What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

要介護認定見直しなるか?

2007-02-25 12:05:24 | 介護保険
平成18年4月から新たに要支援1・2という区分ができ、全部で7段階になった要介護認定を、全面的に見直す方針を厚労省が固めた。

制度開始から、さまざまな問題点が浮き彫りになってきた要介護認定をここに来て見直すという。これまでの82項目の質問項目に、心身の状態をきめ細かく把握するため、洗濯を一人でできるかといった日常活動や損得の判断力といった認識機能などを問う項目を追加し、調査票を試作した。
試作票の追加質問は、100項目を超えることになる。炊事や掃除、ゴミ捨てなどの日常活動、人間関係を構築できるか、日中はどのように過ごしているかなど多岐にわたっている。
介護保険サービスを障害者へ拡大することも視野に、早ければ2009年度から新認定制度を導入したいようだ。

認定調査項目は、研究者が介護における負担を「1分間タイムスタディ」で計測し、綿密な計算のもと作成されている。しかし、対象者が施設における高齢者であったことも影響してか、身体状況については反映されやすいが、認知症などの精神面の症状や、それに伴う生活の状況は反映されにくいことが指摘されていた。
そこにきて、自立支援法との統合となると、知的障害者や精神障害者の状態を正しく把握する調査票ができるのか、大きな不安が残る。特に精神障害については、人のより症状も千差万別で、質問項目という枠組みを作ってしまうことで、そこから漏れてしまう可能性も考えられる。

また、現行では要支援2と要介護1の判別は、審査会による二次判定で審査されているが、審査会の作業の手間がかかり過ぎるとして、その他の区分と同様に一次判定で割り切れるように、手続きを簡素化する方向でも検討している。
要支援2と要介護1の判別に関しては、厚労省が当初から言っていた要介護1の7~8割が要支援2になるという数値に加え、各保険者の要介護認定を低く抑えたいという思惑が重なり、審査会の判断を偏らせてしまう危険性もある。現段階では、要介護1と要支援2の判別の仕方が一定ではなく、基準があいまいなままだ。手続きの簡素化だけではなく、そういった不具合も是正したいのだおう。

認知症が反映されにくいというのも、そもそも30分程度の短い訪問調査の間で、認知症や生活の実態をどこまで調査できるか大きな課題が残る。訪問調査員の技術や経験にも大きく左右されてしまう。
一方、かかりつけ医による認知症についての正しい理解と適切な鑑別がなければ、主治医の意見書にも認知症であることが記載されなくなってしまう。
新たに調査項目が追加されることで、少しでもその人の状態が正しく判断されることを願うばかりである。

払えぬ?払わない!治療費・国保料の滞納

2007-02-15 19:31:49 | 福祉雑記録
治療費を払わない患者が増えている。

全国の6割以上の病院が加入する四病院団体協議会(以下、四病協)は、未払い患者が加入する国民健康保険などの保険者に肩代わりを求める方針を固めているという。
2004年までの3年間での未集金額は、把握しているだけで426億円に及んでいる。未収金の原因は、治療費さえ払うことができないほど生活が困窮している例もあるが、最近では、支払能力があるのに治療費を何度も踏み倒したり、患者を入院させて行方不明になる家族など、モラル低下に伴う悪質な例も目立ってきている。各病院は、治療費の徴収努力にも限界があり、今回の決断に踏み切っている。

そもそも、保険者に肩代わりを依頼することは可能なのだろうか。そこは両者で見解が分かれているところだ。
国民健康保険法と健康保険法には「医療機関が相当の徴収努力をしたにもかかわらず、患者から支払いを受けられない場合は、保険者が医療機関の請求に基づいて患者から徴収できる」と規定されている。これを根拠に「保険者に請求をできる」と四病協は解釈しているが、厚労省は「診療行為は、医療機関と患者の契約」という立場で、肩代わりをする義務はないという考え。

確かに、契約の側面はあるが、病院は救急であれば受け入れざるを得ず、毎回支払い能力の有無を調べてから治療を行うことができるわけではない。
医療は欠かすことのできないセーフティネットである。セーフティネットであれば、国や各保険者は病院まかせにはできないはずである。未収金の増加により、医療機関が潰れるようなことがあれば、私たちの生活の根幹に関わる一大事である。

その医療を受ける前提に関わるもう一つの問題として、国民健康保険料の滞納による個人の預金口座や不動産の差し押さえが増加しているという。
国民健康保険料の滞納者に対し、自治体は預金口座や保険、不動産などの差し押さえができると地方自治法に定められている。この数年で、差し押さえをしている自治体も39%から55%に増加している。つまり、それだけ滞納者が増えているということである。
滞納者は、差し押さえに先立ち保険証を返還させられ、代わりに「資格証明書」をもらうことになる。その状態で受診すれば、いったん全額自己負担になってしまう。

滞納者が増える背景には、高すぎる保険料と低所得がある。差し押さえでは何も解決にはならず、生活の根本的な問題を解決しなければならない場合が多い。

一方、前者の問題と同じように、モラルの低下による悪質な滞納も目立つという。支払う能力がありながら、滞納している場合には差し押さえは有効な手段と言える。保険料によって医療が受けられる状況にあり、なるべく多くの人から徴収しなければ、適切な医療を受けられなくなる状況に陥ってしまうかもしれない。

今の医療費をめぐる現状からセーフティネットの構造的な変革と、私たちのモラルの向上が求められている。