは使っていなかった。入居者のうち1名だけ喫煙者がいたが、屋内は禁煙にしており喫煙所は屋外のデッキになっていたようだ。(asahi.com)

火災に見舞われたグループホームは2年半前に開設され、外部評価(WAM NET)ではよい評価を受けていたようだ。しかし、外部評価の項目には非難訓練などの防災に関する項目は見当たらない。大型施設においては、防火管理者のもと防災訓練の実施が求められているが、グループホームではどうなのだろうか。

長崎県の認知症高齢者グループホーム協議会長の話によると、グループホームでは、認知症の入居者を混乱させる可能性があるとの理由で、避難訓練もほとんどしていないのが現状だという。また、グループホームにスプリンクラーの設置義務はなく、今回の施設にも設置されていなかった。
高齢者施設において、避難訓練をする難しさはあるだろうが、入居者を非難させることを想定した職員だけの模擬訓練をおこなうことはできるだろう。また、夜間の対応を繰り返し確認することだって難しくないはずだ。

火災の原因はまだ解明されていないが、喫煙をしていた入居者のタバコや火の管理がどうだったのかが気になるところだ。また、夜間の災害を含めた緊急時の対応がどうなっていたのかも、今後クローズアップされるだろう。今回の火災は全国にあるグループホームにとって、決して他人事ではない。
何かを防ぐごうとするとき、100%ということはない。火災に限らず事故に関しても、100%に近づけるように日々の対応が必要になってくる。そして、起こってしまった時の対応をどうするかが、被害の拡大を最小限に抑えることにつながってくる。グループホームにとっては、新たな課題がつきつけられる。

今後、地域密着型サービスとして、小規模施設の増加が予想される。これまでも宅老所やグループホーム等で、民家を改造してサービスを実施しているところも多くある。民家のほとんどは木造であり、火に対して非常に弱い。また、新設しても小規模であれば一部に鉄筋は使用しても木造になることが多いのではないだろうか。コスト面からしても、その方が安くなる。
今回の火災は多くの課題を赤裸々にした。しかし、その課題は乗り越えられないものではないし、乗り越える必要があるものだ。今後、地域密着型サービスの指定・育成は市町村の権限になる。その際、防災意識を問うことがこれから必要になるだろう。また、グループホームの外部評価においても、ぜひ一項目増やしてほしい。

新型特養はスタンダードになれるのか?

2006-01-08 21:08:49 | 介護保険
昨年10月の介護報酬の改定により、大打撃を受けている新型特養(全室個室、ユニットケア)の居住費に関する調査結果が明らかになった。
調査は、全国757施設に調査票を送り、369施設から回答があったもので、それによると、居住費の平均は6万7千円になるという。国の基準(居住費の補填限度)の6万円と比べても7千円も高い結果となっている。最高額は長野にある特養で15万円となった。これにより、施設側が低所得の人の受け入れを控えるのではないか、という不安が指摘されている。(asahi.com)

これには背景があることを説明しておかなければならない。平成15年度ごろより、新設する特養は原則新型特養とするとされており、補助金についても公共スペースや事務部分のみとなっている。これは、従来の多床室の特養と比べても補助が少なくなっている。その分、個室やリビングスペースに費やした建築費は、利用者からホテルコストとして徴収することができていた。
介護保険制度の改正により、既存、新型に関わらず居住費は各施設で自由に設定してよいことにはなったが、補助金の少ない新型にとっては、減価償却のため高い居住費を設定せざるをえない状況になっている。
また、利用者から多くの費用を徴収することを鑑み、介護報酬が利用者一人当たり1日千円程度の減額になってしまったのである。多くの新型特養が何千万円とうい規模での赤字が見込まれており、そのため居住費をさらに上げる施設が出てきているのだろう。

10月以降の新聞にもたびたび取り上げられているが、このままでは利用料が払えずに新型特養を出ざるをえない者、新型特養への入居を断念せざるをえない者が続々出てくる可能性もある。特養側で、利用者を選別することもあるかもしれない。お金のあるなしで、施設を選ぶ時代になってしまっているのである。
今後、新型特養が最低基準となるようでなければ、日本の介護施設の質の底上げはないだろう。そのためにも、厚労省には低所得の人でも安心して入れる環境を整えるためにも新型特養の介護報酬の引き上げを期待したい。

新型特養はさらなる苦戦が予想される。それは近年急増している特定入所施設の存在である。株式会社や有限会社の参入により、終の棲家となりうる介護付きケアハウスや有料老人ホームが増えている。なかには、特養の個室よりも広くトイレやお風呂まで付いているものもあり、さらには居住費、食費を含めた全体の利用料でも新型特養と大差はない状況となっている。入居一時金も以前と比べてかなり安くなっており、これではどちらがよいのかわからない。夜間の人員体制(看護師の有無)、ケアの質ではまだ差はあるようだが、その差もすぐに埋まってしまうだろう。
資本金がある株式会社に社会福祉法人が太刀打ちできるわけはなく、今後苦戦を強いられることは間違いない。民間の新たなアイデアや、機動力はこれまでの社会福祉法人にはあまりなかったものである。一利用者の立場としては、民間の参入はぜひ期待したい。

一方、社会福祉法人が生き残る道は、王道を進むということだろうか。つまり、ケアの質を高めていくことである。人材育成は一朝一夕にできるものではなく、またこれまでの取り組みが人材を集めるということにつながってくる。そのような継続的な人材育成が必要だろう。
また、低所得の人の救済を第一に考えることではないだろうか。利益を求める株式会社にとって、低所得者は対象外の存在となる。そのため、社会福祉法人としても金銭のことを心配せずに安心して入ることができる施設であるべきだ。そのためにも重ね重ね国には、それなりの対応を求めたい。