What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

タウンモビリティとは何か

2005-10-28 19:16:09 | ノーマリゼーション
『タウンモビリティ』という言葉を聞いたことがあるだろうか?
直訳すると「まち(=タウン)の移動(=モビリティ)」ということになるだろうか。そのままでは分かりにくいので、財団法人国土技術研究センターが開設しているタウンモビリティのホームページの言葉を借りると、
「タウンモビリティとは、電動スクーターや車イスなどを長距離の歩行が困難な人に貸し出して、町の中を自由に移動できるようにし、買い物や散策などを楽しんで頂くというものである」
ということになる。

本来は、イギリスで『ショップモビリティ(まちの中心部にある事務所に電動スクーターや車イスなどの移動用機器を備え、常時または一時的な移動の困難を持つ人に貸し出すシステム)』として取り組まれているもので、日本ではショップ(=商店街)という枠組みを、タウン(=まち)と広げて、取り組みが始まっている。
イギリスでは移動に困難を持つ人々は人口の約12%,けっして小さな数字ではない。これらの人々が買物だけでなく,銀行・郵便局・役所・図書館・美術館・飲食店などへ出かけ,自ら日常生活を営むことの社会的意義はきわめて大きい。くわえて,これらの人々は「社会経済の重要な構成員であり,有望なマーケットである」と欧州では広く認識されている。

日本においては、1996年頃より取り組まれた。さまざまな地域や店舗内での実験を経て、現在は、いくつもの地域において電動スクーターや車椅子を常設する事務所が開設されるに至っている。しかし、実際は認知度は低く、利用量も増えていないのようだ。先進国のイギリスとの比較において、違いが多く課題もみえてきている。

まずは、まちの形成の違いが大きい。イギリスにおいては、まちの中心部がコンパクトに形成されており商業施設や文化施設など便利がよい。また、その中心部から自家用車を締め出すという目的があって始まっている。しかし、日本においては、まちの中心部がどこなのか明確でないことが多い。また、以前は中心部であった商店街は、郊外に大型店の出店によりシャッター通りとなってしまっている。今や元気な商店街を数えるほうが容易い状況である。

次に、自宅から中心街までの交通の整備の問題がある。イギリスでは、交通のバリアフリー化も進んでおり、身体が不自由でも自宅から中心街へのアクセスが比較的容易であるのに対し、日本ではその部分の整備が不十分である。まちに行く手段がなければ、タウンモビリティを利用することもできない、というわけである。

最後に、ボランティアの整備があげられる。身体が不自由な人がタウンモビリティを利用するのだから、当然そこには人の手助けが必要な場合もある。イギリスにおいては、ボランティアやチャリティーが社会システムの中に組み込まれており、用意に助けを得ることができ、また助けを受けるほうにも抵抗感は少ないという。非本においては、最近になってようやくボランティアの考え方が浸透してきてはいるものの、まだまだ社会システムとしては動いていない。また、助けを受ける方にも抵抗感が残っている現状がある。

これらの理由から、日本においてはまだまだ浸透はしていないのが現状である。そもそも国状が違うため単純に比較することは難しく、そのまま取り入れても無理が生じてくる。しかし、バリアフリーや環境にやさしいなど考え方はわかりやすく、将来的には必要なシステムである。
また、浸透していない要因の一つには、広報の仕方があるだろう。せっかく良いシステムでも、知らなければ利用はできない。まずは、このタウンモビリティというシステムが広く知られるようにさまざまなPR活動が必要である。日本では、まだまだ生まれたばかりのシステムを、ぜひ大きくさせていきたいものである。

高齢者虐待防止のために ―地域包括支援センターの役割―

2005-10-06 18:15:46 | 介護保険
10月1日から介護保険施設において、居住費、食費の自己負担が始まった。これは、平成18年度からの介護保険改正に伴うもので、介護保険財政を守るために半年前倒しでのスタートとなった。それほど介護保険財政は切羽詰っているというデータに基づいていてのことらしい…。
そして、あと半年後には介護予防を中心にした制度改正が始まる。その中核的な存在として注目されているのが地域包括支援センターである。今からさまざまな役割を期待されており、開始以前から今後の超高齢化社会の“魔法の杖”のような扱われようである。
その具体的な機能としては――
 ① 総合的な相談窓口機能
    初期相談対応、相談支援、実態把握など
 ② 介護予防マネジメント
    介護予防プランの作成等の介護予防サービスの利用に要する業務
 ③ 包括的・継続的なマネジメント(マネジメントの統括)
   市町村、関係機関との調整
   ケアマネジメント等のバックアップ など
 ④ 権利擁護(成年後見制度の推進、高齢者虐待防止)
以上の4つの機能があげられる。
それを、社会福祉士、保健師、主任ケアマネージャーを含め4~5名の職員で担わなくてはならないのだから、よほど腰を据えてかからないとうまく機能していくのは難しいだろう。

