What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

介護保険料払うのは20歳から?

2006-03-14 22:08:45 | 介護保険
改正介護保険制度のスタートを目前に控えて、介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する有識者会議が3月6日に始まった。
今後、定期的に会議を開催し、何らかの報告をすることになる。

被保険者・受給者の範囲の問題については、介護保険成立前から議論の争点になっていた経緯がある。当初から20歳から保険料を集めようとする案や、65歳から保険料を集めるとう案があるなかで、結局40歳に落ち着くことになった。
その理由は、介護保険という新しい制度において、20歳から保険料を集めることは抵抗が大きいことがあった。親に介護が必要となる40歳くらいからなら、保険料を集めることに抵抗が少ないだろう、という理由から現行の40歳からになってたのである。

今回の改正時にも、保険料徴収の年齢を引き下げるかどうかが議論されたのは記憶に新しいだろう。この時期に議論することは、当初から決まっていたことであった。障害者の支援費制度が始まったばかりということもあって注目もされたが、いくら支援費制度が介護保険制度に障害者を組み込むための制度とはいえ、早急すぎるということで今回の改正でも見送られている。

そうこうしている間に、障害者自立支援法が制定され、ますます障害者施策と高齢者施策が同じ制度で運用される日が近づいてきている。
そのような状況の中で、介護保険料の改定がおこなわれる平成21年もしくは平成24年をめどに年齢の引き下げ、給付範囲の拡大をおこなうことをめざすための有識者会議なのである。

今回の案としては保険料徴収を20歳からにし、受給範囲を0歳からにするというものが主になっているようである。この年齢設定は、諸外国において年齢で範囲を区別していないという実績からきている。
また、障害者自立支援制度により、介護保険同様、給付が拡大することが見込まれていることにも大きな影響を受けているだろう。国としては、税金を増やすことはできないが、保険料なら聴取しやすいという背景もある。しかし、使い道がしっかりしている保険料だからこそ、自分と関係ないと思っている世代からの徴収は困難になることも予想される。
20歳からになると、医療保険料に上乗せして徴収するため、今まで以上に未払いが増えることが予想されているのである。

そのようなことを心配している国を見ていると、早く20歳代の就労支援に力を入れたり、正社員を減らしパート雇用を多くしている企業に改善を求めたり、することはいっぱいあるだろうに、と考えてしまう。
国民が納得するときは、並びたてられた言い分けではなく、今後のビジョンを明確にした行動をしている国の姿を見たときであろう。

介護予防のゆくえ

2006-03-06 22:17:41 | 介護保険
ついに、改正介護保険制度が来月から始まる。
これまでさまざまなメディアで議論されてきたが、今回は抜本的な見直しとなっている。いくつかの中心的な柱がある中で、象徴的な存在はやはり“介護予防”だろう。
これまでも要支援においては、介護予防という名称は使われていたが実際は名称に伴わない部分が多く見受けられた。4月からは、名実共に介護予防が実施されることになる。

現在では新予防給付といわれている、要支援1・2に該当する制度のおいて、これまで厚生労働省から出された資料からは今後の意図や方向性が見え隠れしている。まずは、おさらいの意味も含めて制度の背景と概要を改めてみておこう。

介護保険制度が開始され6年が経とうとしているが、その利用者数は現在約400万人で、当初の2倍以上の数になっている。それにつれて、介護給付の額も跳ね上がり、このまま行くと介護保険財政が破綻しかねない状況になってしまった。
これまでの介護保険利用者の特徴としては、要支援と要介護1の利用者が全体の約半分を占め、また重度化する確立が高いことがデータとして残っている。また、介護給付の占める介護保険施設の割合が5割になるなど、在宅と施設の格差も明確になってきていた。そのため、施設給付の見直し(居住費、食費の自己負担)が先行して昨年の10月から始まっている。
これまでの運用をみてみると、介護度が上がれば施設に入所する確立も上がり、当然介護給付が増すことになる。そのため、介護保険制度が今後も安定して運用されることを目的に、介護予防を重視した制度が開始されることになったのである。

介護予防と共に改めて見直されたのがケアマネジメントである。これまでケアマネジメントについてもさまざまな議論がされてきたが、その多くがケアマネージャーの質を問うものや、課題を提起するものがほとんどであった。
確かに、介護保険制度が開始してからのこの数年でケアマネージャーの質には大きな差が出てきている。サービスありきのプラン作成や、必要のないサービスを事業所の利益のために使ったり、併設事業所のサービスばかりを使い、サービス事業所の営業部と化しているといった問題がこれまで報告されている。
厚労省もこれらの問題を重く見ているが、そもそもこのような制度にしてしまったのは、厚労省に他ならない。ケアマネージャーや居宅介護支援事業所ばかりを悪く言うのはフェアではないだろう。

介護予防マネジメントにおいては、アセスメントやプランの様式がこれまでと大きく変わる。そして何より介護予防マネジメントをおこなう主体が、新たに創設される地域包括支援センターという機関になる。
地域包括支援センターは市町村が責任を持って設営をすることになっている。当初は、そこに配属される保健師が介護予防プランを作成することとされていた。しかし、地域包括支援センターでは、要支援1・2の新予防給付からその前段階の特定高齢者までのプランを作成しなければならないため、その業務の一部をケアマネ1人あたり8人までという制約はあるが、居宅介護支援事業所に委託してもよいとされている。また最近では、介護予防プランの作成は保健師だけではなく、ケアマネや社会福祉士、経験のある社会福祉主事など地域包括支援センターに配属される専門職であれば、誰が作成してもよいという通知が出ている。

以上のような経過や、昨今出された介護予防の報酬みていると、今後の介護予防のゆくえがみえてくる。
おそらく、今後介護予防マネジメントの委託は認められなくなるだろう。現在、ケアマネ1人あたり8人まで委託できるとされているが、今後はその数が0人となってくるだろう。その次に新予防給付が介護保険給付からはずれることになるだろう。介護予防マネジメントを市町村でおこなうということは、以前の措置と同じ考え方である。厚労省の最大の関心は、介護保険制度が今後も安定的に運用されるかどうかであり、そのために利益とは縁遠い自治体においてプランを作成し、サービスも各自治体の予算から出す形に持っていくように思われる。介護予防給付が極端に下げられたのは、その布石ではないだろうか。各サービス事業者で大きな減収が見込まれるなか、ゆくゆくは市町村の事業となっていくのではなだろうか。
利益とは縁遠いとはいっても、苦しい市町村財政を切り詰めるためにも、各自治体は要支援1・2が増加しないように一般高齢者施策、特定高齢者施策に力を入れることになるだろう。
おそらく、それまでの間に国から地方公共団体への税源移譲がおこなわれることにはなるに違いないが・・・

これらの予想が杞憂に終わればよいが、「民営化、民営化」と叫ばれている世の中で、介護保険の世界だけが公営の方向に向いていることを考えると、取り越し苦労では済まされないように思えてくる。
今後、制度はどちらの方向に進んでいくのか、真剣に見極める必要があるだろう。そして私たちは、利用者にとって最善の方向に進むように行動を起こさなければならない日がくるかもしれない。