少し前まで、認知症とは治らない病気だと言われていた。アリセプト(塩酸ドネペジル)を服用しても、認知症(特にアルツハイマー病や脳血管性認知症)の進行を遅らせることはできても、治らないと言われている。
認知症は告知などの問題も含めて、癌と比較されることがある。両者とも進行が遅く(個人差がある)、介護する側に大きな負担を強いることになる。癌は進行とともに強い苦痛を伴うが、比較的最期まで意識は保たれている。しかし、認知症は進行とともに人格に変化をもたらしたり、最期には最愛の人までも認識できなくなる点では、癌よりも苦しい病気なのかもしれない。
しかし、その認知症治療に大きな光明が見え始めている。ワクチン療法である。
ワクチン療法には大きく分けて能動免疫療法、受動免疫療法、粘膜免疫療法とがある。
能動免疫療法はインフルエンザ予防接種と同じで筋肉注射をすると、体内で抗体が作られるというもの。2001~2002年にはヨーロッパで300人のアルツハイマー病患者に臨床試験を行ったが、うち6%にあたる18人に副作用として髄膜脳炎が発症したため、試験が中止になったのは有名な話である。
成果としては、ワクチンを投与されたうち3割程度に抗体が作られ、その人たちは認知症の進行が止まっているというデータが発表されている。
現在、開発が急ピッチで進められ、最も早く世に出てくると言われているのが、体内に直接抗体を投与する受動免疫療法である。マウスを使った実験では、投与後老人斑がきれいに消えて無くなっているのが確認されている。しかし、血管から体内に出血しやすくなるなどの副作用も報告されている。
また、1ヶ月に1回程度はワクチン投与を続ける必要があり、医療費にも影響してきそうだ。
現在、研究段階であるが、ウイルスベクター(治療用遺伝子)を体内に投与する粘膜免疫療法の臨床試験がアメリカで始まろうとしている。マウスや猿を使った実験では、脳炎などの副作用もなく、全例で抗体ができているという報告がある。また、老人斑もきれいになくなり、投与も1年に1回程度でよいとされている。
ワクチン療法が認証されると、治療すれば認知症の発症を止めることができるようになる。そうなると、いかに認知症を早期発見するかが鍵になってくる。乱暴な話をすれば、60歳になったらすべての人が認知症の検査を受けるようにすれば、確実に認知症の発症を抑えることが可能になるのである。
当然、認知症による介護や継続的な治療がなくなり、介護や医療にかかる費用が抑えられることになる。
しかし、ワクチン療法を待つことができない人たちが大勢いるのも事実である。ある専門家は「認知症は治らないという前提を捨てることが大切だ」と言っている。「どんな脳でも学習することができる。そのためには意志の力が必要だ」と。
脳の研究が進み、脳の細胞はある年齢以降壊れていくのみではなく、記憶を呼び起こす働きをする海馬(かいば)だけは神経細胞が新生されることが分かっている。適度な運動時には神経細胞を作るホルモンが発生するという。つまり、心地よく脳を働かせれば脳の機能が保たれるという。
また、食事や睡眠、運動などの分野でも認知症にならないための研究が進められている。すべてのことを実施するのは難しいかもしれないが、努力によって認知症になるのを防ぐことが可能になっているのである。
認知症は告知などの問題も含めて、癌と比較されることがある。両者とも進行が遅く(個人差がある)、介護する側に大きな負担を強いることになる。癌は進行とともに強い苦痛を伴うが、比較的最期まで意識は保たれている。しかし、認知症は進行とともに人格に変化をもたらしたり、最期には最愛の人までも認識できなくなる点では、癌よりも苦しい病気なのかもしれない。
しかし、その認知症治療に大きな光明が見え始めている。ワクチン療法である。
ワクチン療法には大きく分けて能動免疫療法、受動免疫療法、粘膜免疫療法とがある。
能動免疫療法はインフルエンザ予防接種と同じで筋肉注射をすると、体内で抗体が作られるというもの。2001~2002年にはヨーロッパで300人のアルツハイマー病患者に臨床試験を行ったが、うち6%にあたる18人に副作用として髄膜脳炎が発症したため、試験が中止になったのは有名な話である。
成果としては、ワクチンを投与されたうち3割程度に抗体が作られ、その人たちは認知症の進行が止まっているというデータが発表されている。
現在、開発が急ピッチで進められ、最も早く世に出てくると言われているのが、体内に直接抗体を投与する受動免疫療法である。マウスを使った実験では、投与後老人斑がきれいに消えて無くなっているのが確認されている。しかし、血管から体内に出血しやすくなるなどの副作用も報告されている。
また、1ヶ月に1回程度はワクチン投与を続ける必要があり、医療費にも影響してきそうだ。
現在、研究段階であるが、ウイルスベクター(治療用遺伝子)を体内に投与する粘膜免疫療法の臨床試験がアメリカで始まろうとしている。マウスや猿を使った実験では、脳炎などの副作用もなく、全例で抗体ができているという報告がある。また、老人斑もきれいになくなり、投与も1年に1回程度でよいとされている。
ワクチン療法が認証されると、治療すれば認知症の発症を止めることができるようになる。そうなると、いかに認知症を早期発見するかが鍵になってくる。乱暴な話をすれば、60歳になったらすべての人が認知症の検査を受けるようにすれば、確実に認知症の発症を抑えることが可能になるのである。
当然、認知症による介護や継続的な治療がなくなり、介護や医療にかかる費用が抑えられることになる。
しかし、ワクチン療法を待つことができない人たちが大勢いるのも事実である。ある専門家は「認知症は治らないという前提を捨てることが大切だ」と言っている。「どんな脳でも学習することができる。そのためには意志の力が必要だ」と。
脳の研究が進み、脳の細胞はある年齢以降壊れていくのみではなく、記憶を呼び起こす働きをする海馬(かいば)だけは神経細胞が新生されることが分かっている。適度な運動時には神経細胞を作るホルモンが発生するという。つまり、心地よく脳を働かせれば脳の機能が保たれるという。
また、食事や睡眠、運動などの分野でも認知症にならないための研究が進められている。すべてのことを実施するのは難しいかもしれないが、努力によって認知症になるのを防ぐことが可能になっているのである。