権利擁護の中にある高齢者虐待防止は、その中でもとりわけ難しい役割になってくるだろう。近々、高齢者虐待防止法が成立するようであるが、その条文のなかには高齢者の虐待が疑われる場合は、例え証拠がなくても市民はそれを通告する義務あることが明記されることになるとのこと。通告は地域包括支援センターにいくことになり、立ち入り調査する権限を与えられるのも地域包括支援センターなのである。いわば、児童相談所の高齢者版の役割が与えられるといってもいい。
少し前になるが、平成15年度の「高齢者虐待に関する全国調査」では、虐待の情報を掴んでいたのは、在宅介護支援センターが42%と一番多く、病院は20%程度であった。そのことからも、今後は在宅介護支援センターに代わる地域包括支援センターが高齢者虐待防止対策にあたることは自然な成り行きなのである。ちなみに、そのデータの中には、加害者の第一位は息子で32.1%を占めており、次に嫁や配偶者という結果になっている。また、虐待における約10%が生命に危険があるものであった。

そもそも虐待とはどのような状態をいうのであろうか。高齢者には限らないが、虐待と定義されるものの内容をみてみると――
 1. 身体的虐待…意図的に物理的な力を行使し、身体の傷や痛み又は欠損を結果としてもたらすもの。(殴る、蹴る、突き倒す、つねる等)
 2. 性的虐待…あらゆる形態の高齢者との合意のない性的接触や辱め。
 3. 心理的・情緒的虐待…脅し、侮辱、威圧などの言語の暴力や威圧的な態度、無視、嫌がらせなど非言語による虐待的行為によって、心理的又は情緒的苦痛を意図的に与えること。(どなる、悪口を言う、いびる、無視する等)
 4. 世話の放任(ネグレクト)…意図的または結果的にケア提供者がケア提供に関わる約束、又は義務を履行しないこと。
 5. 経済的・物質的搾取…許可なくして高齢者の金銭、財産、又はその他の資源を勝手に使うこと。(年金や預貯金を勝手に使う、不動産を無断で売却等)
 6. 自己放任(セルフネグレクト)…サービスを拒否したり、高齢者自身から生活や生きていくことを否定し、健康を損ねたり、安全を脅かすような怠慢又は、自虐的なふるまい。(不衛生な部屋にいたり、衣服や食事をとる行為が消極的等)
 7. 置き去り…介護や世話ができなくなった者又は、介護や世話を拒否する物が高齢者を病院などに置き去る、何の連絡もなく面会にも来なくなる。
 8. その他(権利の侵害等)…本人が希望する生活上での要求や行動に対して、正当な理由がないのに制限を一方的に加える。(介護者や家族の偏見や無理解で介護サービスが制限される等)
以上のようになっている。これらの虐待をいかに未然に食い止めるか、又は早期発見し大事に至らないようにするかが求められてくるのである。発見に関しては、介護保険サービスを使用している人は、サービス事業者が発見することが多く、比較的安易に発見することができるが、介護保険を利用していない高齢者の虐待防止が今後の大きな課題になってくるだろう。そこで活躍するのが、地域包括支援センターに設置が義務付けられている保健師である。以前から地域の保健師は世帯を訪問し、地域の保健を担ってきた存在である。そういう点からも早期発見の大きな担い手として期待される。
また、虐待の立ち入り調査をいかに迅速に確実にするかが重要であり、課題でもある。一般世帯に立ち入りするからには、職員は行政職員であるか、それ同等の地位が求められるであろう。各自治体はいま地域包括支援センターの設置準備に奮闘しているところであるが、自治体の直営かそれに近い存在としてしっかり位置づけることが望まれているのである。